14日、W杯予選の試合が組まれていなかったフランスは、スタッド・ド・フランス（パリ郊外サンドニ市）にチュニジアを迎えて親善試合を行なった。試合は、先取点を与えたものの3日前のルーマニア戦（2―2）でつかんだ自信が果敢な攻撃に表れ、フランスが3―1と逆転勝利をおさめた。

　しかし試合内容とは別に、フランスにとって喜べない事態が起こった。それは“ホーム”にもかかわらず観客から浴びせられたブーイング。スタジアムにはチュニジア移民が数多く詰めかけ、祖国を熱狂的に応援した。これまでもチュニジアと同じくフランスの旧植民地だったモロッコやアルジェリアとの対戦で同じ事態が展開している。

　レキップ紙によると、選手たちの反応は「モロッコ戦のことは聞いていたが、実際にこんな経験をするのは初めて」（クリシー）と戸惑いはあるものの、「予想していたこと。アウェーで戦っているみたいで特殊な雰囲気だったが、闘志を掻き立てられた」（グルキュフ）と意に介さないのが大半だった。両親がチュニジア出身のベン・アルファさえもブーイングのターゲットとなったが、「残念だけど大したことじゃない。彼らの気持ちは理解できるし、そこまで気分を害することはないよ」と平静を保った。

　ただし、「選手がブーイングされるのは構わないが、“マルセイエーズ”となると問題だ」とトゥラランが語っているように、試合前の国歌に対するブーイングが波紋を呼んでいる。「どこの国歌であれ、ブーイングがあれば試合を中止すべきだ。国家に対する配慮と敬意の欠如であり、このような事態を放置するわけにはいかない」（フィヨン首相）と政府も黙っていない。

　翌日にはサルコジ大統領も介入、フランスサッカー連盟（FFF）のエスカレット会長を呼び出し、スポーツ大臣を交えて、対策を協議することになった。12月の選挙で再選をめざすFFF会長にとっては、ドメネク監督の留任問題が一段落しつつあるタイミングで、新たな一難が持ち上がったことになる。