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東京地裁で行われていた地下鉄サリン事件の「最初で最後の裁判員裁判」が終わった。中里智美裁判長は4月30日、オウム真理教の元信者・高橋克也被告人(57)に、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。高橋被告人は地下鉄サリン事件(1995年)など5つの事件で、殺人などの罪に問われていた。判決のあと、裁判員が東京地裁で会見を開き、裁判についての感想を語った。

高橋被告人は17年間、逃亡した末に逮捕されたため、その裁判は「最後のオウム裁判」と呼ばれている。地下鉄サリン事件裁判員裁判は今回が初めてで、これが地下鉄サリン事件「最初で最後の裁判員裁判」だった。裁判は今年1月16日に始まり、裁判員裁判史上最多の39回の公判が開かれ、元信者27人が証言した。裁判員選任の手続きは1月8日にあったため、裁判員の在任期間は113日に及んでいた。

●裁判員は「高橋克也被告人」をどう見たか?

その長い裁判期間中、「高橋克也」という人物を見続けてきた裁判員たちは、彼について何を思うのか。判決が言い渡された後、6人の裁判員が裁判所内で記者会見し、高橋被告人を次のように評した。

「純粋な人。いったん信じてしまうと、そちらのほうに突き進んでしまう人」(34歳・会社員男性)

「居場所がない人間。オウムの中でしか生きられない。彼にとって、そこが安住の地という気がします」(50代・男性)

「普通の人。普通に生きている、どこにでもいる人。一般的な人だなという印象です」(30代・会社員男性)

「つかみ所がないんですが、言い方とすれば、悲しい人かな」(40代・男性)

「寂しい人。宗教に盲信してしまった人」(30代・女性)

「存在感が薄いような、そういう感じの人」(30代・男性)

高橋被告人の信仰について、感想を聞かれると、30代の会社員男性は「一度自分でこうだと信じて、軸になってしまったものを変更するのは、すごく難しい作業なんじゃないか。高橋被告人の姿を見ていてそう思いました」と話していた。

●長期に及んだ裁判については?

一方で、公判39回、113日に及んだ裁判員裁判について、裁判員たちは次のように語っていた。

「選ばれたとき長くかかるとは聞いたが、ここまでとは思いませんでした。本気にしていなかった。長期間穴をあけて、所属している会社に迷惑をかけてしまいました。裁判所は、私に対してフォローをしてくれましたが、可能なら会社のほうのフォローもしてただければありがたいです」(30代・会社員男性)

「主婦で、子育てもしているので、とても大変でした。行政が託児を優先的に割り当ててくれるとか、そういう制度があれば、私みたいな主婦でも参加できます。裁判員をやったことには誇りを持っています」(30代・女性)

「振り回された感がありました。次にどうなるのか、この時期は何をやるべきだというのが、分かりづらかった。こういう証言を書き留めて、質問部分はチェックを入れていくべきだとか、長期の場合は特に、裁判の流れをしっかりご教示いただきたい。先が見えない仕事は不安になります」(50代・男性)

●「これからは頑張れよって言いたい」

このうち34歳の会社員男性は単独で、追加の記者会見に応じた。法廷での高橋被告人について印象を聞かれると、「まばたきが多かった」と話した。

記者から17年間も逃げていながら被害者に謝罪できない被告人についてどう思うか聞かれると、「事件に向き合えていなくて、かわいそうな人だなと思いました。もうちょっと向き合えていれば、自分を取り戻せたのではないかと思う」と語った。

もし、高橋被告人に言葉をかけるとすれば・・・という質問に対しては、「いままで大変だったね。これからは頑張れよって言いたい」と答えていた。

(弁護士ドットコムニュース)