8月30日に、政府・日銀が金融緩和政策と経済対策を公表したが、その効果は1日と持たず、円相場は円高に振れた。世界的に見ても、経済成長率は低く、政府は膨大な債務を抱え、政治は混乱している。本来なら、円が売られる要因を抱えていながら出現した「おかしな円高」は、なぜ起こったのか。まずは、今回の円高の要因を整理してみよう。

 第1の要因は、アメリカの短期金利の低下が、長期金利の低下にまで波及し、日本の実質金利が高くなってしまったことだ。8月には米FRB(連邦準備制度理事会)が、保有するモーゲージ証券などの償還資金を、米国債の購入に当てる金融緩和政策を維持することを決定し、長期金利の低下が進んだ。

 プロの投資家たちは、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利を基準にしてマネーを動かす。ごく大雑把にいえば、日米の名目の短期金利はほぼ 0%で同じ。にもかかわらず、米国のインフレ率は2%弱で、日本はマイナス1.5%程度というデフレだから、アメリカの実質金利は0−2でマイナス2%とマイナス金利なのに対して、日本は0−(−1.5)でプラス1.5%と、日本の実質金利がアメリカを大きく上回っていることがわかる。

 08年のリーマンショックに端を発した金融危機を防ぐために、米国のFRBは、あの手この手の大幅金融緩和に踏み切った。このところの景気減速懸念を受けて、更なる金融緩和の姿勢も示している。

 実際、アメリカを巡るマネーの動きを見てみると、短期の債券については、昨年の4月あたりから売られて,マネーがアメリカから流出している。さらに今年に入ってからは、中長期債に対する買いも細ってきている。

 特に減少の目立つのが、ユーロとアジア(日本を除く)からのマネーの流れだ。中長期債および株式への投資の動きを見ると、6月ではユーロからの投資額は約100億ドルで、前年同月の532億ドルから5分の1にまで急減している。アジア勢は昨年6月には367億ドルの買い越していたのに、2億ドルの売り越しとなっている。短期債は売り越されてマネーが流出してドル売りの増加となり、中長期債は投資額が減少してドル買いの減少となっているわけだ。

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