月に80時間を超える残業をすると、心身の健康を著しく損ねる。この「80時間」は働きすぎによる健康障害と、労働災害認定の因果関係の判断となる目安の時間だ。キャリコネニュースのアンケートに寄せられた過労で心と体に支障をきたした人からのエピソードを紹介する。

技術職の中間管理職として働いていた40代女性は、月に200〜400時間の残業をしていた。しかもこの生活は何年にも及び、女性は「会社に住んでいるような状態だった」と当時を振り返る。

過呼吸で倒れても、上司からは「俺の管理能力を問われるから倒れるな!」と言われる始末。プロジェクト成功のプレッシャーを3年にわたってかけ続けられ、出社できなくなった。

休職したものの完治を待たずに無理に復職。しかし女性は解雇された。職場に対して「完全に使い捨てにされた」と嘆く。

「気休めのために飴やガムを買い込み食べまくったり、コーヒーをがぶ飲みしたり」

クリエイティブ職として働いていた50代男性は、月160〜180時間ほどの残業を3か月続けた。ある日、出勤前に体が動かなくなり病院を受診。医師に休養を勧められたが、締め切りを守るために断ると、

「これ以上働くと命の危険があります。出勤するというなら医者として病院からあなたを返すわけにいかない」

とドクターストップがかかった。男性は医師の目の前で職場に電話をさせられ、その後退職した。

無理をして働こうとうする人は少なくない。販売・サービス業で働く30代女性は、退勤時間は早くて22時で、終電間際まで働くことも少なくなかった。案件をひとりで多く受け持っており、上司に頼んでもその場しのぎの対応しかされず、

「とにかくやらねばと自分を追い詰めて、気休めのために飴やガムを買い込み食べまくったり、コーヒーをがぶ飲みしたり、エナジードリンクを飲んだりした」

と、疲労をごまかしながら働き続けた。

「脅迫・殴る蹴るは当たり前。働くことや人が怖くなった」

大手新聞社の販売店で働いていた30代男性は、月に4日しか休めなかった。ひどいときには休日は月1日というケースもあった。

1日の労働時間は16時間以上超えが当たり前で、 残業は月に150時間を超えた。残業代はもちろん出ない。勤務先に未払いの残業代を請求すると、脅迫されたという。

「都合が悪いと、脅迫や殴る蹴るは当たり前でした。そのせいで鬱病は更に悪化、睡眠障害・摂食障害も酷くなり、いつも『生きていても仕方ない。死んで楽になりたい』とばかり思っていました」

退職後は「メンタル不調は上向きになった」というが、「働くことや人が怖くなった」とトラウマを負ってしまった。過労死ラインを超えてしまうと、それ以前の自分に戻ることすら難しくなってしまうようだ。