日本人選手の欧州移籍については、もはや誰が新天地を求めてもごく普通のニュースとして受け止められる。しかし、同一クラブに日本人選手が3人も所属するとなると、さすがに少しばかり驚かされる。川島の所属するスタンダール・リエージュが、永井と小野を同時に獲得した件だ。

 彼らの移籍そのものに、大きな驚きはない。

 昨夏のロンドン五輪で、永井はチームの躍進に大きく貢献した。すでに移籍が決まっていた清武と酒井宏は別として、ベスト4入りを受けてひとりもヨーロッパのクラブに関心を持たれないほうが、むしろ不自然な印象さえ受ける。海外クラブ所属選手の多かった韓国の五輪代表からも、銅メダル獲得を経てヨーロッパへわたったDFがいる。スペインなどを相手に爆発的なスピードを見せつけた永井が海外組に加わったのは、何ら驚きではない。

 小野の移籍は電撃的に映る。ただ、川島という成功例を持つクラブからすれば、さらなる日本人選手の獲得に動いても不思議ではない。昨年12月に20歳になったばかりという若さも、クラブ側からすれば関心を寄せる理由のひとつとなる。ブンデスリーガにおける日本人選手の働きぶりが、ベルギーへ波及していったところもあるはずだ。発展途上のプレーヤーの獲得が、クラブにとって価値ある先行投資なのは言うまでもない。

 三人も所属するとなると、商業的な獲得といった声も聞こえてきそうだ。

 クラブ側がそうした戦略を描いているとしても、すべては彼らの活躍が前提である。永井と小野がゲームに絡めなければ、日本人の観客が増えることはない。ユニホームなどのグッズの売り上げも伸びない。
 
 日本のテレビ局がリーグ戦の放映に興味を示しているとも聞くが、それにしても3人が──少なくとも、川島に加えてもうひとりがレギュラーに食い込んでこなければ、実現へのハードルは高いままだ。商業的な理由が先行しているとしたら、リスクが高いと言わざるを得ない。必要な戦力として迎え入れられた、と考えるのが妥当である。

 屈強な大型選手が多いベルギーにおいて、スピードや敏捷性といった個性が効果的なアクセントとなる。永井はもちろん小野にしても、スピーディなプレーヤーと位置づけられる。リーグの特徴と日本人選手の特徴から判断したとき、スタンダール・リエージュは永井と小野に行き着いたのだろう。

 何にせよ、ここから先は彼ら次第だ。ピッチ上で真価を発揮することで、周囲を納得させればいい。