突然だが、こちらの写真をご覧いただきたい。茶色を基調としたクラシックな外観や、三角形の屋根が印象的な洋館風の建物。

どこか外国のお屋敷か、あるいは映画か何かのセットのようにしか見えない、ファンタジー感溢れる建築だ。

しかし、実はこちら、なんと東京都内に実在しているのだ。たしかに写真をよく見てみると、建物入り口の上部には「大橋眼科」と日本語の表記がされている。

東京の街中にポツンと建っているこの洋館風の建物の写真に、ツイッター上では、

「CGかと思った。ぐう素晴らしい。お金払っても入館したい!プチホテルだったら泊まってみたい」
「そこだけ異世界という様な素敵な建物」
「『通っているうちに不思議な力が身についた‼』。そんなことを言われても納得できそうです」

といった声が寄せられている。

閉業する前に中に入ってみたかった

話題になっているのは、フリーカメラマンのしめ鯖(@zz_saba)さんが2021年4月23日に撮影した写真。北千住駅前通り商店街(足立区)にあった「大橋眼科医院」を撮影したものだという。

Jタウンネット記者は26日、まずは投稿者のしめ鯖さんに詳しい話を聞いた。

普段は国内外の幻想的な世界遺産や遺跡・史跡などを巡って撮影するほか、同じくそれらの世界に登場しそうな装飾品・アクセサリーの類をレザークラフトで作成しているというしめ鯖さん。

「昨年からのコロナの騒動で渡航が厳しい環境ですので国内の変わった建物、雰囲気溢れるお店などを撮り集めていました。
それらを調べる上でこの眼科医院の存在は把握していたものの、スケジュールや予定等で訪れる機会が無かったのですが、今回SNSで閉業の噂を聞き、慌てて現地に向かった次第です」

と撮影に向かった経緯を説明した。

その際、しめ鯖さんはちょうど建物内で作業をしていたスタッフと話す機会もあったといい、

「閉業に関しての臍を噛む思いを伝えたところ、Twitter内で書いたように『直ぐに解体するという話は無いみたいです』といったお答えを聞きました。今回特にアポイントを取って撮影していたわけでは無い状態で写真を撮っていた手前、あまり長話をするのも失礼かと思い、それ以上の話はしていません」

とのこと。もう建物内に入ることはできないようだが、しばらくは解体されずに残るようでとりあえず一安心といったところだろう。

「ツイート内ではうっかり『虫歯になってでも』なんて見当違いの事を書いてしまいまっていましたけども。病院が現役のうちに目の検査でも何でもいいから理由をつけて建物の中も見てみたかった...と。
日本国内にも洋館風の建物は数多くありますが、安っぽいというかなんというか。正直なところ心が掻き立てられるようなものは非常に少ない。そういう意味では非常に貴重な場所だったと思っています」(しめ鯖さん)

Jタウンネット記者は27日、こちらの医院について、足立区役所にも取材した。

アンティーク好きな先代医院長夫妻のこだわりだった

取材に応じた足立区シティプロモーション課の担当者は、「こちらの医院は2021年2月か3月ごろに閉業したようです」と話す。

建物について詳細を聞くと、こう説明した。

「私たちが把握している限りでは、こちらの医院は1930年に建てられたもので、当時から『三角屋根の目医者さん』と呼ばれて千住でも有名な建物だったようです。
当代の医院長だった方の、先代の医院長の奥さまのご実家だったそうで、モダンなものが好きだったという先代医院長夫妻のご趣味で、建物自体もそういった洋館風になっていたそうです」

その後、建物は老朽化に伴って1980年に一度解体されたという。

「1982年ごろに新しいものが建てられて、それが現在まで残っている建物です。
再建までの2年ほどの期間の中で、モダン好きな先代医院長が各地からアンティークな部材を集めたそうです。例えばエントランスにあるガス灯は、当時の昭和通りの岩本町あたりにあったものを持ってきて置いたものだそうです」(担当者)

先に紹介したしめ鯖さんの投稿に対するリプライには、建物の行く末が気になるという声も多い。

改めて、今後どうしていく予定なのかを聞いてみると、担当者は、

「それについては建物のオーナーさんのご意向などもありますし何とも言えませんが、区としても非常に気にしているところで、現在情報を集めているところです」

とコメント。

先代医院長夫妻のこだわりが随所に詰まり、近隣住民からも親しまれている旧大橋眼科医院。歴史的にも貴重な建物のようなので、何とか保存される道が見つかることを祈るばかりだ。