最後のホンダ「S660 モデューロX」は本格派! 走りを極めた軽スポーツがこだわったこと

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ホンダアクセスがひと手間加えた「S660 モデューロX」とは

「2022年3月に生産終了」と2021年3月12日に発表されたホンダの軽ミドシップスポーツ「S660」。

 その反響は凄まじく、購入希望者が殺到。その結果、予定していた販売台数が2020年3月30日にすべて終了、つまり「完売」してしまいました。

最後の特別仕様車「S660 モデューロX バージョンZ」

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 ちなみに6年前の2015年3月30日はS660の発表日であり、何か運命的なものを感じます。

 S660はほかのモデルと比べると作るのに手間がかかるため、1日の生産台数に限界があります。それを逆算していくと、「これ以上のオーダーは受けられない」という判断になったわけです。

 なかでも、コンプリートカーの「モデューロX(バージョンZを含む)」は持ち込み登録のため、生産終了とされる2021年3月31日までに登録を完了しないと、4月以降はナンバーを付けることができなくなってしまうそうです(ノーマルは登録車なので問題なし)。

 そんな状況のなかでS660のインプレッションを書くのは悩ましいところですが、納車を楽しみに待っている人、またはこれから中古車を買おうと検討している人のためにお届けします。

 今回は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで、事実上のファイナルモデル「S660 モデューロXバージョンZ」に乗ってきました。

 モデューロXはホンダ車の良い所/悪い所を知るホンダアクセスの職人集団がひと手間加え、クルマにこだわりを持つ人に向けてストライクゾーンをより真ん中にしたコンプリートカーシリーズです。

 モデューロXがノーマル仕様と違うところは、実効空力を目指したエアロダイナミクスや走る道/環境を選ばないフットワーク、大人の琴線に触れる内外装です。

 そして、モデューロX バージョンZはよりストイックで非日常に憧れるユーザーに向けて、専用コーディネイトが施されています。

 外観はバージョンZ専用色の「ソニックグレー・パール」と定番の「プレミアムスターホワイトパール」を用意。

 ブラッククローム調のエンブレムやステルスブラック塗装のアルミホイール(通常はブラックスパッタリング)、ブラック塗装の専用ガーニーフラップ付アクティブスポイラーなどを採用しました。

 内装はカーボン調のインテリアパネル(メーターバイザー/助手席エアアウトレット/センターコンソール)、ラックススエード&合皮のドアラインニングパネル、専用シートセンターバック、専用アルミ製コンソールパネル(バージョンZロゴ入り)などを採用。内外装ともにヒカリモノを抑えることでモデューロXの機能美がより際立って見えます。

 なお、走りに関しては通常のモデューロXから変更はありません。それについて開発者に聞くと「モデューロXの走りはバランスで成り立っていますので、何かをプラスすればOKというわけではありません。我々は現時点でベストだと認識していますので、あえて手を入れていません」と語っています。

中古のS660をチューニングした「モデューロXX」が欲しい!

 サーキットでは、まずはワインディングを想定したスピードで走行します。走りはじめのステアリングフィールは心地よいダルさを持ちながらも応答性が高く、いいベアリングに交換したかのような滑らかさがあります。

 さらに、しなやかな足まわりの動きとショックの吸収のさせ方、そして硬めながらも不快に感じない質の高い乗り心地などは、軽自動車であることを忘れてしまうレベルです。

ホンダ「S660 モデューロX バージョンZ」

 ただ、それはモデューロXの序章に過ぎません。徐々にペース上げていくと本気のスポーツであることがわかります。

 ノーマル仕様は良くいうと「じゃじゃ馬」といった印象に対して、モデューロXはまさに「大人スポーツ」といった味付けになっています。

 まず4つのタイヤが路面にビターっと張り付いている印象が強いのと、まるでトレッドが拡大されたかのような安定感とコーナリングの一連の動きに連続性があるので限界付近でもコントロールがしやすいのと、路面変化(ドライ→ウエット)でもドキッとするようなことはありません。

 ちなみに袖ヶ浦フォレストレースウェイの3コーナーから4コーナーは横Gが掛かった状態でブレーキングしますが、そのような状況でも姿勢が乱れることはないうえに、タイヤの接地感の違いや路面から伝わる情報も的確なので、ノーマルと同じタイヤを履いているとは思えないほどの安心感がありました。

 つまり、クルマに対する信頼度が非常に高いので、初心者には「安心感」、上級者には「懐の深さ」を感じさせる乗り味で、ドライバーは冷静な状態のままホットに攻めることができるでしょう。

 さらに高速道路などでは軽自動車を感じさせない直進安定性の高さと6速MT採用でエンジン回転数を抑えたことによる静粛性の高さなど、GT性能も優れています。

 これらはサスペンションだけの効果ではなく、サスペンションの一部のように機能させているホイールや空気の力を見方にしたエクステリアデザインとすべてが上手にバランスして実現しました。

 そのため、仮にパーツをプラスもしくは置換すると、逆に性能が下がってしまうかもしれません。

 ただ、この走りだと欲が出てしまいます。それはノーマル仕様の64馬力から変更のないパワートレインです。

 クルマとしてのバランスを考えると、個人的にはこのままの状態で80馬力から100馬力くらいのユニットを搭載しても何も問題はないと思っています。

 そもそも、開発時に「リミッターをカットしてテストをおこなっている」と語っていますので、その先を見てみたいと思うのは当然のことでしょう。

 ただ、すでに新車でS660を購入することができない以上は難しいのも事実。

 ちなみに、中古車サイトを見るとS660の中古車は約420台確認できます(執筆時点)。そこで筆者(山本シンヤ)が提案したいのが、「S660中古車商品化」計画です。

 良質な中古車もしくはオーナーカーをベースにホンダアクセスの手でモデューロXに架装。その部分はホンダアクセスが保証をするというやり方ですがどうでしょうか。

 外観をガラッと変えた「S660ネオクラシック」は、キット販売で対応をしていますが、モデューロXはコンプリートモデルであることに意味があるので、ホンダ認定中古車ディーラー(オートテラス)専売のようなシステムだといいでしょう。

 ナンバーが付いているモデルをベースにするメリットを活かし、新車時ではできなかったプラスαのカスタマイズ(=出力アップ)なども盛り込むことも可能だと思います。

 その名もモデューロXを超えた「モデューロXX」。ご検討いただけると幸いです。