「べっぴんさん」84話。思春期の娘・さくらの話になっちゃうの? どうなの?

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第15週「さくら」第84回 1月13日(金)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


「突き進む先に何があるのかを知りたいがために人は進むのです」(語り/菅野美穂)

84話はこんな話


さくら(井頭愛海)は嘘をついておしゃれして、三宮のナイトクラブ青い月へ行く。健太郎(古川雄輝)は心配であとをつけていく。

さくらがべっぴんさん


82回の「おはよう」とすみれと挨拶を交わす場面に続き、84回のお布団の中のさくらも、健太郎が見たら、ドキドキしちゃうに違いない。
なんといっても、山本五月(久保田紗友)につきあってもらって購入した服に合わせてヘアメイクもしてもらった姿は、これぞ「べっぴんさん」。でも、ここで誰も「べっぴんさんや」と言わないところに、このドラマの「べっぴんさん」は単に美人さんということではないという揺るがない信念を感じて胸が熱くなる。

先に進むさくら、追う健太郎


さくら、無意識に二郎(林遣都)に惹かれて、体が動いてしまう。それを助ける五月。家を出て彼氏と同棲している、同世代なのにさくらとは全然違う生き方をしている人がいることを知って、飲むコーヒーは苦い。
大人の味、「苦っ」て顔だよね、街場の味は「まずっ」じゃないよね。コーヒーを受け入れられないことがバレないようにそっと戻す表情が微笑ましい。
これを見ていて思いだしたのは、母・すみれ(芳根京子)がかつて、禁止されていた街場へ果敢に出かけ、あさだ靴店をのぞいたこと(3話)。娘さくらは知らず知らずに母の行動をなぞっている。
違うのは幼馴染の男の子が冒険を手伝ってくれないこと。健太郎は、すみれの行動を「盛り場にいくもんやないで」と咎める。古川雄輝の、生真面目で潔癖で、世間に対して未だ心を閉ざし自分だけの世界にいる蒼い表情の伝達力は100点満点。少女を静かに追いかける姿はカオナシみたい。

その頃、すみれは


完全に視点がすみれの娘・さくらに変わってしまった感じで、やや戸惑うのだけれど、そのうちすみれ視点に戻って思春期のさくらに困惑するエピソードになっていくのだろうか。そもそも、語り(亡くなったはな)の俯瞰した視点で描かれているともいえるし、とりあえず視点に関しての考察は様子見したい。
主人公であるはずのすみれは、10年めにしていよいよ身内以外の社員を入れることにして、応募数は予想以上の53人だった。そのひとの感性を知りたくて、面接の際、動物の絵を描いてもらうことにする。実際、絵を描いている表情に興味を感じるひとも表れた。なかなかいいアイデア。

きょうの武ちゃん


部長に昇進した武ちゃん(中島広稀)が、いまだ明美(谷村美月)を想っているか気になるが、84回ではユーモアを振りまく役割を果たしていた。
まず、会議で意見を求められ、
「わしかい」と焦りつつ「賛成です」とすかさず応える。男会のときといい、このひと、意外と長いものに巻かれるタイプというか空気を読むのが敏い。それがよくわかるエピソードがこれ。

すみれ「なぜキアリスで働きたいと思ったんですか」
武ちゃん「下働きの・・・」
すみれ「これ聞いたほうがいいよねえ」
武ちゃん「そうですねえ」

自分に聞かれたと思って振り返ろうとしたら違ったことがわかった瞬間の切り返しの速いこと速いこと。でも恋の切り返しはきっと速くない、と思いたい。
(木俣冬)