学生の窓口編集部

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切ない片思い、不意打ちのキス……そんなドキドキしてしまう場面って、実際の恋愛ではなかなか味わえないですよね。需要の多いベタなシチュエーションこそ、漫画の世界でじっくり堪能してドキドキしたいもの。今回はよくあるベタな展開だなと思いつつ、つい読み込んでしまう抗えない魅力を持った少女漫画をご紹介します。

■【アオハライド】咲坂伊緒

中学時代、外見も整っていることから女子力を妬まれた経験を持つ主人公の吉岡双葉。高校では女子の反感を買うまいと、本来の自分を隠して大げさにガサツに振る舞っています。そんな双葉の前に現れたのが、中学1年の時に片思いをしていたけれど引っ越していってしまった田中洸(たなかこう)によく似た男の子。両親の離婚により馬渕と名字を改めた洸は、中学時代とは違ってクールで意地悪になっていました。ギャップに戸惑う双葉でしたが、無理している今の自分に変わるきっかけをくれた洸に改めて惹かれていきます。洸と双葉の苦しい恋愛や、女同士のしがらみなどの暗い部分を扱った、シリアス寄りのラブストーリーです。

幼い頃に離ればなれになった好きな男の子との再会愛。洸に後悔している過去があるところもベタな展開ですよね。高校に入ってもお互いを意識するのにタイミングがずれてしまったり、友だちが洸を好きになってしまったりとかなりすれ違います。王道のもどかしさがこれでもかと詰まっている作品です。絵柄は爽やかで女の子も男の子も好感が持てます。多数の支持を受けて、2014年に本田翼と東出昌大主演で映画化されました。やはり王道ラブストーリーは強いですね。

作者:咲坂伊緒
出版社:集英社
掲載誌:別冊マーガレット
レーベル:マーガレットコミックス
発表号:2011年2月号-2015年3月号
巻数:全13巻

■【私がモテてどうすんだ】ぢゅん子

芹沼花依(せりぬまかえ)は、だいぶぽっちゃり体型で気の優しい女子高生です。生粋の腐女子である花依の趣味は、学校にいる見栄えのいい男子同志の絡みを見て妄想カップリングを楽しむこと。ある日お気に入りのアニメを見ていると、大好きなキャラクターのシオンが死んでしまい、そのショックから1週間引きこもったせいで体重が激減してしまいます。久々に学校にやってきた花依の姿は、誰も彼女であると判別できないほどの美少女へと変貌していたのです。その花依に、今まで妄想していたイケメン男子たちが次々と恋してしまいます。イケメンたちにモテるのはうれしいけれど、自分は変えられないと腐女子な自分をカミングアウトするも、余計にみんなに好かれてしまいます。

メガネを取ったら美少女の変形版、痩せたら美少女バージョンです。絵もその様変わりっぷりが凄まじい。おそらくですが、上手に10kg痩せたら結構かわいくなる女性は実際に多いと思います。しかし体重を落とすのは生半可な根性ではできませんから、こうしたあり得そうなシチュエーションの少女漫画を読んで気力をチャージするとダイエットもやる気がでるかも……?

作者:ぢゅん子
出版社:講談社
掲載誌:別冊フレンド
発表号:2013年5月号-連載中
巻数:既刊7巻

■【きょうは会社休みます。】藤村真理

青石花笑(あおいしはなえ)は33歳、独身、彼氏なしの処女です。毎日休まず行く会社にはいつも1番乗り。恋愛観をこじらせて、理想の男性に対する条件がどんどん高くなってしまって、身動きがとれないでいます。ある朝、会社ではもくもくと仕事をする真面目な印象のアルバイト・田之倉悠斗(たのくらゆうと)が電話で女の子に対して冷たく対応しているのを聞いてしまいます。信用できないという印象を持つ花笑でしたが、その晩の会社の飲み会のあと、成り行きで田之倉と改めてお酒を飲むことになってしまいました。次の朝起きるとそこはホテルで、隣には裸で眠る田之倉の姿。こうして花笑の初めての恋が始まりました。

目覚めたら隣に裸のイケメン。飲んだ勢いで一夜を過ごしてしまうところから始まる王道恋愛ストーリーです。それまでお互い1ミリも意識していない間柄だったのに、ひと晩にして大人の関係になってしまうという、なんの苦労もないステキな展開です。ステキなイケメンが会社にいる女性なら、1度は想像したことがあるのではないでしょうか。花笑は田之倉とひとまわり離れているためにこれから散々気を揉むのですが、二人の恋にひたすらニヤニヤできる作品です。

作者:藤村真理
出版社:集英社
掲載誌:Cocohara
発表号:2012年1月号-連載中
巻数:全8巻

■【海月姫】東村アキコ

オタク女子たちが集まる天水館に住んでいる主人公・倉下海月はクラゲが大好きです。その昔、亡くなった母が連れていってくれた水族館でヒラヒラのクラゲを見ながら、いつかこんなウエディングドレスを作ってあげると言ってもらった思い出を大切にしていました。しかしオタクの海月は男とおしゃれが大の苦手。メイクすらしたことがありません。そこに突然現れた女装おしゃれ男子の鯉渕蔵之介によって、ヘア、メイク、服までトータルコーディネートされてみれば、蔵之介の兄に一目惚れされるほどの清楚な美少女に変身してしまったのです。

メイクしたら地味子が美少女にというのは、たいへん夢のある設定です。海月は蔵之介にメイクをしてもらうと美人になって、男性との会話もスムーズにできるようになりますが、メイクを落としてメガネをかけた途端にいつものボソボソしゃべるオタク女子に戻ってしまいます。しかし美人のときに恋して揺れ動いた心が海月を内面から女らしく変身させていくのです。海月が本当の意味で変身できる日が待ち遠しくなります。

作者:東村アキ
出版社:講談社
掲載誌:Kiss
発表号:2008年21月号-連載中
巻数:全15巻

■【ピーチガール】上田美和

安達ももは色素の抜けた茶髪に黒く焼けた肌をしていて、一見ギャルのように見える容貌をしています。背が高いこともあって相手に対し強そうな印象を与えることがコンプレックスで、日焼け止めの塗り直しに余念のない女子高生。肌の色が片思いしている東寺ヶ森一矢(とーじ)よりも白くなったら告白しようと思っている、実はけなげな女の子です。とーじと付き合うことになりますが、小柄で色白の小悪魔・柏木さえに邪魔されて別れるハメに。やがてももは何かと明るく励ましてくれていた岡安浬(カイリ)と付き合い出します。

真っ直ぐな気性の主人公が、親友ヅラして実は腹黒い女子に気づかず、結局ハメられて彼氏とうまくいかなくなる展開です。もうこちらとしては、さえが危険人物だと分かりきっていますから、ももの鈍感! と怒りたくなります。しかし、さえの腹黒っぷりはかつて類をみないものでした。仮にも女子高生でありながら大人を騙し、同級生を脅し、とことんまで追い詰めようとする執念には肝が冷える思いをしました。ももが挽回していくころになると、こちらもだんだん興奮してきます。悪役をやっつけてスッキリできる勧善懲悪ネタもふんだんに取り入れた良作です。

作者:上田美和
出版社:講談社
掲載誌:別冊フレンド
レーベル:講談社コミックスフレンドB
発表号:1997年10月号-2004年1月号
巻数:全18巻

■【ホタルノヒカリ】ひうらさとる

恋にもおしゃれにも興味はなく、家ではちょんまげにジャージ、手にはマンガ、ビール、スルメ。それが至福の時間というのが干物女の特徴です。まんま干物女な雨宮蛍は、居酒屋で知り合ったおっちゃんに借りた一軒家でいつものように寝転がっていました。そこに乗り込んできたのは、蛍の上司である高野誠一だったのです。実はおっちゃんの息子であった高野部長と蛍は仕方なく同居するハメに。几帳面な部長に蛍はいつも怒られてばかりだけど、きちんとした生活をするのもなんだか心地よく感じられるようになっていきます。

干物女の生態を明らかにし、世の中の女性を震撼させた雨宮蛍の姿は実に新鮮だったと思います。しかし、何とも思っていなかったイケメン上司とまさかの同居生活がスタート。キャラ設定を変えて何度も語り尽くされているのがこの「イケメンとまさかの同居」設定ですよね。恋愛ハプニングが起きやすい「イケメンと同居」設定は、この後も夢見る乙女たちに末永く愛されていくことでしょう。

作者:ひうらさとる
出版社:講談社
掲載誌:Kiss
発表号:2004年-2009年
巻数:全15巻

■【君に届け】椎名軽穂

その不気味な笑顔、暗い雰囲気と髪型から人に遠ざけられてきた主人公の黒沼爽子。強い霊感があると根も葉もない噂が流れ、高校生になっても友だち1人できないでいました。そんな爽子に初めて笑顔でお礼を言ってくれた、爽やかな男の子の名前は風早翔太。明るくてクラスの誰からも好かれる人気者です。みんなが怯えて話しかけない爽子にも、分け隔てない態度で接してくれる優しい男の子。風早は早い段階で爽子を恋愛対象として見ているのですが、恋愛どころか普通の人付き合いからつまずいている爽子にとって、風早は尊敬できる人物というくくりに入っています。

地味な女子がクラスで人気者の明るい男子に構われてクラスメートとの誤解が解けていき、みんなと仲良くなっていくパターンです。こういうシチュエーションでのクラスメートは大概ちょろいです。2010年に多部未華子、三浦春馬主演で映画化されていますね。この作品の場合、爽子の霊感キャラが王道ネタの面白さを倍増する要因になっています。ここまで勘違いされて避けられる女子はなかなかいないでしょう。対比するように爽やか100%の風早の爽子への純粋な恋心が、かわいい男子に想いを寄せられたい女子の心を存分にくすぐってくれます。

作者:椎名軽穂
出版社:集英社
掲載誌:別冊マーガレット
レーベル:マーガレットコミックス
発表号:2005年9月号-掲載中
巻数:全24巻

■【春待つ僕ら】アナシン

人見知りの春野美月は間違えて告白されそうになったことをキッカケにして、バスケ部の面々と知り合いになります。同じクラスでいつも眠そうな浅倉永久、クラスは違うが同学年の宮本瑠衣、2年の多田竜二と若宮恭介の4人です。この4人はそれぞれタイプの異なるイケメンで、幼い頃からミニバスを一緒にやってきた幼馴染みでもあります。バスケ部には彼ら目当ての女子が押しかけるほどの人気。美月はバイト先に客としてやってくる彼らと話をするようになり親交を深めていきます。やがて、いつもボーっとしているのに、実は親しみやすい浅倉永久のことが気になりだすのでした。

幼い頃から共に育ってきた美形男子4人組。新手のF4でしょうか。まったく普通、それどころか人見知りというハンデを背負った地味な女子高生に、降ってわいたようなイケメンパラダイス。逆ハーレム展開も王道シチュエーションのひとつですね。かっこいい男子にちやほや構われる毎日を送りたいというのは女子界における普遍的な願望なのでしょう。絵柄は線がとてもキレイで安定しています。男の子たちもそれぞれいい表情を見せてくれて、イケメンと言われて納得できます。美月の働くカフェや、私服、小物に至るまで全体的に洗練された雰囲気の作品です。

作者:あなしん
出版社:講談社
掲載誌:デザート
発表号:2014年-連載中
巻数:既刊3巻

■【天使なんかじゃない】矢沢あい

私立聖学園という1年生だけの新設校に入学した冴島翠。工藤静香やドリカムのものまねが得意な明るい人気者です。そんな翠は高校生になって恋に堕ちます。相手は今どき珍しいリーゼントヘアの須藤晃。なんとか近づきたいと思っていたけれど、きっかけが掴めないまま過ごしていると、なんと晃を会長にした生徒会の副会長になるというラッキーに恵まれます。生徒会の仲間と絆を深める中、晃と翠はお互いを強く意識し合うようになっていくのでした。

翠はなぜ晃が気になっていたかというと、雨の降りしきる中、不良のような外見のくせに子猫を心配するように傘を差しかける姿を見かけてしまったから。不良と子猫という最強のベタアイテム。そして自分が副会長をする生徒会の会長が晃になって1年をそばで過ごすことになるという、2重のベタ。翠は驚いていましたが、こちらは当然の成り行きだと思って読んでいるので動じることはありません。その後も、女の名前が入ったプレゼントを晃が持っているのを見ちゃったけど、誤解だった……などとベタな恋愛シチュエーションが満載。しかし、ストーリー全体はドラマチックで引き込まれるような魅力があります。セリフも名言が多く、マミリンと翠の友情は少女漫画ではなかなかお目にかかれない美しさです。

作者:矢沢あい
出版社:集英社
掲載誌:りぼん
レーベル:リボンマスコットコミックス
発表号:1991年9月号-1994年11月号
巻数:全8巻(単行本)、全4巻(完全版コミックス)全6巻、(文庫本)

■第1位:【イタズラなkiss】多田かおる

成績不良、ドジでおっちょこちょいな主人公・相原琴子が熱烈に片思いしているのは、学年一の成績を誇るイケメンの入江直樹。琴子に告白されますが、公衆の面前にもかかわらずこっぴどく振ってしまいます。一度は諦めようとする琴子でしたが、自宅が火事で全焼したために、父親の親友である入江家に居候することになります。はじめは琴子をうっとおしがっていた入江ですが、琴子の一生懸命さに心が動かされていきます。やがて琴子が自分以外の方を向くとイライラする自分に気づく入江。琴子は入江の気持ちの変化には気づきませんが、一途に入江を想い続けます。

入江が琴子にやたらと冷たいのが楽しいです。クールで意地悪な男の子が、ドジで一生懸命な女の子にほだされていく展開を扱った中でも代表作といえます。主人公の琴子自体が、ドジでおっちょこちょいで成績も悪いというベタな存在で、同居設定もベタ中のベタシチュエーションです。にもかかわらず多くの人の心を掴んだのは、琴子が妙に前向きで、なぜか自信家な部分を持っているおもしろいキャラクターだからでしょう。入江がほだされていくと同時に読者の心もほだしていく琴子の魅力を味わってほしい作品です。

作者:多田かおる
出版社:集英社
掲載誌:別冊マーガレット
レーベル:マーガレットコミックス
発表号:1990年6月号-1999年3月号
巻数:全23巻

ベタなシチュエーションを使っておきながら、なおその輝きを失わない10作品。それどころかベタ設定にもかかわらず、今までになかった展開を繰り広げていく手腕に舌を巻く思いです。次に読むのは王道少女漫画で決まりですね!