久保建英は「モンスターになる」 恩師が見る“伸びしろ”「どんどん成長していく」
プロトレーナーの木場氏が証言 「22歳まで筋肉と骨格が付いてくるので、まだ3年ある」
マジョルカの日本代表MF久保建英は今季、リーガ・エスパニョーラ1部で25試合出場3得点を記録。
現地時間13日には下部組織時代を過ごしたバルセロナとの一戦に先発フル出場を果たし、強烈ミドルと低弾道FKで存在感を示した。久保を長年指導するプロトレーナーの木場克己氏(COREトレSTUDIO)は、フィジカル面で成長過程にある新星について「モンスターになるのでは」との期待を明かしている。
久保は昨夏、FC東京からスペインの名門レアル・マドリードに完全移籍。シーズン開幕後にマジョルカへの期限付き移籍が決定した。当初は出場機会に恵まれない時期も過ごしたものの、次第に出番を増やして結果を残すと、新型コロナウイルスによるリーグ中断前からはレギュラーの座を確固たるものとしている。
13日のバルセロナ戦は、自身にとって2度目の“古巣対決”となった久保。チームは0-4の大敗を喫することとなったが、前半22分には強烈な左足のシュートでドイツ代表GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンを脅かし、その8分後にも低弾道FKで再びテア・シュテーゲンにセーブを強いた。終始バルセロナに圧倒されるなか、マジョルカの数少ない決定機を演出してみせた。
スペインでの1年間で、フィジカル面も目に見えて向上している久保。しかし決してパワーで欧州の選手たちと渡り合っているわけではなく。必要とされるフィジカル面の要素を備え、適切に使うことで能力を発揮している。体幹トレーニングの積み重ねが成果として出ているなか、久保を小学5年生から指導する木場氏は、サッカー選手のフィジカル強化における重要なコンセプトを語った。
「サッカーで必要なフィジカルといえば、走らないといけないし、ボールを蹴らなきゃいけない。走るための心肺機能と、ボールを蹴るための軸足。その2つがアンバランスだと、怪我につながってしまう。成長期の段階でどうフィジカルを高めるべきかと言えば、自分は体の軸を作るだけでした。例えばボールをもっと強く蹴るとなったら、ブレない軸足がベースになって、脇腹で足を引き上げて蹴る。パワーも大事ですが、パワーだけがフィジカルではありません。しっかりと走れて、狙ったところにボールを蹴る。それを実現するためのフィジカルトレーニングであるべきです」
実際に久保はスペインでも走り負けることなく、持ち前のドリブルと正確なキックで存在感を示している。木場氏は「一般的に人間は22歳までが骨と筋肉がどんどん成長していく期間」と説明。その伸び代について、期待をかけた。
「プロになって4年目ですが、まだ19歳。食事や栄養面も関係してきますが、22歳までは成長期間。成長過程のなかでしっかりと練り上げることはできると思いますし、3年間でどれだけのことを積み重ねていけるのか、という期待もあります。1年間でこれだけ体が変わったわけなので、とんでもないモンスターになるんじゃないかとも思っています」
怪我の危険性にも過度な心配はせず 「彼自身もまだまだ高みを目指している」
一方で、どんな選手にとっても大敵となるのが怪我だ。フィジカルの成長過程で世界トップレベルのリーグを戦うことは、相応のリスクが伴う。しかし、木場氏は「基本的にはフィジカルと言っても、怪我をしない体が一番」と語り、成長年代への指導への基本哲学を紹介。久保についても過度な心配はしていないと明かす。
「いろいろ注目されますから、削りに来る相手選手も多いと思います。それに対応できるような筋肉を付けておかないといけません。膝などで重大な怪我があると、その後のプレースタイルも変わってしまいます。ただ、小中学生の頃からずっと言ってきましたから、本人もしっかりと理解しています。彼自身もまだまだ高みを目指しているので、楽しみですね」
この1年で急激な成長を見せる久保が、怪我などのアクシデントに見舞われることもなく、さらに濃密な3年間を積み重ねる――。その先には、まさにモンスターと形容すべきサッカー選手が生まれる可能性があるのかもしれない。
[PROFILE]
木場 克己(こば・かつみ)
KOBA式体幹バランストレーニング協会代表。都内の「COREトレSTUDIO」運営。鍼灸師、柔道整復師。FC東京ヘッドトレーナー(95〜02年)を経て独立。久保建英、中井卓大らの専属トレーナー。(Football ZONE web編集部・片村光博 / Mitsuhiro Katamura)