新型好調のロードスター、初代人気が再燃 お手ごろ価格には落とし穴も
好調な販売をキープしているマツダの新型「ロードスター」。その背景には、初代「ユーノス・ロードスター」を支持した世代の乗り替え需要がありますが、同時に、初代そのものへの関心も高まりつつあるようです。
新型の“原点回帰”で初代に注がれる熱視線
2015年5月にフルモデルチェンジされたマツダのオープンスポーツカー、新型「ロードスター」の販売が好調です。発売1カ月で5042台を受注し、現在も月平均1000台前後を販売。購入者は40代が中心ですが、それ以外の年代にも幅広く支持されています。
新型モデルは原点回帰を図り、初代として投入された「ユーノス・ロードスター」のように軽量かつコンパクト、そして誰にでも扱いやすいスポーツカーが目指されました。つまり新型は、初代を支持した人たちの心に刺さるモデルでもあるのです。実際に、発売から26年を迎えた初代からの乗り替え需要を見事に掴んでいます。
しかしその一方、原点である「ユーノス・ロードスター」に注目する人たちも増えているのです。
“激安物件”もあるけれど…
ここで少し、「ロードスター」の歴史を振り返りましょう。
初代「ユーノス・ロードスター」は1989(平成元)年に発売され、幅広い世代の注目を浴び、社会現象のような人気となりました。その人気は国内にとどまらず、世界的ヒットモデルへと成長。総生産台数は、なんと約43万台にも達しています。
この成功はのちに、世界の自動車市場に多大な影響をもたらしました。メルセデス・ベンツ「SLK」やBMW「Z3」、フィアット「バルケッタ」など、世界中の老舗自動車メーカーが、こぞって手頃なオープン2シーターを送り出すことに繋がったのです。
それだけに当時、「ユーノス・ロードスター」のオーナーだった人、また憧れていた人は多くいます。そんな彼らは既に子離れをし、自分の時間を持つようになりました。そうした人たちがいま、思い入れの強い初代に注目しているというわけです。
現状を掴むべく、初代をメインに「ロードスター」のメンテナンス・販売を手掛ける「ユーノスター」(埼玉県春日部市)を訪ねました。顧客の中心は、やはり40代以上ですが、なかには20代の若者も。気になる相場を伺うと、同店の入り口は70〜80万円。車両選びは状態を重視し、グレードや色などはあるものから、とするのがベストといいます。こだわり過ぎると、気に入ったものを見つけることが難しいようです。
もしATが許容できるなら、MTに比べ10万円ほど安いそうなので、あえてATという選択もアリといいます。また生産台数が多かっただけに“激安物件”も多く存在しますが、最終型でも生産から18年が経過したクルマ。状態の良いものを選んでおかないと、多額の修理費や大きなトラブルに悩まされ、結果的に高くつくことも多いため、同店で“激安物件”は扱っていないといいます。
“夢”をかなえるには購入後の“意識”が重要
価格面を考えると、高価な新型に比べ、旧型は手が届きやすく、趣味として持ちやすいクルマという印象を受けます。
しかし同店では、愛車を良い状態で楽しむにはそれなりの熱意と費用も必要、とアドバイスしているとのこと。どんなに状態が良いクルマでも経年劣化や部品の寿命などにより、突然のトラブルに見舞われることがあるからです。出先でのトラブルを減らすには、予防的なメンテナンスも必要です。
また現実問題として、部品の欠品が年々増えており、定価も上がっているといいます。そのため、メンテナンスに予想外の時間と費用が掛かるケースも。このようなことから、購入後の維持費用もある程度確保できないと、初代モデルを長く愛用していくことは難しいそうです。
この話を受けて、マツダに純正部品の供給について問い合わせたところ、メーカーとしてどのモデルに関しても、意図的に部品供給を止めることはないとのこと。ただし、材料や設備の問題などで物理的に供給が不可能になるケースはあるようです。
初代モデルである「ユーノス・ロードスター」は、ストレートにクルマの魅力を追求したシンプルさを備えるだけに、いま見ても古さを感じさせません。しかし、人もクルマも歳月がたてば、常に快調に過ごすには日頃のメンテナンスが重要となります。その意識があれば、いまでも十分に「ユーノス・ロードスター」を楽しむことは可能です。
昔の夢をかなえるなら、いまがチャンスなのかもしれません。