言葉や態度などで相手に苦痛を与えるモラハラ(モラルハラスメント)。直接的な暴力ではないこともあって、一見「いい夫」「いい妻」のように見えている配偶者が、じつはモラハラ夫(妻)である場合も多いといいます。
2人の娘さんを育てながら、モラハラ夫と義母の不快な言動に耐えていたmaronさんは、Twitterに彼らの言動と自分でできる対策を投稿。書籍『ウチのモラハラ旦那&義母、どーにかしてください! 闘う嫁のサバイバル術
』(KADOKAWA刊)にまとめました。
ここではmaronさんに、モラハラ夫と義母のエピソードや、離婚へ向けて考えていることについてインタビューしました。


結婚すると、夫はモラハラ人間だったのです…。

夫はモラハラ、義母は嫁イビリ。なのに「介護はやって当たり前」!? maronさんインタビュー



モラハラ夫と息子にべったりの義母が、妻であるmaronさんを虐げる様子を、あるときは写実的に、あるときはコミカルに書籍にまとめたmaronさん。「今まで」と「これから」について伺いました。

●好青年と結婚したはずが、モラハラ夫に。二世帯住宅で同居する義母から嫁イビリを受ける日々



――家の中での態度とは一転、外面がいい人も多いと言われているモラハラ人間。maronさんのご主人も結婚前、職場では好青年だったそうですね。

はい。会社内ではまったく隙のない好青年でした。同僚はもちろん女性社員への気遣いや上司へのゴマすりなど、徹底的に“好青年”を演じていましたね。おつき合いをしているときから、「あいつなら大丈夫」「いい男を捕まえたなー」と言われたものです。

でも思えば、少しだけ違和感もありました。たとえば式場など重大な決定をするときは必ず義母の指示を仰ぐなど、旦那と義母の距離感が近すぎるのではないか…と。


今ならはっきりと断言できます。ママがいないとなにもできない「超」マザコン夫だったんです。
結婚後、あの快活でおしゃべりだった青年が、ムスッとした顔のままなにもしゃべらなくなりました。本にも書きましたが、私は病気なのかと心配しました。

「これが本当のオレだから」
夫の体を気遣う新妻へ放たれた言葉は、あまりにも残酷でした。

私はパニックに陥りました。要するにもう結婚という目標は達成したから、無理をしていい人を演じる必要はない、といったところでしょうか。あいた口がふさがりませんでした。
「釣った魚に餌はやらないってこと?」とわかりやすいたとえで旦那に質問したら「え? 魚がなに? どういう意味?」と、とぼけた答えが返ってきたのです。倒れそうになりましたね。

――maronさんのTwitterフォロワー数は19万人超!(2021年4月時点) ということですが、それだけモラハラ夫や義母の所業に憤慨したり、maronさんの思いに共感する人が多い証でもあります。どんな声が寄せられていますか?

とにかく一番多いのは共感です。また「maronさんがんばれー」と応援のコメントも多く寄せられます。
夫からのモラハラ、義母からの嫌がらせのダブルパンチでフラフラになりながら、2人の娘のために闘い続ける私を見ていられないのでしょうね。


またモラハラ旦那&義母への怒りコメントもあります。「信じられない!」「人間じゃない」などなど。はい、私もまったく同感です。

「ツイートを読むと腹が立って嫌な気持ちになるけれど、つい読んでしまうんです」という方も、たまにいらっしゃいます。こういう方には、なんだか申し訳ない気持ちになります。

興味深いのは「わかります! うちの『元』夫も同じでした」との声が多いことです。やはり生活費を渡さない、怒鳴る、イヤミを言い続ける、マザコン、ときには暴力をふるう…といったモラハラ夫とは離婚する方が多いのでしょう。私ももう限界です(笑)。


元々、彼らとの生活で溜まった日々の鬱憤を発散するために始めたTwitterでしたが、今ではフォロワーの皆さんからの声に勇気づけられています。本当にありがたいです。

――maronさんの「結婚しても仕事を辞めない方がいい」とのご意見にはすごく共感してしまいます。結婚すると厳密にはお財布が分けられていない感というか、「稼ぎの少ない方が下」のようになってしまいますよね。本当は、家事や育児で疲弊しているはずなのに、買いたい物も自由に買えないという…。

おっしゃるとおりで、結婚しても仕事は辞めない方がいいです。なかには転勤や海外赴任など仕事を続けるのが困難な状況もありますが、よほど人間ができた夫じゃないと、収入が家庭内の序列に直結するからです。
「ウチの夫に限ってまさか…」と思う方もいるでしょうが、私もその『まさか』でしたから(笑)。

とくにモラハラ気質の人はなにがスイッチになるかがまったく予想できません。ウチの場合は結婚、出産、無職、同居と段階を踏むうちに、「モラハラスイッチ」がマックスにオンされた感じです。

専業主婦になったときはひどいありさまでした。
毎日夜中に帰宅する夫、同居する毒義母のストレス、プラス家事・育児、授乳や夜泣きなどでボロボロでした。家事は365日休みなし、育児は24時間ノンストップフル稼働の超ブラック企業のようなもの。


買い物をしてストレス発散しようとしても、収入がないと始まりません。ウチでは経済的DVもセットでしたから、100円均一の化粧水や化粧品ですら買うのをためらいました。

●モラハラ夫と息子にべったりの義母。「いい嫁キャンペーン」をやめてみた



――モラハラ夫となるタイプは、生活費に関しての経済観念が乏しい方が多いように感じます。自分の飲み代は棚に上げて、maronさんや娘さんたちの食べているアイスやイチゴの価格について嫌味を言ってきたり、わざと言っているというよりは本当に理解していないようにも見えます。これはやはり、お義母さんの影響が大きいのでしょうか。


お金の使い方や歪んだ物の価値は、おっしゃる通り義母の影響が強いと思います。
義母は典型的な過保護タイプ。夫が小さな頃から、転ぶ前に手と足と口を出しまくりケガをしないようにしてきたようです。甘やかされた夫は実家に住んでいたときは、家に1円も入れていませんでした。

でもモラハラ夫の経済観念の欠如はこれだけが原因ではありません。
「自分が優位でいる」ためには手段を選ばない彼らは、小さな出来事を100倍くらいにして相手を責め立てるのです。1本30円のアイスも特売のイチゴも、モラハラ夫が妻を責める手段にすぎません。彼らはなんだっていいんです。

ちなみに地獄の二世帯住宅を建てるときも、ローンの組み方が非常にダイナミックでしたね。
明らかに無理な返済計画を立て、最後には「なんとかなるさ!」と義家族だけで盛り上がっていました。

――お義母さんといえば、「主婦として失格」「嫁として失格」「母として失格」の3大ダメ出しのセリフも印象に残っています。正直なところ「それあなたが言うんかい!」としか言いようがないです(笑)。いつ頃からお義母さんに言い返せるようになったのでしょうか。

これはハッキリと覚えています。
2018年2月、私は義母から3大ダメ出しセリフを言われ、一睡もできずに朝を迎えようとしていました。
スマホ片手に「義母 無理」「義母 撃退」「嫁姑問題」などのワードでひたすら検索していると、あるツイッターアカウントが目に飛び込んできました。私と同じく、義両親と敷地内同居している方が、義母への愚痴をツイートしていたんです。
「これはストレス発散になる!」と即アカウントをつくりました。


この日を境に義母との関係、いわゆる「いい嫁キャンペーン」は終了しました。
そして少しずつですが「お義母さん、それはおかしいです」と物申せるように。「お義母さん、次のお嫁さん見つけておいてくださいね」くらいは言い返せるようになりましたね(笑)。

――これまで最もやられて(言われて)度肝を抜かれた言動とは? 夫、義母それぞれで聞かせてください。

私個人に向けられた言葉はなんとか我慢できるのですが、私の近しい人物に対しての言動は許せません。
夫が実父の写真を見て「このじいさんだれ?」と発言したこと、実母が体調を崩して入院した際に「そんなに心配しているように見えないけどw」と言われたこと。人の心を持っていないのでは? と疑いたくなりました。


義母に関しては、男尊女卑関係の言動に驚かされます。
私の娘に対して「女に学歴はいらない、中学を出たら働けばいい」と言ってきたときには、さすがにブチ切れました。それで終わらず、嫁に反発されて悔しかったのか、後日、私の実家に電話を入れてきました。
「お宅の娘さんは、ウチの息子(夫)より娘を大事にするんです。女に学歴は不要です」と。
延々1時間以上説教を続け、さすがの実母も「いい加減にしてほしい」とボヤいていたほどでした(笑)。

そして夫&義母共通の言動で「あ然」とさせられるものがあります。
「義両親の介護は長男の嫁である私がやって当たり前」という主張です。夫には何度も「あなたの両親の面倒はみない、自分でなんとかして」と言っているのですが、「え? なんで?」と寝ぼけた返事が返ってきます。

●男尊女卑の義母に感じたのが「世の中には一生わかり合えない人間がいる」ということ



――お義母さんとご主人の絆は固い一方で、一般的なおばあちゃんが孫を溺愛するような雰囲気はご著書から伝わってきません。またご主人と難しい年頃の上のお子さん(長女)との関係も良好とはいいがたいですよね。一方で下のお子さん(3歳)はかわいがっていらっしゃいます。お子さん2人は圧倒的に「ママ派」でしょうか?

圧倒的にママ派! と言いたいのですが、残念ながらそうでもないんです。
長女も次女も、まあまあ義母にはなついています。なるべく私が防波堤となり、夫と義母の狂気を見せないようにしてきたからかもしれません。正直モヤモヤしますが…。

夫も、長女が小さな頃はそれなりにかわいがっていました。
ところが小学5年生くらいになり反抗期を迎えると、手のひらを返したように冷たくなったんです。自分の言いなりにならない人間は、たとえ血を分けた娘でも容赦しないとは恐ろしいですね。

義母も同じです。小さな頃はかわいがっていたものの、同じく反抗期を迎える頃に態度が急変、義弟の息子に入れ込むようになりました。今は次女も甥っ子たちと比較され、お土産のレベルなどで差をつけられています。


子どもたちも成長しているので、ウチのお父さんとおばあちゃんはなにかが違う…と感じているかもしれませんね。
そのせいか最近は母子3人で川の字で寝たり、一緒にお風呂に入ったりと距離感が近くなっています。
漫画同様、なにがあっても2人の子どもだけは育て上げようと思っています。

――また、「サイコパス義母撃退15箇条の心得」も参考になりました。14条の「世の中には一生わかり合えない人間がいると肝に銘じるべし」というお言葉に大きく頷いてしまいます。ただ、そうはいっても義両親と距離を置けずに悩む人は多いと思います。義母さんとの戦いのなかで得たmaronさんの教訓、アドバイスをお願いします。


ここからは、「義母が嫁イビリをする人間である」という前提の元お話しますが…。
まずそういった義母との同居は絶対におすすめしません。物理的な距離が遠いなら、風邪や子どもの行事などを理由に年数回まで会う機会を減らせます。これが同居や近距離に自宅を買って住むとなると、逃げたくても逃げられない状況になります。

さらに義母とのLINE交換、義家族グループLINEには参加しないほうが無難です。義母にとって嫁は「かわいい息子を奪った女」、もしくは「自分の言いなりになって当たり前の存在」だからです。自分の仕事が忙しく、どうしても義母の助けが必要な方以外は遠方に住むことを推奨します。


えらそうなことを書いてしまいましたが、じつは私も、3年前までは「嫌われたくない」との思いから、行動に移せませんでした。夫が100%義両親の肩を持つせいもあり、私が我慢すれば丸く収まる、私さえ我慢すれば…と思っていました。

でも攻撃的な相手はそんな心の隙間に忍び込んできます。maronさんならなにを言ってもいい、言うことを聞いて当たり前の存在だと認識されます。ここまでくると人権も何もありません。義母の奴隷です。

経験上、夜眠れない、食欲がない、なにをやっても楽しくない、こんな状態になる前にスマホから電話番号を削除したほうが精神的にラクです。

●夫に離婚を切り出すと、逆上して義母のところへ「家出」…?



――巻末には別れたいと思ったときの具体的なステップ、弁護士(『おとめ六法』/KADOKAWAの上谷さくら先生)が監修した助言や相談窓口なども紹介されています。現在ブログを拝見すると、別居状態に近づいているようですが…。現状について、話していただける範囲で教えて下さい。

そうですね、一番最近の事件は私に離婚を切り出された夫が逆上して、「オレが出ていく!」と同居の義母宅へ家出したことです。壁1枚隔てた隣なんですけどね(笑)。


拙著の巻末に収録された上谷さくら先生監修のコーナーは、別居や離婚、モラハラの証拠被害への具体的なアドバイスが分かりやすく書かれています。モラハラに悩む方向けの“サポート先一覧”には、相談機関にすぐアクセスできるようQRコードを記載しました。

離婚の慰謝料や諸条件については、家庭によってケースバイケースです。ですので一概には言えませんが、私の場合は慰謝料はあまり期待できないようです。そのあたりについても、専門家の観点から嘘のない本当のところだけを書いていただきました。
シングルマザーの子育ては思うより苦労が多いかもしれませんが、使える制度を使って少しでもストレスを少なく別居や離婚に踏みきりたいですね。

弁護士さんなどの専門家に依頼するときは、得意分野と相性が大事だと思います。上谷先生もおっしゃっていますが、モラハラ旦那と闘うなら非常に大切なポイントです。離婚なら離婚に特化した事務所、そして女性の気持ちに理解のある弁護士さんを探すことが大切だと思います。

――家族や仕事、育児、今後の人生など、悩み多き世代であるESSEonlineの読者に向け、この本を通して伝えたいメッセージをお願いします。

この本に書いたことはすべて実話です。でも本当に恐いのはこの男尊女卑、モラハラが日本中いたるところで行われていることです。
私よりもっと壮絶なモラハラやDVを受けている方はたくさんいるのに、愚痴はタブー、我慢が美徳とされる文化の中で、耐え忍んで生活をしている方のなんと多いことか…。

真面目な人や努力家の人、自分のせいだと思い込んでしまう人ほど我慢を重ねてしまうので、自分が壊れないうちにさっさと逃げることも大事が大事ですね。自分もまだ実行できていないですが…。一般的にはタブー視されがちな愚痴も、スッキリするなら大いにアリだと思います。

私は次女出産のときに仕事を辞めたので、経済的な基盤を整えるのに3年以上かかりました。
繰り返しになりますが、経済的な自立は自分が自由になるために必要不可欠です。
なんの取り柄もない私でも、ゼロからのスタートで現在は執筆やWebサイトのディレクターの仕事をいただけるようになりました。決してあきらめず、自分の好きなことや興味のあることを続けてください。

ESSEonlineの読者様はご自身のキャリアを積みたい方、育児に専念したい方、まだ決めていない方などさまざまな環境でがんばる女性が多いと思います。自分へのメッセージでもありますが、自らの人生を犠牲にしないで、「自分らしい人生」を送ってほしいと切に願います。

<イラスト/高田真弓 取材・文/本山ことま>

【maronさん】



モラハラ旦那&義母と闘うアラフォー主婦。Twitter(@maron99668508
)のフォロワー数は19万人を超える。著書に『ウチのモラハラ旦那&義母、どーにかしてください! 闘う嫁のサバイバル術
』(KADOKAWA刊)。ブログ「maronの日常オフィシャルブログ
」やインスタ(@maron_matome
)、note『maronの秘密の部屋
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