「信頼する先生から子どもへの性暴力、気づかれにくい」 当事者が深刻な実態を法務省の委員会で訴え
「教師に服を脱がされた」「部活のコーチに体を触られた」「先生にレイプされた」。教育現場における、教師や部活顧問など指導者による、児童・生徒に対する性暴力被害の一端が、アンケート調査( https://nomoreesm.wixsite.com/home )で明るみに出た。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)
●性被害訴えの女性がアンケート調査調査したのは、在校時から札幌市立中学の男性教師に性的被害を受けていたとして、教師と札幌市を相手取り、損害賠償訴訟を起こしている石田郁子さん(42歳)。調査によると、回答した約700人のうち、4割以上が性的な被害に遭っており、中には日常的に性行為を強要されていたなど、深刻なケースもあった。
近年、性犯罪被害者や支援者らによって、刑法の改正を求める声が高まっており、法務省では今年6月に「性犯罪に関する刑事法検討会」を設置。7月9日に開かれた会合では、石田さんに対するヒアリングがおこなわれ、このアンケート結果も提出された。
石田さんは、ヒアリングで「信頼する教師からの被害は気づきにくいし、被害に遭った子どもは何をされたのか理解するまでに時間がかかり、訴えることは難しいです」と語り、被害を訴えることのできる時効の撤廃や、性的同意年齢の引き上げなど、再発防止を求めた。
●「被害を訴えても、学校側で隠ぺいするケースがある」アンケート調査は5月11日から31日に実施。石田さんの訴訟を支える会のSNSアカウントや、雑誌などでも呼びかけられ、726の有効回答を得た。回答者のうち男性は14.5%、女性は83.1%で、10代から70代までだったが、20〜40代がそれぞれ20%以上で集中していた。
「学校の教師から在学中、または卒業後に性的な体験・性暴力被害にあったことはありますか?」という問いに対しては、42.2%の人が「ある」と回答した。
どのような体験・被害かは、次のような回答が得られた(複数回答)。
・体や容姿に関すること或いは性的な発言・会話をされる (41.1%)
・体を触られる、触らせられる(29.2%)
・衣服をめくられる、触られる(8.5%)
・性的な行為をされる、させられる(7.7%)
・自分の姿を撮影される、させられる(4.8%)
・性的な画像を見せられる(2.8%)
ヒアリング後に会見した石田さんは、アンケート調査の結果について「非常にがっかりした。学校以外でも、フリースクールや習い事で性被害はあります。学校側で隠蔽するケースもありました。真剣にこうした被害を防いでほしいという声は多いです。安全な学校で、 信頼している教師から子どもたちが性的な被害に遭ってしまうことを知ってほしいです」と述べた。
●「スクールセクハラ」という言葉の軽さに隠される性被害石田さんは、アンケート調査でわかった被害の実態として、次のようなことがあったと説明した。
・教師に服を脱がされた
・教師に胸や性器を触られた
・教師から性行為を求められた
・教師にレイプされた
・教師から「胸が大きい」「安産型だな」など体つきについて言われた
・教師から自宅に呼び出された
・教師にドライブに連れていかれた
・教師にホテルに連れ込まれた
・部活の顧問から体や性器を触られた
・教師から生理について揶揄された
また、石田さんは「よくスクールセクハラという言葉が使われますが、これは教師による学校での性犯罪を意味し、レイプも含むとされています。被害に対する言葉としてとても軽いです」と指摘。国や文科省で被害の実態をきちんと把握し、教育現場で子どもを守るよう、あらためて訴えた。
●教師による性被害のアンケート、今後も実施石田さんは、中学3年生だった15歳から、キスされるなどのわいせつな行為が始まり、大学2年生の19歳になるまで行為はエスカレート、2016年2月にはフラッシュバックをともなうPTSDを発症したと訴えている。
しかし、被害から20年以上が経過していたことから、民法上の損害賠償請求権が認められず、「除斥期間が過ぎている」として、東京地裁は2019年8月、石田さんの訴えを退けた。現在は東京高裁で争っており、次回の口頭弁論は9月24日に予定されている。
石田さんによると、追加でアンケートをおこない、今後、「性犯罪に関する刑事法検討会」に提出するという。