一部のパブリッシャーにとって、Facebookは必ずペイできる場所ではなくなった。

まとめ記事サイトを手がけるランカー(Ranker)とライフスタイルサイトを手がけるトピックス(Topix)は、トラフィックアービトラージ戦略を採用することで、長いあいだ大きな利益を上げていた。Facebook広告を購入してトラフィックを獲得すれば、その広告コストを上回る利益を得られたからだ。そして、Facebookが2018年1月に実施したアルゴリズムの変更によって、ニュースフィードでパブリッシャーのコンテンツの優先順位が下げられてしまったあとも、この戦略がパブリッシャーを守ってくれると考えられていた。確かに、しばらくはそのとおりだった。「2018年の1月から6月までは、実に素晴らしい状況だった」と、トピックスのCEOであるクリス・トーレス氏は述べている。

しかし、2018年6月以降、状況は悪化していく。ランカーとトピックスの両社は、Facebookでアービトラージ戦略から得られる効果が小さくなっていることに気がついた。

ランカーは2018年、Facebookで4000万ドル(約43億円)をかけて広告コンテンツを宣伝する計画を立てていた。だが、実際にはその半分の金額しか使わなかったとCEOのクラーク・ベンソン氏は述べている。その理由は、2018年6月初め、ランカーが宣伝した投稿のコストが一夜にしておよそ30%も増えたことにある。

同じ頃、トピックスもFacebookの広告購入で似たような問題に見舞われていた。トレス氏によると、Facebookが以前ほど頻繁に広告を承認しなくなったため、それまでと同じ数の広告を配信することが難しくなったという。「個別に状況を確認しなければならないというプレッシャーが強くなった。そのため、うまくいったケースを見つけて支出を抑えることが、以前より困難になった」と、トレス氏は述べている。

うまくいかなくなった原因



ベンソン氏もトレス氏も、Facebookで自社の広告戦略がうまくいかなくなった原因をはっきりとは掴めなかった。だが、問題のある者がFacebook上でフェイクニュースを宣伝する広告を展開していた2016年の米大統領選挙を受けて、Facebookがプラットフォームの浄化を進めていることが、この問題に関係しているに違いないと考えていた。Facebookの広告透明性ツールの定義によれば、ランカーとトピックスが配信しているFacebook広告の一部は、社会問題、選挙、または政治に関する広告に分類されている。Facebookの広報担当者はこの件に関するコメントを拒否したが、質の低い広告を削減する取り組みについて説明した2018年10月のブログ投稿を見るよう促した。

ファーストメディア(First Media)のCEO、ガイ・オラニム氏によれば、Facebookのペイドメディアについて、同社は「まるで学術団体のように、掲載されている情報がきわめて正確であり、検証と事実確認が行われたものであることを確認することに大きな労力を払って」おり、「オーガニックよりもペイドメディアではその傾向がさらに強い」という。ファーストメディアは、2018年9月にレシピコンテンツ「ソー・ヤミー(So Yummy)」向けのサイトを立ち上げたあと、トラフィックを増やすためにFacebookで広告を配信し始めた。

ランカーとトピックスは、フェイクニュースサイトを運営しているマケドニアの若者たちとは違う。だが、両社が主に公開している記事は、まとめ記事やクイズなど、Facebookが一掃しようとしているクリック稼ぎやエンゲージメント稼ぎの記事によく似ている。さらに、この2社がFacebookからサイトにトラフィックを誘導する取り組みをもっぱら広告に依存している状況が、Facebookのアルゴリズムや広告レビュアーからは、自社の広告プラットフォームを悪用している徴候と見なされている可能性がある。トレス氏によれば、トピックスがFacebookから獲得しているトラフィックの「圧倒的多数」が広告からのものだという。「オーガニックリーチを最適化する取り組みに、それほど多くの時間をかけたことはない」とトレス氏は語った。

戦略調整で難曲をクリア



ランカーもトピックスも、トラフィックを購入するという自社の戦略に悪影響が出たことを快く思わなかったが、利益が出るようにFacebook広告の購入を管理することで、この難局を乗り切ることに成功している。トレス氏によれば、トピックスの売上高は2018年に前年比で50%近く増加したという。ただし、それがどの部門の売上高であるかは明らかにしていない。一方のランカーも利益を上げ続けており、2018年の売上高は2017年から増えている。だが、2019年にはFacebookの変更が原因で売上高は減る見込みだとベンソン氏は語った。紆余曲折を経ながら、両社はいまもFacebookでの戦略を調整しているのだ。

トピックスがFacebookで現在宣伝しているコンテンツは、「大量のコンテンツを掲載するためにスライドショー形式にするのではなく、従来のパブリッシャーにとてもよく似たデザインにしている」とトレス氏は話す。

一方のランカーは、Facebookでオーガニックリーチを増やすための取り組みに投資している。これまで、同社のオーディエンス開発チームは、半分が有料配信に専念し、残りの半分がオーガニック関連に集中していた。だがいまは、全員がオーガニックへの取り組みを最優先するようになり、ランカー氏によれば、Facebookからのオーガニックなトラフィックは、前年比でおよそ50%増えたそうだ。

リソース配分が成功のカギ



ランカーとトピックスはいまも、自社サイトにトラフィックを呼び込むためにFacebookで広告を配信している。だが、支払う額は減らした。トピックスのトレス氏は具体的な金額を明らかにしなかったが、「2017年にはFacebook広告に月平均100万〜300万ドル(約1億〜3億円)を費やしており、いまはその頃の上限に近い金額になっているが、2018年上半期に支払った金額ほど多くはない」と述べている。一方のランカーズは、2018年6月の変化が起こる前まで毎月数百万ドル単位の資金をFacebook広告に注ぎ込んでいたが、いまでは数万ドル強だとベンソン氏は語った。

サイトにトラフィックを誘導するためにFacebookで広告活動を行うという戦略は「依然として有効であり、それなりの利益をもたらしてくれる。だが、我々のスタッフでその仕事に専念しているのは、1人か2人しかいない。要はいかにリソースをシフトするかという話なのだ」と、ベンソン氏は語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)