「イタ車」「アメ車」「日本車」などかつては「国別」の「個性」があった自動車! いま「国の色」が薄れゆくワケ
自国の自動車メーカーが主力になるのは基本
当然といえば、当然のこと。
その国に本社や主要な製造拠点があれば、そのメーカーのクルマがその国の人気車になる。具体的には、ドイツでならばジャーマン3(メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲングループ)。アメリカならば、デトロイト3(GM、フォード、ステランティス【旧FCA】)。そして、フランスならば、プジョー、シトロエン、ルノー、イタリアはフィアットだ。さらに続けると、韓国はヒュンダイとキア、スウェーデンはボルボとなる。
また、日本人があまり知らない地元メーカーでいえば、スペインはセアト、チェコはシュコダである。両ブランドはフォルクスワーゲングループに属しており、フォルクスワーゲンやアウディとの部品共通性が高い、事実上のサブブランドだ。
こうした“世界のクルマ”に出会える、ユーザーにとって数少ないチャンスがモーターショーだった。70年代や80年代、東京モーターショーが毎年、東京臨海地域の晴海展示場で開催されていたころまでは、自動車雑誌から“世界のクルマ辞典”という類の出版物が毎年発行され、ユーザーの多くが海外での自動車生活を遠くから眺めて楽しんでいたものだ。
だが、90年代に入ると自動車産業の国際化が一気に進み、たとえば日系メーカーのアメリカ現地生産が盛んになった。そうしたなかで、地元メーカーのクルマの販売が落ちてくると、保護主義的な観点から貿易摩擦・経済摩擦が起こった。
その後、粘り強い労使交渉や政府間の通商交渉を経て、日本メーカーはアメリカで生産するメーカーとして、アメリカ人から認識されるようになり、トヨタやアメリカは「われわれもアメリカンメーカーだ」という表現を使うようになった。
こうした状況が世界各地で広がることで、結果的に、クルマによるその国の特色が徐々に減ってきた。2000年代に入ると、たとえばトヨタのIMVのような経済新興国向けの世界戦略車が登場ししたことで、モデルやメーカーの国籍に対する認識が世界各地で変わっていったのだ。
さて、日本でも電動化シフトが大きな話題になっているが、2020年代から2030年代にかけて、世界市場ではEV、プラグインハイブリッド、さらに燃料電池車の普及が見込まれる。
電動車開発には多額にコストがかかることや、商品開発が電動系パーツやプラットフォーム(車体)の共通性を重んじることから、メーカー間の連携が一気に進むことになる。そうなると、ますますメーカーやブランドの個性に、各国の色が出すことが難しくなるかもしれない。
時代はいま、大きく変り始めている。