慢性的な赤字で廃線の危機にある千葉県の第3セクター「いすみ鉄道」をめぐり、不穏な動きが起きている。公募により民間からの登用となった吉田平社長の知事選出馬が取り沙汰されているというのだ。出馬が正式に決定した場合、就任から一年足らずでの社長退任となり、いすみ鉄道の再建を望む住民や鉄道社員から批判の声が出そうだ。

吉田氏は東北大出身の49歳。元リクルート社員で、タクシー会社代表取締役を経て、昨年4月にいすみ鉄道社長に就任。社長の一般公募という極めて珍しい試みが当時話題となった。

その後、吉田社長はいすみ鉄道の再建に着手。二年以内に赤字状態から脱却できなければ廃線が決まってしまうという背水の陣の中、新駅開業や各種イベントの開催、さらには駅名と路線名のネーミングライツを募集するなどの思い切った取り組みが行われている。

吉田氏が社長に就任してから、まだ1年にも満たない。当然ながら今年も民間出身社長として辣腕を振るうものだと思われていた矢先、沿線住民にとっては青天の霹靂とも言うべきニュースが各紙に掲載された。それは、吉田氏が千葉県知事選に出馬する、というものであった。

きっかけは先月25日の堂本暁子知事の発言だ。産経新聞などによると、現職の堂本知事が3月に行われる県知事選への出馬を断念し、自身の後継候補として吉田氏を指名したという。

今のところ吉田氏本人は出馬に関して明言を避けているものの、吉田氏の出馬については県内の経済団体トップらも立候補を促す発言をしており、昨夜の民主党県連総支部長会議でも、吉田氏の出馬表明があった場合に同氏を推薦する方針を決めている。

また、先月31日付けの日本経済新聞によると、吉田氏は既に出馬の意思を固めており、きょうにも記者会見をして態度を明らかにするという。

このまま吉田氏が知事選に出馬した場合、いすみ鉄道の再建の舵取りは誰が担うのか。社長就任は知事選立候補への踏み台だったのか。こうした沿線住民の不安を取り除くべく、明確な説明が吉田氏には求められている。いずれにせよ、いすみ鉄道の再建に暗雲が立ち込めていることは否めないと言えよう。

なお、今回の千葉県知事選には、関西大教授の白石真澄氏や俳優で元衆議院議員の森田健作氏らが既に立候補を表明している。
(編集部 鈴木亮介)

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【参照】
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産経ニュース