東急不動産ホールディングス社長 大隈郁仁氏

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海外で稼ぐ割合が増えた日本企業は、目まぐるしく変化する世界情勢の影響をまともに受けるようになっている。いっときの成功に酔いしれている暇はない。2015年、新しくトップに就任した男たちはどんな戦いを挑むのか。

■タイミングを逃さず、大型買収

HD社長就任の打診には「事業会社の社長を経験した人間がなると思っていた」という。三井、三菱、住友に次いで不動産業界4位。企業業績の改善を追い風にオフィス需要が回復、賃料収入が好調だ。渋谷、銀座など大型プロジェクトも目白押し。2020年に営業利益1000億円を目指し、積極的に動く。

――今年4月、東急不動産社長だった三枝利行氏が、不適切な土地取引を指摘する週刊誌報道を受け、わずか1年で辞任した。

【大隈】約3万人の社員に対し、トップにいる人間が大変申し訳ないことをしたと思っている。調査委員会を立ち上げ、6月末の株主総会で禊ぎを受けるまでは対外的なことは自粛し、全体の混乱を収めることを優先した。これを教訓に、社内でもう一度コンプライアンスを見直したうえで、社員の心が1つになるよう、各拠点で語り合うことを続けている。

――都市開発で頭角を現した。

【大隈】入社して14年間は販売、人事、宅地開発を担当してきた。都市開発の仕事をやり始めたのは、30代後半から。実はそのときに不動産証券化という追い風が吹いた。結局、従来の仕事のやり方をそのまま真似していても駄目、時代は変わるということだ。新しい風が吹くときには、タイミングを逃さない。30代は自分がやりたい場所に行かせてもらえなかった。サラリーマン人生の中には必ず転機がある。どんなことがあっても腐らず、新しい需要、つまりお客様をよく見ながら、アンテナを張っておくことだ。

――リーマンショックの年にビル事業本部長になった。このとき銀座の東芝ビルを買収した。

【大隈】あとで「こんな高いもの買いやがって」と言われた。ただ、不動産というのは、安いときには、なかなか優良物件は出てこない。高いときに出てくるものだ。この物件を取りにいくべきかどうか。個人的には取るというチャレンジをした。

――銀座プロジェクトの位置づけは。

【大隈】中央通りにブランド店が集中している。それを逆手に取ってどう特徴を出すか。例えば、ロッテの免税店を入れて、インバウンド需要も取り込む。イベント空間でいろいろなコンテンツを常時発信していく。従来のブランド店が固定している商業施設とは違うものにしたい。

――東急プラザ跡地など渋谷の再開発も動いている。

【大隈】渋谷の再開発は、「東急プラザ」「桜丘」「道玄坂」の3つの案件が20年までにすべて開業するスケジュールで動いている。現在では地元の方々と協力しながら、取り組めるようになり、順調に進んでいる。

――20年以降の見通しは。

【大隈】人口減少という大きな流れは止められない。ただ、東京の都市事業の観点では、人口、世帯数ともにまだまだ流入がある。悲観はしていない。お客様の立ち位置が変われば、新たなサービスの需要が生まれる。インバウンド、シニア層など新しい芽はまだたくさんあるはずだ。

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東急不動産ホールディングス社長 大隈郁仁
1958年、広島県生まれ。82年横浜市立大学商学部卒業後、東急不動産入社。2008年執行役員ビル事業本部長、11年取締役経営企画統括部統括部長、13年東急不動産HD取締役執行役員就任。15年4月より現職。

出身高校:広島修道高校
長く在籍した部門:都市事業部門
座右の書(または最近読んだ本):『雲霧仁左衛門』
座右の銘:One for all, all for one
趣味:ドライブ、音楽鑑賞、旅行

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(國貞文隆=構成 葛西亜理沙=撮影)