本当に“一人負け”なのか? ドコモ危機のカラクリ

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“他社への流出が止まらない”“ツートップ作戦は失敗”などと、メディアなどに評されているNTTドコモは、本当に危ういのでしょうか?

ニュースサイトなどをみると、他社への乗り換え(MNP)となるポートアウトが多く、流出が止まらない、また純増数も振るわず、今年入って2回の純減を記録しており、ドコモが苦戦を強いられているという報道をよく見かけます。

純減を記録したことは事実なのですが、一部報道では過剰ともいえる“ドコモ叩き”的な表現もあり、読者側からすると「とんでもなく顧客が他社に流出している」「凄まじい勢いで加入者が減っている」「ドコモは大丈夫なの?」と思う人も多いのではないでしょうか。

携帯各社の契約者数は、携帯各社を含む電気通信事業者による「一般社団法人 電気通信事業者協会(TCA)」が毎月第5営業日に発表する「携帯電話・PHS契約数」情報で確認することができます。

この中には、携帯電話・PHS・BWA(Broadband Wireless Access)の各事業者の累計契約数、純増数、地域毎の契約数などが報告されており、現在、公表されている公式なデータということになります。

・携帯電話・PHS契約数|一般社団法人 電気通信事業者協会(TCA)
http://www.tca.or.jp/database/index.html

報道各社は独自の取材、調査を行っていると思われますが、契約数の情報については、ほぼ、このTCA発表のデータを参考にしているのが実情といってもいいでしょう。

では、このTCAが公表している契約数の情報を参考に、ドコモがどの程度ピンチなのかを見ていきましょう。

2013年1月から6月までのNTTドコモKDDI(au)、ソフトバンクモバイルの累計契約数と純増数を並べてみます。


【純増数】
NTTドコモ
-12,900(1月末)
143,400(2月末)
417,400(3月末)
1,300(4月末)
91,800(5月末)
-5,900(6月末)

KDDI(au)・沖縄セルラー
167,500(1月末)
212,700(2月末)
511,900(3月末)
209,500(4月末)
227,000(5月末)
232,200(6月末)

●ソフトバンクモバイル
241,600(1月末)
255,300(2月末)
660,700(3月末)
264,400(4月末)
298,000(5月末)
248,100(6月末)


【累計契約数】
NTTドコモ
60,975,200(1月末)
61,118,600(2月末)
61,536,000(3月末)
61,537,300(4月末)
61,629,100(5月末)
61,623,200(6月末)

KDDI(au)・沖縄セルラー
36,984,700(1月末)
37,197,400(2月末)
37,709,300(3月末)
37,918,800(4月末)
38,145,900(5月末)
38,378,100(6月末)

●ソフトバンクモバイル
31,563,600(1月末)
31,818,900(2月末)
32,479,600(3月末)
32,743,900(4月末)
33,041,900(5月末)
33,290,000(6月末)

純増数を見れば、確かに2回マイナスとなる「純減」をしているのはNTTドコモだけです。また、純増した月においても他の2社に比べると圧倒的に数が少ないのが分かります。この数値が単純にMNP数を表す訳ではないですが、純増数の差を考えればMNPによる転出が多いのだろうと推測できます。

純増数だけをみると確かにドコモは危機的状況にあると受け止めることができます。特に数年前までのドコモが一人勝ちしていた状況などを考えれば、現在の数値が危機的状況を示していると言えなくもありません。

しかし、ここで累計契約数を見てみましょう。6月末時点でドコモが6100万余り、KDDI(au)が3800万余り、ソフトバンクモバイルが3300万余りとなっています。ドコモの総契約数は、各社をそれぞれ2000万余り上回っています。ドコモの契約数は、現在でもKDDIとソフトバンクモバイルの2社を合わせないと超えられないほどの差があるのです。

かつ、数千万という契約数の中で、例えば一ヶ月辺り6万の純減をしたとしても、わずかに1000分の1でしかないです。数値上の単純な割合で言えば、1000円持っていたとして1円失くしました、というのに等しいレベルなのですが、現状のドコモはそれにすらなっていません。

累計の契約数で見ると相変わらずドコモの一人勝ち状態は変わっていないのです。他社は人気だと言われているiPhoneという武器を持っていながらも数千万単位で差を開けられたままです。さらには通信品質やエリア対応などにおいて、ようやくドコモに追随できつつある状態で、いまだに追い抜いているとは言い難い状況です。

つまり、ドコモの“一人負け”はあくまで月単位でのMNPによる転出の割合が他社に比べ多い、また純増数も他社に比べ少ないという点のみで、数千万レベルで他社と差がついているトップキャリアである状況は変わっていません。

本当に他社が脅威になるレベルでドコモが危機的状況だと判断するには、少なくともこの契約数で、数十万単位で毎月純減を記録し、それと同時に他社が、百万に近いレベルで毎月純増することが必要なわけで、他の2社が頑張っているとはいえ、少なくとも現状では実現される可能性は低いでしょう。

逆に「トップキャリア」「iPhoneを取り扱っていない」といったことを考えれば、ドコモが未だに純増していることの方がよほど驚異的な事だと言えるのではないでしょうか。