今、高知県にある個性的な水族館が、じわじわと話題になっている。高知市の「桂浜水族館」と、室戸市の「むろと廃校水族館」だ。いずれも個性的なアピールや運営で来館者が増え続け、地域に人を呼び込む目玉となりつつある。

そこでJタウンネットが、この2館に話を聞いてみると、それぞれの館長さんからお話を聞くことができた。

マスコットは「食欲旺盛な天然物Fカップ」

桂浜水族館が注目を浴びるきっかけになったのは、マスコットキャラクターの「おとどちゃん」と、スタッフの身体を張ったツイートだ。


2018年はゆるキャラグランプリにもエントリー(提供:桂浜水族館

四国で唯一、同館で飼育されているトドをモチーフにした、「食欲旺盛な天然物Fカップ」という、何ともユーモラスでひょうひょうとしたおとどちゃん。このキャラクターを前面に出した、公式アカウントの水族館らしからぬ本音満載のツイートがネットユーザーを中心に好意的に受け止められるようになっていった。

もとは1931年開業の老舗の水族館。それがなぜこのような強烈な個性を発揮するようになったのか。Jタウンネットの取材に、館長の秋澤志名さん自ら「マイナスをプラスに変えようと、『なんか変わるぞ』をキーワードに頑張ってきました」と答えてくれた。

「4年前にスタッフが大勢退職してしまった時、『このままではイカン』と思い、インターネットを活用して知名度を広げ、ほかではできないことをしようとしていました。生き物との距離が近いのが当館のみどころで、それに加えて生き物を飼っている人にスポットを当てられるよう、スタッフの仕事ぶりや水族館の人間模様を伝えています」

実際、気さくなスタッフの応対や動物とのふれあいが好評で、さらにはおとどちゃん目当てでお土産持参で訪れる観光客もいるという。

おとどちゃんやスタッフの奇抜なアピールばかり注目されがちだが、約250種7000点におよぶ生き物を飼育し、アシカやペンギン、四国唯一のトドなど顔ぶれも多彩。生き物の生態を楽しみながら学べるという点でも、開館以来88年の歴史がしっかり受け継がれているのだろう。

学校のプールにウミガメが泳ぐ

一方、室戸市のむろと廃校水族館は、老舗の桂浜水族館とは対照的に、2018年4月に開館したばかり。


外観はほぼ学校校舎な「むろと廃校水族館」(同館公式ツイッターより引用)

廃校になった小学校の校舎をほぼそのままに、プールにはウミガメやサメが泳ぎ、教室に置かれた水槽にはサバ、アジ、ウツボといった地元で獲れた、食卓でも身近な生き物が泳いでいる。この学校そのもののたたずまいに懐かしさを覚える人が全国から続々訪れているのだ。


プールがそのまま水槽に(同館公式ツイッターより引用)


理科室には骨格標本が(同館公式ツイッターより引用)


9月2日までは「夜間学校」と題して午後10時まで開館(同館公式ツイッターより引用)

こちらでも館長の若月元樹さん自ら、Jタウンネットの取材に答えてくれた。取材日の18年8月30日に来館者通算7万人を突破したところだという若月館長は、「もともとはもっと水族館らしさを出す計画だったのですが、予算不足で校舎をそのまま使うことになりました。ただ、このコンクリートづくりの校舎がかえって幅広い世代に懐かしく感じられたようで、予想以上に多くの人が訪れています」と驚きと喜びを語ってくれた。

理科室や図書室はそのまま残して生き物について学べる空間にしたりと、至るところに学校らしさが残ったことが観光客にも好評。周辺の観光施設やお店への来客も増えているとのことで、地域の観光・経済に与える効果も上々の様子だ。若月館長曰く、「廃校活用のモデルとして、ほかの地域から視察に来る方もいるほどです」とのこと。地域おこしのモデルにもなりつつある。

最後に、同じ県内にある両館にそれぞれの印象を尋ねたところ、桂浜水族館の秋澤館長からは「素朴な水族館として共に地域を盛り上げていきたいですね」、むろと廃校水族館の若月館長は「うちにとっては大先輩のような存在ですが、最近の盛り上がりは面白く、『これからどうなっていくんだろう?』と興味津々で見ています」というコメントをいただいた。