「パクリ、男尊女卑」と炎上中の自民党の漫画。ダメっぷりを漫画の専門家に聞いた

 自民党の作った18歳選挙パンフレット『国に届け』の漫画『軽いノリじゃダメですか?』がたいへん残念な出来でネットで話題になっています。

 内容は、ドジッ子の主人公・アスカが、オレ様生徒会長・浅倉くんと仲良くなるために参院選の投票に行くというもの。

 パンフレットのタイトル『国に届け』も、どこかで聞いた気がします。Twitterでは「パクりに男尊女卑。おじいさん達が考えることはこの程度」「設定が最低だよね。いつまでたっても女の子はバカでいて欲しいっていう妄想炸裂だな」、とさんざんな評価です。

 学園モノ、ドジッ子女子、オレ様男子と、一見少女漫画の王道を押さえているかのように見えるこの漫画ですが、いったいなぜこのような批判の嵐にさらされているのでしょう。少女漫画マイスターの和久井香菜子さんに聞いてみました。

◆少女漫画風だけど読者不在

「ターゲットがハッキリしないのが、批判が大きい理由でしょう。漫画には明確にジェンダーがあります。話の内容も、絵柄も、キャラ設定も、男女で好みがまったく異なるんです。しかしこの漫画はターゲットが男子なのか女子なのかわからないので、どちらからも共感を得にくい。『国に届け』は明らかに『君に届け』のパクリですが、内容がよければ批判にはつながらなかったはずです」

 たしかに、少女漫画風ではありますが、本作を手掛けたのは少年漫画を得意とする男性作家、中武士竜さんです。ただ、少女マンガの王道ともいえる設定なので仮に女子向けだとして批評していただくと……。

◆オレ様キャラをはき違えている

「まず少女漫画界で人気の『オレ様』キャラですが、ただ威張っていればいいのではありません。ふとした弱さ、強気の発言の裏にある正義や気遣いなど、細かいところで気持ちを揺さぶるから魅力的なのです。一方でこの漫画の浅倉くんは『ただ威張ってる』だけですね。

『かっこいい浅倉くん』のアピールが少しずつ間違っているんです。浅倉くんがかっこいい理由を『生徒会長を務めるかたわらイケメン』『少しツンデレ』『お母さんは地元の議員さん』と言っているのですが、それらの条件のどこに魅力があるのかわかりません。『お母さんが議員』などと聞いて女子が感じるのは『うわ、面倒くさそう!』でしょう。生徒会長であることやイケメンであることは、女子にとって『かっこよさの結果』であって『理由』ではないんです。

 つまり、生徒会長をするくらい人望が厚くて勉強ができるとか、顔立ちの良さをひけらかさない心の美しさが萌えポイントなのであって、肩書きそのものではないんです。そういった権威的なところにこだわるのはいかにも男性的な視点ですね。

 女子は、イケメンの内面的な美しさがあった上で、キャラの手首や肘の骨、背中のラインや、服のシワ(ここ重要!)に萌えるんです。浅倉くんの私服を見てアスカが『やっぱりかっこいいな……』と言っていますが、残念ながら女子読者はひとりも共感していないと思います」

◆少子化問題に「僕たちも何かしなきゃね」

 自民党サイドの意向がいろいろあったのかもしれませんが、女性が共感しづらい内容になってしまったのは、やはり男性作家さんだからなのでしょうか。

「一般的に、男性が女性心理を理解するのは非常に難しいです。少女漫画界に男性作家は数名しかいません。この作品の作家が少年漫画を描く男性ということからしても、人選ミスと言えそうですね。かといって、イケメン生徒会長に女子が言い寄るストーリーでは男子にも届かないでしょう。そもそもが読者不在の作品なのです。 印象的なのは、浅倉くんが真面目な顔して『このまま人口が減っていくと経済にも影響が……』と少子化を憂えているところ。その言葉に対する友人男子の返事は『僕たちも何かしなきゃね』なのです。それって『子作りしよう』ってことなのでしょうか。オッサンたちの心配ごとを若者のセリフにしたら下ネタになった、というのが滑稽で笑えます」