がん保険の役割を果たす、住宅ローン付随の「団信」

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住宅ローンを契約する時に、併せて「団体信用生命保険」も契約する場合がほとんどではないでしょうか? 団体信用生命保険はローンの返済者に「あってはならない万が一」が起きてしまった場合に、残債(住宅ローンの返済額の残り)を一括弁済する仕組みです。これも、契約内容によっては「がん保険」ととらえることもでます。詳しく見ていきましょう。

団体信用生命とは


団体信用生命保険(団信)は、言わば住宅ローンの返済額を保険金額として定めた、掛け捨てタイプの生命保険のようなイメージです。つまり、すでに生命保険に加入している人とっては、住宅ローンを組むタイミングは、生命保険の見直しのチャンスでもあるわけです。そして、最近では団信も多様化が進んでいます。

三大疾病団信


長期固定金利のローン「フラット35」を利用する場合は、「機構団信特約」という制度が用意されています。さらに、機構団信特約の中に「三大疾病保障付機構団信特約」があります。

三大疾病保障付機構団信特約では、「死亡・高度障害・悪性新生物・約款所定の脳卒中・約款所定の心筋梗塞」のいずれかに該当した場合、残債(住宅ローンの返済額の残り)が一括弁済されます。

例えば、三大疾病保障付機構団信特約を契約している返済者がいて、その住宅ローンの毎月の返済額が12万円だったとしましょう。この返済者が悪性新生物に(がん)かかってしまった場合、住宅ローンの毎月の返済額12万円が免除されることになります。

見方を変えると、これは「毎月12万円の給付金を受け取る」ことと同じと言えます。ということは、三大疾病保障付機構団信特約を契約していれば、がん保険の保障内容を減らしてもいい、という考え方もできそうです。

また、同様の団信を用意している金融機関もあります。大まかに言うと、悪性新生物やその他の病気で「所定の状態」に該当した場合、最長1年間、住宅ローンの返済を肩代わりしてもらえます。その期間が1年以上続くと、住宅ローンの返済額の残りが一括弁済される仕組みです。

団信の留意点


三大疾病保障付機構団信特約は機構団信特約に比べ、健康告知の水準が厳しく、また特約料(=生命保険の保険料に相当)が高くなっています。また、金融機関の疾病付団信の保険料も、一般的な団信に比べて高い場合もあるようです。

しかも、団信の場合、保険料(または特約料)が負担だからといって、簡単に止めるわけにはいきません。それに比べ、がん保険は、家計の負担を感じたら、比較的簡単に解約することができます。特に、三大疾病保障付機構団信特約や金融機関の疾病付団信で、「病気にはなったが、団信による弁済が効かない程度の症状」の場合は、住宅ローンの返済は続けなくてはなりません。

医療保険なら入院や手術で給付金が受け取れますし、がん保険は悪性新生物でなくても「上皮内がん」で給付金を受け取ることができる商品があります。保険に契約する際は、そうした、給付金を受け取る(弁済を受ける)際のハードルの高さにも気を配っておく必要があるでしょう。

団信にせよ、保険にせよ、続かなくては意味がありません。家計のバランスも踏まえて判断しましょう。「闘病のために保険を解約せざるを得なかった、家を手放すしかなかった」ということが起こらないようにしたいものですね。

●大泉 稔(おおいずみ・みのる)
ファイナンシャルプランナー。株式会社fpANSWER代表取締役、大泉稔1級FP技能士事務所主宰。1級FP技能士、生命保険大学課程、1種証券外務員。現在、「大人のための生命保険相談室」や「FP試験対策個別指導塾」、「交通事故被害者のための相談室」を展開中
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