コロナウイルスの影響による倒産(法的整理)

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 新型コロナウイルス関連倒産が、4月14日正午現在で53件に上っている。内訳は法的整理が25件、事業停止し、弁護士に事後処理を一任したものが28件だ。

 北海道三富屋が破産開始決定を受け、法的整理として関連倒産第1号となったのが2月25日のこと。そしてその1カ月余り後の3月27日時点では累計21件であったのが、3月末から4月初旬にかけてはリーマン・ショックを彷彿とさせる爆発的な増加ペースをみせ、以後、わずか10日間で50件の大台に乗せてきている。

 その傾向を分析すると“コロナ関連倒産”の実相が浮かび上がってくる。

全体の3割が債務超過、4割が赤字企業

 特筆すべきは、債務超過企業が非常に多いということだ。53件中、全体の28.3%にあたる15件で倒産前に債務超過状態となっていた。

 赤字企業も多い。直近決算で最終赤字に転落していた企業は21件(構成比39.6%)に達した。

 これらの事実は「新型コロナウイルス関連倒産企業の多くが、新型コロナ発生以前から著しく経営が不安定であった」ことを示している。さらに過去に遡って業績の推移をみると、売り上げがピーク比で半分以下に縮小している企業は14件(同26.4%)あった。金融機関に返済のリスケジュールを行っていた企業は少なくとも7件(13.2%)、そのほか支払遅延が発生したり、支払いの延期要請を行っていたりした企業も少なくない。新型コロナの流行が最後の引き金を引いたのは確かであるとしても、必ずしもそれが倒産の主因であるとは言い切れず、もともと経営基盤の脆弱な企業が急激な需要の蒸発を前に事業継続を断念したというのが実際のところだ。

 業態別の内訳で、もっとも多かったのがホテル・旅館の14件で全体の26.4%を占めた。ついで食品製造・販売が9件(同17.0%)、飲食店が8件(同15.1%)、アパレルが5件、旅行関連は3件だった。また、インバウンド消費への依存度が明らかに大きく、外国人観光客の減少が致命傷となった企業が少なくとも6件あり、中国などアジア各国とのサプライチェーンが断たれたことによる倒産も数社あった。

倒産企業数はしばらく増加傾向か

 では、この先をどうみるか。制度融資や助成金などセーフティ・ネットが張り巡らされつつあり、この点はリーマン・ショック時よりむしろ東日本大震災の時と状況が似ていて衝撃は幾分緩和されることが予想される。しかし手続きは煩雑で支給には時間がかかり、ここからこぼれ落ちるかたちで倒産企業数はしばらく増加傾向が続くとみるのが妥当だろう。直近の倒産事例をみていると、新型コロナ関連に限らず何でもかんでも延命させる、という状況にはなっていない。

 ただ、経済の専門家からは資産価格の下落によってやがてグローバルな金融システムにも影響が及ぶとの悲観論が多く聞かれ、一方では、都市封鎖で2週間も我慢すれば感染者数はピークアウト、2〜3カ月で生産や消費も回復に向かう(実際、中国や欧州、米国など先行する国々をみると程度の差こそあれそうした経緯を辿っている)との楽観論もある。つまり、未来の予測など誰にも出来ない。

 新型コロナ関連倒産のデータが示すのは、ウイルスに対する人体の免疫力と同様、企業にあっても「弱い者からやられる」という厳然たる事実だ。政府の支援策などは、あくまで副次的な効果を持つものに過ぎない。経営体力を維持・向上させる不断の努力をしているからこそ、有事の際の非常の手段も有効性を増すということだろう。