25歳になったら賃貸に住むのをやめるべきだ
資産性からも、持ち家のほうが賃貸よりも合理性が高い。そのため、結婚、出産を待たずに、若手のうちに家を買うことが、予測不能な将来を安定したものにするのだ(写真:A_Team / PIXTA)
多くの人が家を購入する最大の理由は、「家賃がもったいない」と「持ち家は資産になるから」の2つに集約される。実際、この10年で持ち家派のほうが、資産的に有利であることが証明されているのだ。持ち家派と賃貸派の資産の差額は、平均で3400万円。当然、プラスなのは資産派だ。その理由は単純で、持ち家は値上がりしている一方、払った家賃はもう戻って来ないからだ。
もし物件が値下がりしても持ち家が賃貸よりお得な理由
10年経過したマンションの値上がり益は、平均で600万円。持ち家の平均購入価格6000万円の10%ほどだ。これに対して、同じマンションに賃貸で住んでいたら、家賃は「物件価格6000万円の4%=年間240万円」を10年払い続けることになるので、支払い総額は2400万円にもなる。
つまり、持ち家が+600万円、賃貸が-2400万円なので、その差はなんと3000万円。
これに加えて、住宅ローンを借りていると、その1%が現金還付されるため減税効果もある。これは40万円/年なので、10年間で400万円のキャッシュがもらえる。これを加えると、単純計算で3400万円の差になるのだ。これが持ち家と賃貸の、この10年間の収支になる。
仮に相場価格が値上がりしなくても、持ち家に軍配が上がる。物件の1年の平均下落率は2%で家賃の4%より低い。10年で20%下落は、家賃40%の半額で済む。こうなると、「家を買うのは結婚してから」という理由はなくなるのではないか。賃貸は損で持ち家は得だから、買うのである。
昨今、大企業を含む多くの会社で退職金が出にくくなり、ほとんどの企業で定年は60歳で、再雇用されても65歳までで年収は半減する。年金は65歳になったらもらえる(「68歳から受給」に改悪される可能性も)が、これからの世代は受給額が支払った総額を下回るので、大した金額にはならない。家賃が10万円なら、その時点で早くも預金の取り崩しが始まる。しかし、持ち家なら、管理費などでかかる費用が3万円程度なら、難なく支払うことができるはずだ。だから、住宅ローンは定年までに返済しなければならない。
定年までに35年の住宅ローンを返済するなら25歳、65歳までに返済するにしても30歳で住宅ローンを組まなければならない。しかし、若くしてローンを背負っても返済してしまえば、その後は少額の負担で済むのが持ち家のいいところだ。男性の平均寿命は82歳、女性の平均寿命は88歳なので、65歳の実質定年以降の人生は17〜23年もの長期に及ぶのだ。とても家賃は支払えないだろう。
「生涯独身率20%超」時代、親世代とは事情が違う
今は金利が低いので、年収の7〜11倍を借りることができる。たとえば大卒の月収33万円、年収400万円なら、2800万〜4400万円である。住宅ローンは就職して3カ月で、審査対象者になる。就職したら、早々に住宅ローンを借りられることは覚えておいたほうがいい。筆者の知り合いの息子さんは22歳で大手IT企業に就職し、3カ月でひとまず自宅マンションを買っている。
これまでは結婚して子どもが生まれ、第一子が小学校に入学する直前に持ち家を購入するケースが最も多かった。現在、平均初婚年齢は男性が31歳、女性が29.4歳、再婚を含めると、男性が33歳、女性が31歳と、30歳を超えている(2015年調査)。これに加えて、都市部の婚期は全国平均よりも1歳以上遅い。また、厚生労働省は2035年の生涯未婚率を男性が29.0%、女性が19.2%と予測している。都市部はこの数字よりもさらに高くなる。4人に1人が結婚しない時代になるのだ。
現在85歳の方の生涯未婚率は、男女単純平均3.6%でほぼ全員が結婚するのが当たり前の時代だった。これが現在65歳の方の生涯未婚率になると、やや悪化して9.2%になる。現在30代の親以前の世代とは、今は結婚の前提がまったく違うのだ。
結果、これからの住まいに関して、結婚(31歳)・出産(33歳)・小学校入学前(38歳)を待っていたら、住宅ローンは65歳までに完済できず、8年分の返済が残ることになる。住宅ローンの元利返済総額が5000万円なら、35年のうちの8年分は1143万円に及ぶ。
そもそも、「終の住処として家を購入する」にしても、定年までにローンを返済できない家を購入してはいけない。婚期が遅れるほど、3〜4人の家族全員を育むためのまともな家が購入できなくなってしまうからだ。
その解決策として、独身時代に購入して資産形成する道があることをぜひとも知ってほしい。
「なぜ、独身のうちに買わないのか?」という時代になる
私は25歳で住宅ローンを組むことをお勧めしている。そのため、この際、「結婚・出産などの世帯構成が確定してからマイホームを買う」という考え方はいったん捨てよう。結婚前に5〜10年間、1人で持ち家に住んで、結婚の際に住み替える。
しかし、家を購入した時点でいつ結婚するかはわからないし、一生独身でいるかもしれない。また、子どもの数は不確定な要因が多い。こうしたさまざまな不確定要素を考えるより、まずは自分と将来の家族の老後の心配をなくすことだ。老後の住処を確保し、その支払いは年金で済む金額に抑えられれば、一生住まいで苦労することはなくなる。もし、結婚して家族が増えたのであれば、その時点で住み替えればいい話で、自宅で資産形成できていれば、いつでもそれは可能である。
給料がなかなか上がらない時代、コツコツと貯金をするよりも、若いうちに物件を持つほうが資産形成のうえでよっぽど有利なのだ。
そのために最も大事なのは、自宅の「資産性」である。資産性とは、「いつでも売却でき、貸したら賃料でローン返済が賄える」ことを指す。
物件を購入する前に、情報を収集する必要がある。そこでお勧めしたいのが、筆者が運営に携わっている、すべてのマンションの評価、時価、資産性を数値化した「住まいサーフィン」だ。
自分の周りを見回してみよう。同世代にも単身でマンションを購入している人がいるはずだ。「なぜ買うのだろう?」と思うのは、もう時代遅れだ。「なぜ、独身のうちに家を買わないのか?」が主流になる日はそう遠くないと、私は思っている。
日本人は借金に消極的な人が多いが、今の住宅ローンはまだまだ借り得な状態にある。マイホームの住宅ローン金利は、ネット銀行なら0.5%を切る水準にある。さらに、住宅ローン控除というローン残高の1%を所得税還付する軽減税制が適用される。金利0.5%で1%の税還付をすると、0.5%のマイナス金利になる。住宅ローンを借りると、金利を払うどころか、お金がもらえるのだ。
話を簡素化するために購入価格=ローン借入額にすると、マンションの利回り4%(賃料を払うなら、物件価格の4%相当になるから)に0.5%のマイナス金利なので、マイホームは実質4.5%の利回り物件になるのだ。
これだけ金利が低いと、元本の返済は毎年2.7%ほど減っていく。マンションの値下がり率は年2%なので、10年経って売れれば、これらの差分である10年分7%のプラスが生まれることになる。これだけでも購入する十分な理由になる。
もし、物件価格が値上がりしないにしても、価格が下がらなければ、10年で27%の資産形成したことになる。4000万円で購入していれば、1000万円以上になっている。こうした含み益に関して自宅だけは3000万円まで無税となっている。不動産投資の場合、こうした値上がり益には20〜40%程の税率が課せられる。これだけ、日本は持ち家取得を促進している国なのだ。この制度を使わない手はない。
持ち家が将来を安泰にする「14の理由」とは?
日本の若者が直視しなければならない、住まいに関係する現在までの事象と、ほぼ確実な未来を挙げておこう。
・日本の持ち家率が非常に高いのは、持ち家促進税制で優遇しているからだ
・持ち家と賃貸では、超低金利と優遇税制で持ち家が圧倒的に有利である
・直近10年間の持ち家と賃貸の資産格差は3400万円に及ぶ
・都市圏の単身者の約半数が地方出身であり、実家が首都圏にない
・定年は60歳で、ほとんどの人に退職金は出ない
・定年後再雇用を希望すれば65歳が実質定年になるが、年収は約半分に下がる
・年金支給年齢は68歳が検討されており、金額も多くはない
・90歳までは生きる可能性が高い
・まともな賃貸に住み続ける財力・年収が老後にはない
・定収のない高齢者は、賃貸の入居審査で落ちることが多い
・実家に帰っても、居場所があるとは限らない
・実家は築年が耐用年数を超えていて、住むには状態が悪い
・社会人の間に培った友達は、働いてきたエリアに集中する
・老人ホームに入るには、かなりの現金が必要となる
こうなると、自然と持ち家取得を考えなければならなくなる。ならば早過ぎることはない。まずは持ち家取得と結婚は切り離そう。独身ほど、家を買って資産形成しておいたほうがいい。それは自分と将来の家族のためなのだ。