【日本代表】ドルトムントで苦しむ香川が、日本代表で躍動できた理由。キーポイントは、本田や岡崎らとの「流動性」にあり
3月29日に行なわれたワールドカップ2次予選のシリア戦。トップ下でフル出場した香川真司は、日本の5得点すべてに絡み、2ゴール・1アシストと結果を残した。
1点目のオウンゴールは17分、ショートコーナーから香川のクロスで生まれた。66分の2点目は、香川自身がゴールをゲット。2013年コンフェデレーションズカップ・イタリア戦のゴールを想起させる、左足の回転巻き込みボレーシュートだった。
3点目はアシストだ。86分にカウンターから清武弘嗣とともに攻め上がり、ファーサイドへマークを外して膨らんだ本田圭佑へピンポイントクロスを供給。本田がヘディングで決めた。
4点目も香川自身がゴール。90分、本田のポストプレーから原口元気がふわっとした浮き球を縦に送り、2点目と同じくシリアが空中のボール処理に失敗したところで、こぼれ球を抜け目なく拾った香川がゴールを挙げた。
5点目は攻撃の起点だ。後半アディショナルタイム、長谷部誠の縦パスを受けた香川は、相手を背負ってターンし、逆サイドへ展開。そして清武の周囲を原口と長友佑都がものすごい勢いでオーバーラップし、最後は長友のクロスを、原口がヘディングで決めた。
ドルトムントでは厳しいポジション争いに苦しむ香川だが、久しぶりにスッキリとした活躍を見せることができた。
その要因のひとつは、ドルトムントとは異なる日本代表の流動性にあるのではないか。
ポジショニングが厳格なドルトムントでは、香川は真ん中の相手DFとMFの隙間でボールを受けることが要求されている。しかし、相手の守備の厳しさ、受けるスペースの狭さ、味方ボランチとの距離の遠さから、現状ではトーマス・トゥヘル監督のリクエストに応えられていない。
しかし、シリア戦では味方が多くの動き出しを見せた。 前半に目立ったのは、本田のポジショニングだ。日本の右サイドは、シリアMFのアルアジャンが背中に気を配っており、SBのサバグとともに、本田を縦に挟み込む守備をしていた。ここが攻撃の起点であると、警戒したのだろう。
ところが、本田は右サイドに留まらず、中央に入ってアルアジャンとサバグを引きつけ、右サイドのスペースを空けた。そこに酒井高徳が駆け上がるか、あるいは香川が流れてフリーで受ける。
相手の守備の狙いを逆手に取り、ボールを受けやすい環境を作った。香川が気持ち良くプレーできた“黒子”として、本田の戦術眼は見逃せない。
もうひとつは、岡崎慎司だ。
CFは中央に留まって、相手CBと勝負をしろとハリルホジッチに口うるさく指示されたが、「以前ほど強くは言われていない」と岡崎は語る。岡崎としては、屈強な相手DFと止まった状態で勝負するのは、いかにも分が悪い。サイドに流れたり、隙間に下りたりと、ボールを受ける動きを繰り返した。
そうやって岡崎が最前線のスペースを空けてくれれば、香川も飛び出しやすく、今回のように得点にも絡める。
付け加えるなら、58分にボランチに投入された原口も、ボールを運ぶドリブル、フリーランニングで積極的な動き出しを見せた。すると、香川はそれに合わせてスッと原口から離れるように動き、フリーになれる。
香川は味方との関係でスペースを見つけるのが非常に上手い選手だ。本田、岡崎、原口らの動き出しが、香川のスペース認知を刺激し、互いに良さを発揮した。
もちろん、この流動性はメリットだけでなく、カウンターを食らう要因にもなったので、ボランチとSBのポジショニングを中心に修正すべき点はある。守備の個人戦術でも、うかつなスライディングをかわされる場面が目立ち、明らかに相手を舐めていた。
しかし、だからといってポジショニングの流動性を消せば、香川の良さは活かされない。岡崎と同様に、止まって勝負できるタイプではない。
トップ下の香川を中心に、いかに周囲が動きを作り、いかに周囲がリスクの火消しを行なうか。そして、それを時間帯により、どのように使い分けるか。このあたりが最終予選のポイントになるだろう。
文:清水英斗(サッカーライター)
1点目のオウンゴールは17分、ショートコーナーから香川のクロスで生まれた。66分の2点目は、香川自身がゴールをゲット。2013年コンフェデレーションズカップ・イタリア戦のゴールを想起させる、左足の回転巻き込みボレーシュートだった。
3点目はアシストだ。86分にカウンターから清武弘嗣とともに攻め上がり、ファーサイドへマークを外して膨らんだ本田圭佑へピンポイントクロスを供給。本田がヘディングで決めた。
4点目も香川自身がゴール。90分、本田のポストプレーから原口元気がふわっとした浮き球を縦に送り、2点目と同じくシリアが空中のボール処理に失敗したところで、こぼれ球を抜け目なく拾った香川がゴールを挙げた。
5点目は攻撃の起点だ。後半アディショナルタイム、長谷部誠の縦パスを受けた香川は、相手を背負ってターンし、逆サイドへ展開。そして清武の周囲を原口と長友佑都がものすごい勢いでオーバーラップし、最後は長友のクロスを、原口がヘディングで決めた。
ドルトムントでは厳しいポジション争いに苦しむ香川だが、久しぶりにスッキリとした活躍を見せることができた。
その要因のひとつは、ドルトムントとは異なる日本代表の流動性にあるのではないか。
ポジショニングが厳格なドルトムントでは、香川は真ん中の相手DFとMFの隙間でボールを受けることが要求されている。しかし、相手の守備の厳しさ、受けるスペースの狭さ、味方ボランチとの距離の遠さから、現状ではトーマス・トゥヘル監督のリクエストに応えられていない。
しかし、シリア戦では味方が多くの動き出しを見せた。 前半に目立ったのは、本田のポジショニングだ。日本の右サイドは、シリアMFのアルアジャンが背中に気を配っており、SBのサバグとともに、本田を縦に挟み込む守備をしていた。ここが攻撃の起点であると、警戒したのだろう。
ところが、本田は右サイドに留まらず、中央に入ってアルアジャンとサバグを引きつけ、右サイドのスペースを空けた。そこに酒井高徳が駆け上がるか、あるいは香川が流れてフリーで受ける。
もうひとつは、岡崎慎司だ。
CFは中央に留まって、相手CBと勝負をしろとハリルホジッチに口うるさく指示されたが、「以前ほど強くは言われていない」と岡崎は語る。岡崎としては、屈強な相手DFと止まった状態で勝負するのは、いかにも分が悪い。サイドに流れたり、隙間に下りたりと、ボールを受ける動きを繰り返した。
そうやって岡崎が最前線のスペースを空けてくれれば、香川も飛び出しやすく、今回のように得点にも絡める。
付け加えるなら、58分にボランチに投入された原口も、ボールを運ぶドリブル、フリーランニングで積極的な動き出しを見せた。すると、香川はそれに合わせてスッと原口から離れるように動き、フリーになれる。
香川は味方との関係でスペースを見つけるのが非常に上手い選手だ。本田、岡崎、原口らの動き出しが、香川のスペース認知を刺激し、互いに良さを発揮した。
もちろん、この流動性はメリットだけでなく、カウンターを食らう要因にもなったので、ボランチとSBのポジショニングを中心に修正すべき点はある。守備の個人戦術でも、うかつなスライディングをかわされる場面が目立ち、明らかに相手を舐めていた。
しかし、だからといってポジショニングの流動性を消せば、香川の良さは活かされない。岡崎と同様に、止まって勝負できるタイプではない。
トップ下の香川を中心に、いかに周囲が動きを作り、いかに周囲がリスクの火消しを行なうか。そして、それを時間帯により、どのように使い分けるか。このあたりが最終予選のポイントになるだろう。
文:清水英斗(サッカーライター)