巨人・坂本勇人(写真は侍ジャパン時)【写真:編集部】

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今季、坂本が苦手とした球種は?

 今季、リーグ4連覇を目指していた巨人はヤクルトに競り負け、2位に終わった。CSでもファイナルステージ敗退。今季限りで原監督が辞任を表明するなど、悔しいシーズンとなった。チーム防御率はリーグトップの2.78という結果だっただけに、リーグ最下位のチーム打率.243が大きく響いたといえる。

 今季、チームで規定打席に到達したのはわずか2人。そのうちチームトップの数字を残した坂本勇人でさえ、打率.269で終わっている。このことからも主力打者が期待通りの活躍を見せられなかったことが分かる。

 主将を任された坂本は今季、チーム最多タイの130試合に出場。11月には侍ジャパン日本代表の一員として世界野球「プレミア12」にも参加し、レギュラーとしてプレーした。しかし、レギュラーシーズンでは打率、本塁打ともに昨季を下回る結果に。また、四球がキャリアハイの65個だった反面、安打数は1軍に定着して以降最少の129本に終わっている。

 27歳の内野手は今季、どのような課題を抱えていたのか。今回、ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜と4球団で捕手として活躍した野球解説者の野口寿浩氏に、今季の結果球の球種別成績、ヒートマップ(コース別打撃成績)を分析してもらった。

得意なはずのインコースの速球も真ん中の高さは打率.133

 同氏はまず、89打数16安打の打率.180に終わったスライダーへの対応に着目。「今まで対応し切れていたスライダーに対応しきれなくなった。一目瞭然ですね」と指摘し、その要因として下半身の強化に課題がある可能性に言及した。2014年は同じ球種に対して、115打数32安打の打率.278。倍の安打数を放っていることを考えれば、スライダーへの対応が今季の成績に直結したという見方もできるかもしれない。

 また、野口氏は球界屈指とされるインコース打ちの技術が相手バッテリーに研究されているとし、「そうなると、スライダーなどの逃げる球、落ちる球の対策をどのようにやるのかを考えないといけないですね」と改善ポイントを語った。

 一方で、そのインコース打ちにも課題があったと同氏は指摘する。ストライクゾーンを9分割したうちのインコース真ん中に投じられたストレートに対して、30打数4安打の打率.133。「ツーシームか、もしくは左投手のクロスファイアーか分からないですけど、これに対して戸惑っている間に、スライダーを投げられた可能性がある」。インサイドに速球、アウトサイドに変化球と投げ分けられることで、相手バッテリーに打ち取られた可能性もありそうだ。

長野は入団後最低の打率.251も…来季は「打つ可能性は高い」

 野口氏は今季について「出だしがよくなかった」とし、4月まで打率.214に低迷するなど序盤の不調がその後にも影響したと総括した。

 また、今季もう一人の規定打席到達者となった長野久義も打率.251と低調な結果に。2年目の2011年に首位打者を獲得した31歳にとってはキャリアワーストの数字だった。ただ、同選手の場合は昨年オフに右膝を手術し、急ピッチで開幕に合わせた経緯があり、野口氏も「今年は故障が影響したと思います。身体が万全なら、打つ可能性は高いでしょう。今季はもう少しゆっくり調整させてもよかったかもしれない」と分析する。

 巨人の野手陣において、坂本と長野は年間を通してレギュラーを守った数少ない選手だった。ともに特に守備での貢献度が高く、チームにとって不可欠な存在だったことに異論はないだろう。しかし、打力の期待値からすると想定より低い成績であったことも事実だ。

 来季再び、両選手が攻撃面でも大きなアドバンテージをもたらす存在になれるか。セ・リーグ覇者の座に返り咲くために、重要なポイントになりそうだ。