何度見ても腑に落ちないところがある。先日のJリーグアウォーズで発表された、2012年シーズンのJ1ベストイレブンだ。

 気になったのはポジションのバランスである。3−4−3となっている。このシステムが今シーズンのトレンドなら、何ら依存はない。しかし、現実は違う。4バックのチームが多数を占める。

 それなのに、リーグの潮流でもない3−4−3に11人を当てはめてしまう。はじめに選手ありきで選んだゆえに、11人を並べると不格好さを隠しきれないのだろう。
4バックの左サイドバックが、人材が手薄なポジションであるのは事実だ。そうは言っても、必然性に乏しいシステムと言わざるを得ない。それでも3−4−3にこだわるならば、センターバック+ストッパータイプ2人で3バックを構成したほうが、周囲の理解を得やすいと思う。

 FWには佐藤寿、豊田、ウイルソンの3人が選出された。得点ランキング上位3人の共演だが、なぜ3人でなければならないのか? 佐藤寿と豊田で問題はないはずだ。

 おそらくは、こんな理由ではないだろうか──FWをふたりにすると、リーグ2位の仙台からひとりも選ばれなくなってしまう。チームバランスに配慮して、ウィルソンを選出した──僕の推理はそれほど的外れではないと思うのだが、いかがだろうか。

 仙台から選ぶなら、ダブルボランチの一角を担った富田こそが適任だ。過去最高の2位に躍り出た今シーズンの仙台は、高い位置からのプレッシングを特徴に加えた。自陣にブロックを敷くカウンタースタイルに加え、より主体的にゲームを動かす戦術をプラスしたのだ。

 チームの変化を後押したのが、ボランチの冨田である。小柄だが球際で強さを発揮するこの26歳は、ボールを取りきるという自身の特徴を、高い位置からのプレッシングというチーム戦術に落とし込んだ。2012年の仙台を語るにあたって、忘れてはならない選手のひとりである。

 富田を選出した代わりに外れるのは、僕の考えでは遠藤になる。彼自身のプレーはともかく、チームはJ2へ降格してしまった。あえて遠藤を選ばずとも、他に人材はいるだろう。たとえば、大前や柿谷などは、数字的にもベストイレブンにふさわしい。

 ベストイレブンとは記録であり、記録とはできるだけ正確に事実を映し出すべきだと、僕は考える。5年後、10年後に2012年のベストイレブンを振り返ったときに、どんなシーズンだったのかを思い描けるようなものであるべきだ。