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●人間の健康からペットの健康ビジネスへ

ICTやAI、ロボットが各産業に採り入れられ、ビジネスの在り方が急速に変化しようとしている。数十年後には姿を消す職業が取りざたされるなど、各市場の危機感は強い。そんななか、堅調に推移しているのがペットビジネスだ。

矢野経済研究所の調べによると、2015年度のペット関連の総市場規模は1兆4,720億円で、前年度比101.5%だったという。2016年度予測も1兆4,889億円と推計され、前年度比101.1%になるとの見込みだ。約1%ずつとはいえ、毎年、着実に市場規模を伸ばしている。ちなみに出版の市場規模が約1兆6,000〜7,000億円。このままいけば、斜陽産業の出版市場をペットビジネス市場が追い抜くのは、そう遠くないかもしれない。

○高まるペットの健康志向

そんなペットビジネスだが、ここ数年、ある傾向が強まっている。それは「ペットの健康志向」だ。

ひとくちにペットとはいっても、イヌやネコ、鳥類、齧歯類、は虫類などさまざまだが、ここでは、もっともポピュラーなイヌでみてみよう。

イヌの場合、数十年前に人気だった中型・大型犬の飼い主は減り、小型犬にシフトしている。中型・大型犬を飼うには“庭”が必要となるので、都市部の住宅事情を考えれば、室内で飼える小型犬に人気が集まるのは自然な流れだ。だが、室内で飼うとなると、どうしても屋外にペットを連れて行く意識が薄まってしまう。結果、ペットの肥満といった問題につながっていく。

そうしたペットの健康について、ビジネス的に“勝機アリ”と捉えているのがFanimal(以下、ファニマル)という企業だ。

このファニマルを率いているのが、代表取締役会長 谷田大輔氏。名前をみてピンとくる方もいらっしゃるだろうが、体重計や体脂肪計のトップ企業、タニタを長年にわたり牽引してきた人物だ。

その谷田氏がペットの健康について考える企業の会長に就任した。“人間の健康”に長年取り組んできた経験を、今度はペットの健康に生かすというワケだ。

●ペットの健康を可視化するアプリ

同社は獣医師やトレーナーなどの動物の専門家による記事や、飼い主のリアルな体験記事を配信するメディア運営、“厳選したペットフード”をECで飼い主に提供するというのがおもなビジネスモデルだ。だが、単にECによるペットフード販売というだけではない。

その表れともいえるのが、「ペットの体重カレンダー〜Fanimalアプリ」の提供だ。ペットの体重管理は忘れがちになるが、アプリをスマホにインストールしていれば意識しやすくなる。さらに、ペットの体型を5段階で数値化したBCS(ボディコンディションスコア)も記録することで、ペットの状態を確認できる。また、散歩した距離なども計測できるなど、ペットの健康への意識を高める工夫が盛り込まれている。つまり、わかりにくいペットの健康を“可視化”するというワケだ。

「散歩の距離が計測できることは、ペットだけではなく飼い主の健康にも役立つと思います」と、ファニマル 代表取締役 漆原秀一氏は話す。また、ペットといることで心が安らぎ、心的ストレスによる飼い主の健康不安からも遠ざけられるともいう。

○ペットの健康を調査・研究するシンクタンク設立

このほか、「Fanimal総研」を運営していることも特徴だ。これは、ペットの健康にまつわる調査・研究機関として、ファニマルが設立したもの。ペットの健康を前面に押し出しているが、飼い主のライフスタイルにもスポットライトを当てているのが興味深い。

たとえば「犬を飼いはじめてから、生活リズムにどのような変化がありましたか?」といった設問を用意し、飼い主に答えてもらう。この設問では「早寝早起きになった」と答えた飼い主が多く、「あてはまる」25%、「ややあてはまる」34.3%という結果になった。さらに、「スマホでゲームやSNSを利用する時間が減った」「犬を飼い始めてから、自炊の頻度が増えた」という傾向がみられた。ファニマルによると、散歩やペットとふれあう時間を増やすこと、外食ではなくペットと一緒にご飯を食べたいという意識の表れだという。

このほかにも「犬を通して新しい友達ができた」「初対面の人と気軽に話せるようになった」といった、飼い主のコミュニケーションについても調査している。つまり、単にペットの健康だけではなく、飼い主も含めたライフスタイル全体の調査機関として、機能しているといってよい。

谷田会長は、「Fanimalは、『Animal』に『Family』『Fun』『Food』『Fitness』といった単語の『F』を掛け合わせたものです」と話す。これらのキーワードをみると、単にペットの健康を推進するのではなく、飼い主も含めた“身体の健康”、そして“心の健康”をサポートするのがねらいだということが伝わってくる。