14日、旧江戸川の千葉県側に接岸したクレーン船に取り付けられた警告看板。(撮影:佐藤学)

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「ドーンドーンと続けて大きな音がした」――。14日午前7時38分ごろ、東京と千葉の都県境を流れる旧江戸川の東京側に住む高橋久雄さんが見たものは、アーム部を下ろしながら東京電力の高圧送電線の下をくぐるように航行するクレーン船だった。

 同船のクレーンアームが、水面から約16メートル上に川をまたぐように張られた東電の送電線に接触し、損傷させた。この事故で、東京都心部と神奈川、千葉両県の一部139万1000世帯が停電したほか、首都圏の交通機関が大幅に乱れ、渋谷区ではビルのエレベーターに人が閉じこめられるなど、大きな影響が出た。

 江戸川区の「なぎさニュータウン」の5階に住む高橋さんは、部屋にいて突然衝突音を聞いて川に目をやると「送電線から一隻分ほど川上にいる船を見つけたときは、アームはまだ30度の角度で立っており、次第に水平になっていくところだった」と事故直後のクレーン船の状況を語った。クレーン船はそのままタグボートに曳航され、千葉県の浦安側に接岸したという。

 川岸から数ブロック離れた同区のマンションに住む女性は、「ドーン、ドーン」という音と共に、テレビをはじめ、家中の電気が切れてしまったため、様子を見るために外に出た。「隣のマンションも停電しており、近くの信号機が点滅しているので、これはおかしいと思った」と話す。区役所や東京電力に電話をしてもつながらないため、「しばらく不安だった」と振り返る。

 旧江戸川の千葉県側、浦安市の事故現場から少し川上にドックがある。そこに集まった船主の間でもクレーン船の話で持ちきりだった。船主のひとりは「川とはいえ結構揺れがあるのに、クレーンのアームを上げながら走行するとは考えられない」と首をかしげていた。

 接岸したクレーン船には、警戒船から乗り移った検査員と思われる制服姿の職員が、アーム部分をカメラに収めていた。「潜水作業中」という看板の横に取り付けられた「送電線に注意」という大きな注意書きが空々しく見えた。【了】

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