「小さなディスプレイがあるアマゾン「Echo Spot」は、ベッドサイドに最適だった:『WIRED』US版レヴュー」の写真・リンク付きの記事はこちら

先日、サンディエゴのダウンタウンからすぐのところにある、何の変哲もないシェラトンホテルで2日間を過ごした。そこで宿をともにしたのは、アマゾンの新製品である「Echo Spot」に身を包んだ音声アシスタントの「Alexa」(アレクサ)だった。

Spotはアマゾンがリリースした最新のEchoデヴァイスで、自宅でAlexaを利用する新たな方法を提案している[編註:日本では未発売]。ディスプレイとカメラを備えたEchoデヴァイスとしては、「Echo Show」に続く2番目の製品だ[編註:こちらも日本未発売]。サイズがとても小さく、デザインが大幅に改善されたことを除けば、他のEchoデヴァイスとほとんど変わらない。

アマゾンはAlexaで実に興味深い取り組みを続けている。強みと弱点が微妙に異なる複数の形状、サイズ、価格のデヴァイスをリリースしているのだ。スマートスピーカーとヴァーチャルアシスタントが登場してからまだ日が浅いいま、アマゾンは何がうまくいくのかを見つけ出そうとしている。

Spotの狙いは、ベッドサイドやデスクの上に置いておけるEchoをつくることだ。価格は130ドル(約14,000円)と、Alexa対応デヴァイスのなかでは最も高価な部類に入る。

メイキングされたばかりのベッドで横になり、Spotに話しかけながら長い時間を過ごしてみると、Spotの出来栄えに感心した。さまざまな点で、SpotはほかのAlexa対応デヴァイスと遜色ない。AlexaはどこにいてもAlexaだからだ。できるだろうと思ったことは、すべてやってくれる。

ただし、解決が難しそうな問題もある。カメラとマイクが常にオンになっているデヴァイスをベッドの横に置いたまま、十分にくつろぐことはできるだろうか。眠っている間に監視されることはないと言い切れるだろうか。

あるいは、寝ている最中にSpotをうっかりオンにしてしまい、起こされてしまうことはないだろうか。そんなことは起こらないと思っているが、読者の方々が自分で判断するべきだろう。

魅力的な外観

Spotは、見た目が素晴らしいと心の底から言える初めてのEchoデヴァイスだ。見た目の向上は難しい話ではないと思うが、これまでのEchoデヴァイスはデザインがまったく考慮されていなかったとしか思えない。Spotは、ソフトボールほどの大きさがある球形の一部が、40度の角度で切り落とされたようなデザインになっている。

斜めになった前面部分には、明るくて見やすい2.5インチの円形のタッチスクリーンが埋め込まれ、周りは太くて黒いベゼルで覆われている。音量ボタンとミュートボタンは本体の上部にある。ものすごく美しいというわけではないが、よく考えてつくられたことがわかる、親しみがもてるデザインだ。

ディスプレイを備えたEchoで素晴らしい点のひとつは、設定がとても簡単なことだ。実際、使い始めて5分でSpotを動作させることができた。必要な作業は、小さなオンスクリーンキーボードを叩いて、アマゾンのログイン情報とシェラトンホテルのWi-Fiのパスワードを入力することだけだった(設定に役立つ2つのヒント:「Alexa」ではなく「Computer」(コンピューター)と話しかけること。また、サウンドをオンにして、デヴァイスが自分の話を聞いていることがわかるようにしておこう)。

動作を始めたSpotは、ほかのAlexa対応デヴァイスと同じように機能する。利用できるスキルも、答えてくれる質問も、教えてくれる情報も同じだ。たいていの場合、答えは音声で教えてくれるが、関連する情報をディスプレイに映し出すこともできる。また、ほかのデヴァイス同様、話しかけた内容をよく理解してくれた。

しかも浴室から壁越しに話しかけても、その内容をわかってくれたのだ(「音楽をかけて!」と頼んでみた)。音質も十分で、「Echo Dot」をはるかに上回り、標準的なEchoと同程度だった。さらに音質を高めたいなら、3.5mmのステレオプラグやBluetoothを使って、ほかのスピーカーを接続したりもできる。

また、Spotのアラームクロックは驚くほど素晴らしい。目覚まし音か音楽で目を覚ましたら、「Alexa、おはよう」と話しかけるだけで、天気予報やその日のニュースを伝えてくれるのだ。おかげで、Spotは1日の始まりに欠かせない存在となった。

ディスプレイがあるという利便性

Spotはディスプレイを備えているため、レシピを表示したり、映画の予告編を再生したりするなど、Showでできることはすべて実行できる。「フラッシュブリーフィング」スキル(最新記事を読み上げてくれる機能)を使うときに動画を表示することもできるため、好んで利用している(ただし、アマゾンとグーグルが対立しているため、当然ながらYouTubeは再生できない)。すべての機能が目的通りに動作する。

ただし、Showが動画を見るためのデヴァイスと言えるのに対し、Spotは動画を見られることが必ずしも長所になっていない。何を見るにも顔を近づけなければならないうえ、ディスプレイが丸いからだ。

動画を表示するなら、郵便ポストの投函口のような小さい長方形で再生するか、動画の四隅が切れることを承知のうえでディスプレイ全体に動画を拡大するしかない。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の予告編を見ながら上映時間を確認する程度ならOKだが、長編動画には向いていない。

とはいえ全体的に見れば、ディスプレイがAlexaのユーザー体験を向上させていることがわかる。タイマーやアラームを設定したり、天候を尋ねたりするときでさえ、答えを聞くより見るほうがわかりやすい。それに、Spotの設定をスマートフォンで変更するより、Spot自体で変更する方が簡単だ。

また、ディスプレイをナイトモードにできる機能も優れもので、ディスプレイを完全にオフにすることもできる。実際のところ、ディスプレイがあることのマイナス面は見当たらない。Spotのような洗練されたデザインのデヴァイスであればなおさらだ。

どうしても気になるカメラの存在

一方、カメラの存在によって不安な気持ちにさせられる。カメラがある理由は、「Drop In」機能を使って、ほかのEchoユーザーとヴィデオチャットをしたり、防犯カメラ代わりに利用したりするためだ。

しかし個人的には、マイクが常に動作しているデヴァイスが、寝ている自分の顔から20cmほどの距離にあっても気にならないが、カメラ付きのデヴァイスがあると不安を感じる。幸いなことに、「Alexa、カメラをオフにして」と話しかければカメラ機能はオフにされるが、レンズはこちらを向いたままである。テープでレンズを隠すこともできるが、自分としてはカメラがないSpotがあれば十分だ。

SpotをほかのEchoデヴァイスと比べてどう位置づけるかは、スピーカーとカメラをどの程度必要とするかという問題に行き着くだろう。幸いなことに、正しい答えは存在しない。

50ドルのEcho Dot(日本価格は5,980円)も、Echo SpotやほかのAlexa対応デヴァイスとまったく同じように、音楽を流したり、家電製品をコントロールしたり、クイズを楽しんだりできる。ナイトテーブルにはSpotが最もマッチするというだけのことだ。

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