【侍ジャパンU-18代表コラム】「空振りを獲る」130キロ台・上野 翔太郎先発の理由
8月28日(金)「第27回WBSC U-18ベースボールワールドカップ」初戦を迎えた侍ジャパンU-18代表。ブラジル戦のマウンドに登ったのは上野 翔太郎(中京大中京)だった。特に素晴らしかったのはストレート。今回はそのルーツと指揮官の「上野先発」の意図に迫っていく。
開幕投手の大役を果たし、打線を触発「昨日の練習でブラジル打者がアウトコースの対応が弱いのを見て、コントロールの良い上野を投げさせることにしました」。西谷 浩一・侍ジャパンU-18代表監督は上野に大会開幕投手を託した理由をこう語る。そして上野は6回を投げ、被安打2本、8奪三振、無失点の快投。好投に触発された打線は6回まで14得点を奪う猛攻で7回コールド発進。チームに勢いをもたらし、見事に大役を果たした。
この日の上野の投球でクローズアップされる場面は、3回一死から4回まで五者連続奪三振を取った場面。とはいえ、彼のストレートは最速144キロ。多くは130キロ台後半である。では、なぜ彼は130キロ台で空振りを取れる技術を身に付けたのだろうか?本人に話を聞いてみることにした。
「左足の使い方」で伸びあるストレートを手にブラジル戦に先発した上野 翔太郎(中京大中京)
上野自身、自分のストレートに自信を持ったのは中京大中京3年の春から。それまでも上野のキレのあるストレートを見て、多くの人から「ストレートピッチャー」と評されていた上野だが、当人はピンと来ていなかったようだ。
「ストレートピッチャーといえば、150キロを投げるピッチャーのことだと思ってしまいます。スピードに追い求めた時期もありました」。
だが3年になると130キロ中盤〜140キロでも「質のある」ストレートが自分の武器であることに気付く。そして、その武器をさらに活かすために上野はフォーム面でのマイナーチェンジに取り組んだ。それが「踏み出す足=左足」の使い方である。
伸びのあるストレートを投げる投手はリリースポイントに注目が集まりやすい。だが、上野に「球持ちやリリースポイントについて意識しているか」と聞くと、本人いわく「実は上半身はそれほど意識しておらず、なるべく力を入れないようにしている」と話す。
彼が最も意識しているのは踏み出す左足の使い方だ。投球動作に入って、左足を上げて、着地する時に若干、内に溜めるような意識で前足を踏み出す。はた目からすると、ただ左足を捕手方向へ真っ直ぐ踏み出すように見えるが、この意識をすることで「軸足がしっかりと体重が乗り、力の伝わり方が格段に違ってきた」と上野は語る。
実はこれが最も難しい。投手経験のある方なら理解できるだろうが方ならば分かるかもしれないが、真っ直ぐ踏み出そうとしてもインステップになり、あるいはひざが開いてアウトステップ気味になって、力が分散する。
そこで上野は踏み出す左足を内に溜める意識を掴んだことで、全ての力を下半身から指先伝えられるようになり、今のような伸びのあるストレートを投げることができるのだ。
対戦国はどんな国?!
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[page_break: 夏の「実感」、指揮官の狙いに応え世界一への「キーマン」に]夏の「実感」、指揮官の狙いに応え世界一への「キーマン」に開幕投手の大役を果たした上野 翔太郎(中京大中京)
上野 翔太郎が左足の感覚をしっかりとつかんだのは、3年夏の愛知大会準決勝の東邦戦(試合レポート)。そして甲子園をかけた愛工大名電との決勝戦は上野が言うに「甲子園を通じても、この試合が最も調子が良かった」試合となった。
決勝までの5試合で48得点の愛工大名電打線。中京大中京先発の長谷部 銀次からも初回に3点を挙げ、猛打が爆発しそうな勢い。その勢いを止めたのは2回途中から登板した上野である。
伸びのある速球に愛工大名電の各打者が次々と空振り、際どいコースには全く手が出ずに打ち取られることがしばしば。この試合、7回3分の2を投げ、被安打2、9奪三振の快投で、5年ぶりの甲子園出場に貢献。
甲子園での活躍は1回戦の岐阜城北戦1失点完投勝利(試合レポート)。鹿児島実戦では3失点完投勝利(試合レポート)。3回戦・関東一にサヨナラアーチを打たれるまで8回に無失点に抑える力投(試合レポート)。と列挙するまでもなく、記憶に深く刻まれているはずだ。
そして初の「侍ジャパン」。知り合いの理学療法士にストレッチのやり方、アップの仕方、ケアの仕方を伝授され、激戦の身体を回復させて望んだ今大会で、この快刀乱麻。ただ、本人の「会心」は試合後に指摘されて気付いた5連続奪三振よりも2回表、無死満塁のピンチを招いた場面で、7番D・オリベイラを三塁ゴロ本塁併殺に打ち取った場面だという。
カウント1ストライク3ボールから内角の直球を投げ、右打者のオリベイラは完全にどん詰まり。「内角ストレートを狙い通りにしっかりと投げ、狙い通りに打ち取ることができて会心の投球でした。結果的に打線に勢いを作ることができて良かったです」と上野は振り返る。
踏み込んでくる諸外国の打者に対して、内角を狙い通りに投げる。これが侍ジャパンU-18代表世界一獲得への大きなターニングポイント。そこを初戦で実践できた意義と与える影響は、上野ばかりでなく他の投手陣にとっても計り知れない。アウトコース対応の弱さを突くことに加え、インコースを投げきる。西谷監督の裏の意図も見えた「上野先発」であった。
もちろん、そのキーマンの1人は130キロ中盤でも空振りが奪える伸びのあるストレートを両サイド自在に投げ分ける投球が世界でも通用することを証明した上野。今大会、再び「上野 翔太郎」の投球は必ずクローズアップされるはずだ。
(文=河嶋 宗一)
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