知って納得、ケータイ業界の″なぜ″ 第47回 新料金プランで話題、SIMロック解除に100日かかるルールが存在する理由
2019年10月の電気通信事業法改正に合わせた携帯電話会社の新料金プランやサービスが相次いで打ち出されている。なかでも話題なのが、ソフトバンクとKDDIが、「割賦払いでスマートフォンを購入すると100日間SIMロックを解除できない」という規制の穴を突き、48カ月の割賦契約を前提にスマートフォンを安価に販売する“4年縛り”の仕組みを維持したことだろう。しかし疑問なのは、そもそもSIMロックを解除できる日数に制限があるのはナゼなのだろうか。
○携帯各社がSIMロック解除100日ルールを逆手に利用
楽天モバイルの参入予定に電気通信事業法の改正と、2019年10月は携帯電話業界にとって大きな出来事が相次ぐ月でもある。楽天モバイルは基地局整備の遅れなどが響き、順調とは言い難いスタートを切ることになりそうだが、分離プランの義務化や、いわゆる“2年縛り”の違約金上限が1000円に規制されるなどの厳しい規制が盛り込まれた電気通信事業法の改正は、当初の予定通り実施されることとなる。
法改正がなされれば、携帯電話各社の大半の料金プランなどは“違法”となってしまうことから、携帯電話会社は2019年8月から9月にかけ、法改正に対応した新しい料金プランを相次いで発表している。その内容を見ると、ソフトバンクが法改正を機として2年縛りを撤廃する一方、KDDIは違約金を上限の1000円にまで引き下げながらも、2年縛りの仕組み自体は維持するなど、“縛り”に関しては異なる戦略を打ち出しているようだ。
一方でこの2社に共通していたのが、スマートフォンを安く購入できる端末購入プログラムに関する施策だ。両社がこれまで提供してきた「アップグレードプログラムEX」(KDD)「半額サポート」(ソフトバンク)は、通信契約に紐づく内容であり法改正後の規制に抵触することから、変更を余儀なくされていたのだ。
そこで両社は法改正に合わせ、新しい端末購入プログラム「アップグレードプログラムDX」「半額サポート+」を発表している。双方のプログラムの仕組みはほぼ共通しており、スマートフォンを48カ月の割賦で購入し、月額390円を支払い、なおかつ25カ月経過後にスマートフォンを返却すると、残債の支払いが不要になるという内容で、一見すると従来のプログラムと大きな違いはないように見える。
だが従来と決定的に違っているのは、通信契約に一切紐づいていないこと。それゆえ例えば、NTTドコモのユーザーがソフトバンクショップに行き、半額サポート+を適用してiPhoneを購入することも可能となっており、一見すると自由度が非常に高いプログラムのように見える。
だがそこに大きな落とし穴があることが、特に法改正を主導した総務省や、総務省が実施した有識者会議の参加者などから問題視されている。なぜなら両社が販売するスマートフォンにはSIMロックがかけられているのだが、現在割賦払いで購入したスマートフォンのSIMロックは、購入後100日が経過するまで解除できないというルールが設けられているためだ。
なので実際は、NTTドコモユーザーが半額サポート+でスマートフォンを購入しても、SIMロック解除が可能になる3カ月以上の間、端末は“塩漬け”状態となってしまう。ゆえにこれらのプログラムが、実質的にKDDIとソフトバンクユーザーしか恩恵が受けられないものとなっており、法改正で排除したはずの“4年縛り”の温存につながってしまうことを、総務省側は問題視している訳だ。
○不正転売を防ぐ措置だったが今後は不透明
ではそもそもなぜ、SIMロックは割賦払いの場合、100日間解除できないというルールが存在しているのだろうか。それを知るためには、なぜ携帯電話会社がSIMロックをかけるのかを知っておく必要があるだろう。
携帯電話会社は元々、携帯電話端末の代金を大幅に値引きして販売することで契約者を獲得し、その値引き分の料金を毎月の通信料金から回収するという手法を取ってきた。それゆえ回線を短期間で解約され、そのスマートフォンを他社の回線で使われてしまうと、値引き分の料金を回収できず携帯電話会社は損をこうむってしまう。そこで他社での利用ができないよう、端末にSIMロックをかけることで流出を防いでいた訳だ。
だが料金を支払い終わったにもかかわらず、SIMロックがかけられたままなのは市場競争上問題があるとして、総務省を中心にSIMロック解除に向けた動きが進められ、2015年にはSIMロック解除の義務化がなされることとなった。しかしそこで問題となったのが、大幅値引きでスマートフォンを購入したにもかかわらず、意図的に契約を踏み倒し、海外などに転売してしまう不正転売の問題である。
携帯電話会社は以前より不正転売の問題に悩まされていたことから、料金の支払いが確認できるまでSIMロックに応じるのは難しいとし、総務省での議論の結果、端末料金の支払いがなされたことが確認されるまではSIMロック解除ができないようルール作りがなされたのである。2015年の義務化当初はその期間が180日であったのだが、2017年に策定された「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」ではそれが100日とされ、なおかつ一括払いで端末を購入した場合は即日SIMロック解除ができるようにもなっている。
つまりSIMロック解除の100日ルールは、携帯電話会社が抱える不正転売の問題に配慮したものだった訳だが、その携帯電話会社側がこのルールを巧みに利用し、従来の商習慣を維持する姿勢を見せたことが総務省側の怒りを買っている訳だ。それゆえ総務省は今後、SIMロックに対して一層厳しい規制を打ち出してくる可能性も高く、10月以降も端末購入プログラムに関しては不透明な状況が続くといえそうだ。
楽天モバイルの参入予定に電気通信事業法の改正と、2019年10月は携帯電話業界にとって大きな出来事が相次ぐ月でもある。楽天モバイルは基地局整備の遅れなどが響き、順調とは言い難いスタートを切ることになりそうだが、分離プランの義務化や、いわゆる“2年縛り”の違約金上限が1000円に規制されるなどの厳しい規制が盛り込まれた電気通信事業法の改正は、当初の予定通り実施されることとなる。
法改正がなされれば、携帯電話各社の大半の料金プランなどは“違法”となってしまうことから、携帯電話会社は2019年8月から9月にかけ、法改正に対応した新しい料金プランを相次いで発表している。その内容を見ると、ソフトバンクが法改正を機として2年縛りを撤廃する一方、KDDIは違約金を上限の1000円にまで引き下げながらも、2年縛りの仕組み自体は維持するなど、“縛り”に関しては異なる戦略を打ち出しているようだ。
一方でこの2社に共通していたのが、スマートフォンを安く購入できる端末購入プログラムに関する施策だ。両社がこれまで提供してきた「アップグレードプログラムEX」(KDD)「半額サポート」(ソフトバンク)は、通信契約に紐づく内容であり法改正後の規制に抵触することから、変更を余儀なくされていたのだ。
そこで両社は法改正に合わせ、新しい端末購入プログラム「アップグレードプログラムDX」「半額サポート+」を発表している。双方のプログラムの仕組みはほぼ共通しており、スマートフォンを48カ月の割賦で購入し、月額390円を支払い、なおかつ25カ月経過後にスマートフォンを返却すると、残債の支払いが不要になるという内容で、一見すると従来のプログラムと大きな違いはないように見える。
だが従来と決定的に違っているのは、通信契約に一切紐づいていないこと。それゆえ例えば、NTTドコモのユーザーがソフトバンクショップに行き、半額サポート+を適用してiPhoneを購入することも可能となっており、一見すると自由度が非常に高いプログラムのように見える。
だがそこに大きな落とし穴があることが、特に法改正を主導した総務省や、総務省が実施した有識者会議の参加者などから問題視されている。なぜなら両社が販売するスマートフォンにはSIMロックがかけられているのだが、現在割賦払いで購入したスマートフォンのSIMロックは、購入後100日が経過するまで解除できないというルールが設けられているためだ。
なので実際は、NTTドコモユーザーが半額サポート+でスマートフォンを購入しても、SIMロック解除が可能になる3カ月以上の間、端末は“塩漬け”状態となってしまう。ゆえにこれらのプログラムが、実質的にKDDIとソフトバンクユーザーしか恩恵が受けられないものとなっており、法改正で排除したはずの“4年縛り”の温存につながってしまうことを、総務省側は問題視している訳だ。
○不正転売を防ぐ措置だったが今後は不透明
ではそもそもなぜ、SIMロックは割賦払いの場合、100日間解除できないというルールが存在しているのだろうか。それを知るためには、なぜ携帯電話会社がSIMロックをかけるのかを知っておく必要があるだろう。
携帯電話会社は元々、携帯電話端末の代金を大幅に値引きして販売することで契約者を獲得し、その値引き分の料金を毎月の通信料金から回収するという手法を取ってきた。それゆえ回線を短期間で解約され、そのスマートフォンを他社の回線で使われてしまうと、値引き分の料金を回収できず携帯電話会社は損をこうむってしまう。そこで他社での利用ができないよう、端末にSIMロックをかけることで流出を防いでいた訳だ。
だが料金を支払い終わったにもかかわらず、SIMロックがかけられたままなのは市場競争上問題があるとして、総務省を中心にSIMロック解除に向けた動きが進められ、2015年にはSIMロック解除の義務化がなされることとなった。しかしそこで問題となったのが、大幅値引きでスマートフォンを購入したにもかかわらず、意図的に契約を踏み倒し、海外などに転売してしまう不正転売の問題である。
携帯電話会社は以前より不正転売の問題に悩まされていたことから、料金の支払いが確認できるまでSIMロックに応じるのは難しいとし、総務省での議論の結果、端末料金の支払いがなされたことが確認されるまではSIMロック解除ができないようルール作りがなされたのである。2015年の義務化当初はその期間が180日であったのだが、2017年に策定された「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」ではそれが100日とされ、なおかつ一括払いで端末を購入した場合は即日SIMロック解除ができるようにもなっている。
つまりSIMロック解除の100日ルールは、携帯電話会社が抱える不正転売の問題に配慮したものだった訳だが、その携帯電話会社側がこのルールを巧みに利用し、従来の商習慣を維持する姿勢を見せたことが総務省側の怒りを買っている訳だ。それゆえ総務省は今後、SIMロックに対して一層厳しい規制を打ち出してくる可能性も高く、10月以降も端末購入プログラムに関しては不透明な状況が続くといえそうだ。