立川志らく

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 落語家の立川志らく(56)がメーンキャスターを務めるTBSの朝の新ワイドショー「グッとラック!」(月〜金曜、午前8時)が始まった。9月30日放送の初回の視聴率は2・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。朝のワイドショーで断トツのビリだった。

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 朝のワイドショー戦争でトップを快走する「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)の2018年の年間平均視聴率は9・1%。立川志らくの「グッとラック!」の初回視聴率はその3分の1にも満たない2・9%だった。

 もともとTBSの朝のワイドショーは弱いが、「グッとラック!」の前身番組「ビビット」の最終回は3・1%。これでは何のために新番組をスタートさせたのか分からない。

立川志らく

 大惨敗の理由は、まず志らくの好感度が高くないせいだろう。これは放送開始前から指摘されており、他局はTBSの真意を測りかねていた。

 その上、演出も悪い。匿名掲示板・2ちゃんねるの開設者、西村博之氏(42)らコメンテーターを5人も招きながら、志らくも、もう1人のメーンキャスターである国山ハセン・アナウンサー(28)も、ほとんど指名をしなかった。このため、発言意欲のあるコメンテーターが自発的に話す場面が目立った。

 志らくも国山アナもメーンは初めてなので、進行が拙いのは仕方がない。となると、志らくは気の利いた発言で番組に貢献するしかないが、精彩を欠いていた。

 韓国の歴史教育を取り上げた特集では、反日教育の量の多さが紹介されたあと、志らくは「韓国は政治と教育を見直してほしい」と、コメントしたが、どうしてほしいのか具体論がなかった。

 なにより、各国とも教育は国の根幹だ。他国の人間が軽々に口を挟むべきものではない。日本人だって海外のキャスターに教育を非難されたら、不快になる。

 志らくは日韓関係の改善を望んでいるようだが、日本のワイドショーのメーンキャスターが自国の教育に難癖を付けたと知ったら、余計に関係がこじれかねない。

 それでも他国の教育に口出ししたいのなら、少なくとも一定の勉強を積み、どうすべきなのか具体案を示すべきだ。井戸端会議の座長をやっているわけではないのだから。

 番組では、韓国からの元留学生の女性が、東京・浅草の街頭に立ち、フリーハグをしていることも伝えた。日韓友好のための草の根運動である。

 これについて志らくは、「これが本当の姿です」と語ったが、やはりメーンキャスターの言葉とは思えなかった。日本を嫌っている韓国人、憎んでいる韓国市民も存在することは誰だって知っている。日本にも韓国にもさまざまな人がいるのだ。1つのエピソードで全体像を語るべきではない。また、フリーハグのような活動が理想と考える意味での言葉だったのなら、そう言わないと誤解を招く。

 志らくはジャーナリストではないのだから、TBSがもっとアシストすべきなのだろう。ジャーナリストが落語家を兼職できないように、落語家がジャーナリストの代わりを務めるのも難儀なのだから。断片的な知識や個人的感想を口にしていれば済んでしまうコメンテーターとは立場が違う。

 知識不足から、見る側に物足りなさも感じさせる場面もあった。関西電力の役員らが、高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題を取り上げた際、志らくは「これは捕まえないと」「犯罪ですよ」と、憤ったが、何の罪で捕まえるべきなのかを説明できなかった。弁護士やジャーナリストや法律の分かる出演陣もいなかったので、一体どんな罪に問われる可能性があるのか見る側は分からなかった。不親切だ。

 該当する可能性がある罪は特別背任罪、取締役等の贈収賄罪である。江戸時代の瓦版屋と違い、法治国家のワイドショーなのだから「捕まえるべきだ」と主張するのなら、どんな法令に違反する疑いがあるのかくらいは説明すべきだ。

アフラックとのCM契約はいいの?

 なにより、志らくとTBSが罪深いのは、志らくと保険会社のアフラックがCM契約をいまだ結んでいることである。アフラックがいかに一流企業であろうが、将来、不祥事が起こる可能性は誰にも否定できない。そのとき、志らくとTBSはどうするつもりだ? 保険業界の一般的なニュースを扱う際にも志らくの立場は不適当だ。どう話そうが、公平性を疑われる。

 ジャーナリストはCMにも広告にも出ない。法律があるわけではないが、それ以前の倫理的問題だ。特定の「パトロン」を持ちながら、批評活動をするのはアンフェアなのである。志らくはジャーナリストではないが、やっていることは同じだ。

 ライバル番組「羽鳥慎一モーニングショー」の羽鳥慎一氏(48)も「とくダネ!」(フジテレビ)の小倉智昭氏(72)もCMには出ない。キャリアの長い放送人なので、常識をわきまえている。

「スッキリ」(日本テレビ)の加藤浩次(50)はCMに出ているが、これは同番組が「情報バラエティー」を自称しているせいか。ただし、やはり加藤もCMに出るべきではない。加藤のキャスターとしての評価が今一つ高まらないのは、こういった姿勢も一因であるように思う。

 一方、「とくダネ!」も9月30日放送分からリニューアルし、日替わりでスペシャルキャスターが登場することになった。火曜日はカズレーザー(35)がそれを務めることになったが、こちらは大化けを予感させる。

 頭が飛び抜けていいのは知られているとおり。埼玉県の名門・県立熊谷高から同志社大に進んだ。根っからの自由人で、大学卒業前に大手銀行に内定しながら、組織に入って働くのを嫌がり、お笑い芸人になった。

「とくダネ!」初登場の際にカズレーザーは「なんで僕なんでしょう」と言い、へらへら笑っていたものの、消費税増税を取り上げた場面ではこう鋭く指摘した。

「消費増税で一番苦しいのはお年寄り。それなのに、お年寄りに分かりにくいキャッシュレスのポイント還元はおかしい」

 関西電力の役員らが、高浜町の元助役から約3億2000万円の金品を受け取った問題で、関電側が「品物はスーツのお仕立て券やそうめん」と説明したことが紹介されると、カズレーザーは「関電の社員全員にそうめんを配ると、3億円になるんでしょう」
と、辛辣に皮肉った。

 カズレーザーは、偏見がない男として知られる。LGBTへの理解も深い。あらゆる差別を鼻で笑う。現代のワイドショー、ニュースに向いている。

 直言の男でもある。テレビ朝日「お願い!ランキング」内の人生相談で、東大生の女性が「プライドが高いので、将来まわりに合わせられるかどうか不安」と相談したところ、カズレーザーは「本当にプライドが高ければ、カメラの前で悩みを相談しないから」と即答し、女性をあ然とさせた。

 まだ35歳。ひょっとすると、カズレーザーは次代のワイドショー、ニュースを担う男なのかもしれない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月2日 掲載