こうした東電の姿勢に対し、細野豪志原発事故収束担当相(40)も怒りをあらわにしている。いわく、

「電気料金負担は国民負担そのものであり、それで問題を解決するのはいちばん安易な方法だ。東電は役員の給与も、我々も目ん玉が飛び出るような高給だったわけだ。そういったことも含めて、もっとリストラできる部分もあるし、電気料金を上げずにやれる方法があることも模索する」

 先のヒアリングで、政府は東電に対し、賠償金確保のために「会社がスリムになる経営計画を出せ」とも命じている。すなわち、リストラ策だ。

 東電の資産査定や経営見直しを進める政府の第三者委員会は、東電グループの社員約5万3000人のうち、7400人の削減を指示する報告書を作成。しかも、9月12日に政府が設立した原子力損害賠償支援機構による出資の必要性に言及し、東電が実質的な公的管理下に置かれる可能性にも触れている。

 ところがこの「国有化」案に対し、東電の勝俣恒久会長(71)は、

「大丈夫。秘策がある」

 と、ふてぶてしい言葉を漏らしたという。

 実は東電はその意図を、ヒアリングの席ですでに示唆していたのである。

「向こう1年間で5000億円分(の経費に当たる人員)を切ります」

 東電が説明したリストラ策である。ところがこれを聞いた政府サイドは即座に

「その場しのぎの数字だ。バカにしている」と断じたという。その理由を、先の財務省幹部が説明する。

「年間売り上げ5兆円から燃料費や人件費など、あらゆる経費を差し引いた純利益が4000億円。東電は、このカネを賠償に充てれば10年間で4兆円になる、と主張した」

 第三者委員会は、東電が負担する賠償金総額は4兆5400億円と見積もっている。ちなみに4000億円は、社員に給与を支払ったあとの額であり、会社に傷はつかない。経産省関係者があとを引き取る。

「しかし政府としては、純利益を上回る額のリストラなどできるはずがない、と断定し、『5000億円なんて無理だろう』と却下した。すると東電はこう言ったんです。『下からやりますよ。ウチももちろん努力しますが、ウチには膨大な下請けがありますから』と。東電本体、つまり東電の社員はできるだけ守り、関電工などの関連会社、子会社を切り捨てるということですよ。さすがに『これはひどい話だ』となりました」

 東電はあれだけの大惨事を引き起こしながら、あくまで自分たちには傷がつかぬよう、ぬくぬくと生き残ることだけを考え、インチキな人員削減でやり過ごそうとしているのである。

 なお、第三者委員会の試算によれば、今後10 年間で2兆4120億円の経費節減が可能だという。すなわち、年間2412億円。東電の5000億円はやはり、デタラメな取り繕いの数字だったと言わざるをえない。

 事故直後は平身低頭だった東電幹部は、原子力損害賠償法の成立以降、

「水を得た魚のごとく、いや、それを通り越して尊大な態度を取り始めた」(政治ジャーナリスト)

 そして、ぬけぬけとこう放言しているという。

「それでも足りなきゃ、税金でやりゃいいんだよ」

 国民をナメ切った東電の真の姿。こんな連中は、絶対に許してはならない。