提供:週刊実話

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 昨年は145勝を挙げ、川崎競馬リーディング第2位に輝いた瀧川寿希也。ダイナミックな騎乗で地元ファンを魅了し続ける、大注目の新星に話を聞いた。

 「とにかく人と同じことをするのが嫌い」だった。中学卒業を控え「このまま高校に行っても仕方ない。生まれ育った川崎で騎手になる」と、瀧川は地方競馬の世界に飛び込んだ。

 教養センター時代はレベルの高い91期の中でもまれ、デビュー日にいきなり初勝利。しかし、そこからは伸び悩び、1年目は8勝に終わった。
 「よくある南関東の新人って感じでしたね」

 毎日、目の前の1走をただ騎乗するだけ。勝ちたいと思っていても、どう結果を出せばよいのか分からなかった。
 「今思えば、本当に無駄な1年だったと思います」

 そんなある日、北関東競馬出身の元調教師で、当時は違う厩舎で厩務員をしていた岩渕良一氏に声をかけられた。特に親しいわけでもない瀧川に「お前はもっと勝てるのに、もったいない。もう少し考えて乗ってみろ」と励まされた。
 岩渕氏のアドバイスは多岐にわたり、そして的確だった。それまでは気付きもしなかった些細なことをきちんと意識して乗るようにすると、面白いように結果が出た。
 結果が出れば騎乗のチャンスも増える。2年目には31勝、3年目には64勝、4年目はケガによる3カ月の戦線離脱にも関わらず、56勝と大きな飛躍のきっかけをつかんだ。この出会いが瀧川の騎手人生のターニングポイントとなった。

 「以前は勝てなくなるとスランプだ、と思っていました。でも、競馬なんて勝てなくて当たり前。自分を信じた騎乗を続ければ、自分の限界を伸ばしていける」
 人と違うことがしたくて飛び込んだ世界。今でも固定概念にとらわれず「人のやっていないことをやってみる」という考え方は変わらない。今やおなじみとなったダイナミックな騎乗フォームも「人と違うことをやって、結果を出して、それで周りから求められたらこっちのものだと」。

 今年は2月末で30勝。「200勝と川崎リーディング」という今年の目標は、「自分の伸びしろを考えたら取らないといけない」と、自らに強いプレッシャーをかけて臨んでいる。
 誰も歩んだことのない道で、いつかは地方競馬を背負う存在へ。その目はさらなる高みを目指している。