5代目に当たるホンダ「CR-V」(ボディカラーはルーセブラック・メタリック、写真:ホンダ)

ホンダは8月30日、新型SUV「CR-V」の全容を発表した。1995年から続く車種の最新モデルで、5代目に当たる。ガソリンエンジンとハイブリッド(ガソリンエンジン+モーター)という2つのパワートレーンを用意しており、ガソリンエンジンモデルは8月31日、ハイブリッドモデルは11月1日に発売する。

ホンダは8月10日、報道陣向けに5代目CR-Vの実車を先行公開。エクステリア、インテリアデザインが明らかになっていたが、価格や性能、メカニズムなどの詳細が判明した。

基本5人乗りだがターボエンジン車は7人乗りも

基本は2列シート5人乗りだが、排気量1.5Lのターボエンジンを積むガソリンエンジンモデルは3列シート7人乗り仕様も選べる。ハイブリッドモデルは「SPORT HYBRID i-MMD」と呼ぶシステムを採用。各グレードともFF(前輪駆動)、4WD(4輪駆動)をそろえた。

気になるグレード構成と車両本体価格は以下のとおりだ。

○ガソリンエンジンモデル(1.5Lターボエンジン)
■EX(5人乗り)
FF   323万0280円
4WD  344万6280円
■EX(7人乗り)
FF  342万1440円
4WD  363万7440円
■EX・Masterpiece(5人乗り)
FF  359万1000円
4WD  380万7000円
■EX・Masterpiece(7人乗り)
FF  381万4560円
4WD  403万0560円
○ハイブリッドモデル(2.0Lガソリンエンジン+i-MMD)
■HYBRID EX(5人乗り)
FF  378万4320円
4WD  400万0320円
■HYBRID EX・Masterpiece(5人乗り)
FF  414万5040円
4WD  436万1040円

ボディカラーは「プラチナホワイト・パール」「クリスタルブラック・パール」「プレミアムクリスタルレッド・メタリック」など全6色。衝突軽減ブレーキや誤発進抑制、渋滞追従機能付きのオートクルーズコントロールなどを備えた安全運転支援システム「ホンダセンシング」を全グレードに標準装備した。

日本国内におけるCR-Vは4代目までモデルチェンジを重ねたが、2016年8月をもっていったん販売をやめていた。つまり、2年ぶりの日本復活だ。アメリカで2016年10月に発売し、その後タイ、インドネシア、中国などで販売してきたモデルを日本向けにアレンジした。

近年の乗用車市場でSUVの人気が高まる中、ホンダはコンパクトSUV「ヴェゼル」の国内販売が堅調ながら、その上のクラスのSUVが空白地帯となり、競合に顧客を奪われていた。CR-Vの再投入によってトヨタ自動車「ハリアー」、日産自動車「エクストレイル」、マツダ「CX-5」「CX-8」など国産ミドルサイズSUVに対抗する。

横幅は国産ミドルサイズSUVで最も広い

5代目CR-Vのボディサイズは全長4605×全幅1855×全高1680mm(4WDの全高のみ1690mm)。歴代CR-Vの特徴を引き継いだエクステリアデザインで、1〜4代目に比べると大きく立派になり、風格を増した印象だ。


左から初代、2代目、3代目、4代目CR-V(写真:ホンダ)

主な競合車と比較してみよう。

○トヨタ「ハリアー」(全長4725×全幅1835×全高1690mm)
ガソリンエンジンモデル(5人乗り、2WD/4WD)
294万9480〜378万0000円
ハイブリッドモデル(5人乗り、4WD)
377万4600〜460万4040円
○日産「エクストレイル」(全長4690×全幅1820×全高1730〜1740mm)
ガソリンエンジンモデル(5人乗り/7人乗り、2WD/4WD)
219万7800〜356万5080円
ハイブリッドモデル(5人乗り、2WD/4WD)
258万9840〜384万4800円
○マツダ「CX-5」(全長4545×全幅1840×全高1690mm)
ガソリンエンジンモデル(5人乗り、2WD/4WD)
249万4800〜321万3000円
ディーゼルエンジンモデル(5人乗り、2WD/4WD)
280万8000〜352万6200円
○マツダ「CX-8」(全長4900×全幅1840×全高1730mm)
ディーゼルエンジンモデル(7人乗り、2WD/4WD)
319万6800〜419万0400円

5代目CR-Vの価格帯(323万〜436万円台)は、競合の国産ミドルサイズSUVを意識した設定に見える。CR-Vは2016年にSUVカテゴリで販売台数世界一を記録したモデル。主戦場はアメリカだ。そのためか、ボディサイズは横幅が競合の国産SUVの中ではいちばん広い。

1.5Lターボエンジンは「シビック」「ジェイド」「ステップワゴン」などに搭載されているユニットと基本は同じだが、車両重量の大きさを勘案して出力を向上させている。2.4L自然吸気エンジンに匹敵する走行性能だ。

一方のパワートレーンである「SPORT HYBRID i-MMD」は「アコード」「オデッセイ」「ステップワゴン」などと同じシステムで、2.0自然吸気エンジンとモーターの組み合わせ。エンジンは主に発電に徹し、3.0Lエンジン並みのトルクを発生する、力強く滑らかな走りが特徴だ。

●1.5Lターボエンジン
最高出力  190馬力
最大トルク   24.5kgf・m
燃費  15.0〜15.8km/L(JC08モード)
●SPORT HYBRID i-MMD
モーター最高出力  184馬力
最大トルク 32.1kgf・m
エンジン最高出力  145馬力
    最大トルク 17.8kgf・m
燃費    20.2〜25.8km/L(同)

月間販売目標1200台は控えめ?

5代目CR-Vの販売計画台数は月間1200台。年間に直すと1万4400台だ。日本自動車販売協会連合会(自販連)がまとめた2017年度(2017年4月〜2018年3月)の乗用車ブランド通称名別新車販売ランキング(軽自動車除く)でいえば、40位前後を目指すことになる。


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同時期に競合のハリアーは約5万4000台(17位)、エクストレイルは約5万台(20位)、CX-5は約3万8000台(26位)、2017年12月登場のCX-8は4カ月で約1万3000台(41位)を売っている。世界的なブームに乗って日本でもSUVの販売が盛り上がっている中、5代目CR-Vの販売目標は控えめにも見える。

ホンダは大ヒット車「N-BOX」を中心に軽自動車の販売が好調な反面、営業現場の労力がそこに割かれている側面があるためだろうか。

「ことさらにとがる必要はない。誰にでも使える究極に普通なクルマをつくりたいという思いで開発した」。5代目CR-V開発責任者の永留高明氏は言う。一方、複数のモータージャーリストに聞くと、「5代目CR-Vは良くできているが、フロントマスクが地味」という評価が少なくない。

ただ、裏返せば派手さや豪華さを嫌うユーザーや、最近のホンダ車のデザインが好きな人には受け入れられるだろう。走行性能や燃費に優れ、パッケージングのうまいホンダの最新技術が詰まっており、クルマとしての完成度は競合SUVに引けを取るとは思えない。

軽自動車から高級車まで扱うホンダ販売店全体の課題ともいえるが、ホンダ車としては高額な5代目CR-Vの購入見込み客に対して、営業現場が着実にアプローチできるかが販売目標達成のポイントになる。