村上ファンドの村上世彰代表が証券取引法違反(インサイダー)を認め、2006年6月5日に逮捕されたが、「これだけで終わらない」という見方が出ている。次に地検に狙われるのは誰か。

明治大学政治経済学部教授の高木勝さんは、JINビジネスニュースの取材に対し、年内にも「第三の逮捕劇があるのではないか」との見方を示した。

あまりの急成長を遂げた企業にはムリがある
「ヒルズ族」の指南役でもあった村上容疑者。次の検察のターゲットはいるのか
「ヒルズ族」の指南役でもあった村上容疑者。次の検察のターゲットはいるのか
ライブドア事件の渦中に重ねて逮捕劇が起こることは予想できた。それが村上ファンドだった。しかし、これでマイナス面が出尽くして一段落ということにはならないだろう。あまりの急成長を遂げた企業にはムリがある。検察が次にどこを狙うか。戦々恐々としている経営者も多いはずだ」

と話している。
   「戦々恐々としている経営者」とは村上容疑者を師と仰ぎ、金儲けに狂奔した「グループ」の中の一人、と見て間違いないようだ。

   「次」を予想する関係者は少なくない。ただ、それがどこか、誰かは、もちろんはっきりしない。

   村上逮捕を報じた06年6月6日の大手全国紙は事件に関連した疑問を提示している。

TBS株買収をめぐる動きは問題ないのか

例えば、毎日新聞は社説で、

村上ファンド楽天の間で、どんな意見が交換されたのかも知りたい」

と書いた。村上容疑者はニッポン放送株の取得を巡るライブドアとのいきさつについては釈明したものの、TBS株には触れていない。この点はどうか、というのだ。
   村上氏は六本木ヒルズに集まった若手のIT経営者の指南役としても有名だった。それが、ライブドアにからんだ村上ファンドのインサイダー事件につながった。TBS株買収をめぐる動きでは、村上ファンドは、05年9月末時点でTBS株の7.45%を保有していたものの、同10月末までに0.52%を残してほとんど売却した。楽天が、TBS株を買い集め、提携を迫った時期に重なる。

   日本経済新聞は1面で、

村上ファンドの保有株がライブドアや楽天の手に渡って買収への呼び水になったとも言われる」

と述べ、さらに
   「抜群の運用実績でファンドの名声を高めたが、この過程でインサイダー取引があったとすれば、虚名だったことになる」とし、事件全体の徹底解明を望んでいる。
   インサイダー取引という「黒」か「灰色」かの境界がはっきりしない事件だけに、うわさされている企業、個人は少なくない。検察の力量が試されるところだ。