ヨーロッパのシーズンも終盤に差し掛かり、日本人選手の移籍話も浮かんでは消え、消えては浮かんでいます。ミランとの契約が夏で終わる本田圭佑にしても、最近再び出場機会を得ている長友佑都にしても、日本だけではなくイタリアの注目も集めているようです。

移籍には2種類あります。一つは実力を認められて、よりいい条件で声をかけられるパターン。もう一つはクラブで評価されず、実力を発揮できる場所へと移るパターンです。これまで本田も長友も、常に最初の、右肩上がりのパターンでチームを変わってきました。もしかすると、今回は初めて出場機会を求めて別のチームへと出て行くことになるかもしれません。

ただ、ヨーロッパ組の移籍について考えるとき、忘れてはならないことが3つあると思います。

まず、クラブにとって「移籍」は「ビジネス」であるということ。日本よりもはるかに損得の考え方が強く、単に戦力を考えてだけの選手の移動ではないのです。そのため外部からはわかりにくいことも起きます。そんな激流の中で選手は動かなければなりません。

次に、誰がその選手を欲しているかという点です。移籍先が選手のプレースタイルと合っていたり、チームカラーが日本人選手向きだったとしても、監督が選手獲得を望んでいない限り、そのチームには行かないほうがいいのです。もっとも、移籍後すぐに監督が代わることもよくある話。そこは移籍前の情報収集に努めるしかありません。

となると、一見不本意な移籍に見えても、その後のプレーヤー人生を考えると、結果的にはよかったりすることもあるのです。なので、移籍しそうになっている、あるいは移籍されそうになっているという報道を、僕はネガティブに考えなくてもいいと思います。

そして最後に、本田も長友も、これまで「放出の危機」は何度もあったことを忘れてはいけません。しかし、その中をこれまで何度も耐え抜いてきました。しかも日本よりはるかに厳しいイタリアのマスコミを相手に、ずっと黙らせてきたのです。もしここで移籍することになっても、これまで見せてきた精神的なタフネスは失われることがありません。そしてそんなメンタリティは、日本代表に生かされてきていると思います。

僕は少しでも早く彼らがプレーしているところを見たいと思っています。そしてどこに行ったとしても、彼らならやってくれると信じています。