コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんが詳細にレポートする当シリーズ。前回の「コンビニの商品配送・品出し作業」の話題に続き、今回取り上げるのはJR西日本の駅構内で増え続けているコンビニ「セブンイレブン ハートイン」について。「おでんを置かない」など、駅ナカという特殊な立地に展開している同チェーンならではの店舗づくりの工夫を、日比谷さんが詳しく紹介しています。

JR西日本の駅構内にある「セブンイレブン」

ちょっと前の話ですが、JR西日本の駅ナカコンビニ「セブンイレブン ハートイン」の現地取材に行ってきました。

もともとJR西日本の駅構内には、系列会社であるジェイアール西日本デイリーサービスネット等が「ハート・イン」というコンビニを出店していました。しかし2014年にセブンイレブン・ジャパンとの業務提携を行い、それ以降は「セブンイレブン ハートイン」に順次転換されています。

「セブンイレブン ハートイン」ではnanacoによる決済ができたり、セブン銀行のATMが設置されたりと、既存のセブンイレブンに準じたサービスが展開されています。ただ、駅構内というイレギュラーな立地、さらにスペース的にも限られていることも多いため、それに対応した独特な店舗づくりが行われているのです。

セブンの代名詞「おでん」を販売していないセブン

まず「セブンイレブン ハートイン」では、街中にあるセブンイレブンでは必ず売っているおでんを販売していません。

通常おでんといえば、ご家庭でのご飯のおかずとして持ち帰ったり、職場・学校での昼食時にスープ代わりに買われていく需要が多いのですが、通勤通学の途中で立ち寄る駅ナカのコンビニでは、そのようなニーズが低いようです。お店にいた方にお話を聞いてみましたが、「販売したことはない」と回答してくれました。

駅ナカコンビニの場合、朝と夕方に来店客のピークがありますが、昼の客足は少ない傾向です。ゆえに持ち帰り需要よりも、即食需要が中心です。実際カウンターFF(ファーストフード)の中心は、中華まん・コーヒー・フライヤー商品となっていました。

お土産はnanacoポイント対象外

大阪駅や京都駅にある店舗には、お土産コーナーが設置されていて、関西圏の超定番土産である「赤福」も、店頭正面に並んでいました。

ところが、これらのお土産コーナーの棚には「nanacoポイントは対象外です」というPOPが掲出されていました。

駅ナカコンビニでは、お土産菓子が重要なキーアイテムになります。どうやら、仕入れの形態やFC契約において隠れた問題がありそうです。

ホーム上にある狭小店舗の工夫

大阪駅のホームには、キヨスクタイプのセブンイレブンも出店していました。

とても狭い店舗なのですが、面白い工夫が随所に見られ、一番目立つレジカウンター下には、「おにぎり、サンドイッチ」「ビール・飲料」が陳列されていました。狭い店舗を最大限活用する素晴らしい取り組みです。

ホーム上という立地条件もあり、来店するお客さんは列車に乗り遅れないようにと、たいていは急いでいます。販売スタッフは、四方八方からお金を握りしめた手が差し出されるなかで、いかにスピーディに精算できるかが求められます。そういう点では、このようにカウンターの色々な面で販売できる店舗形態は必要なのでしょう。

カウンターコーヒー強化店舗も

JR大阪駅の中央改札口前には、セブンカフェマシンが店舗正面に設置されたカウンターコーヒー強化店舗が出店。お客さんは通りすがりにレジで精算し、カウンターコーヒーをテイクアウトで購入していく購買行動が多数見られました。



その店舗では、コーヒーに合う菓子に絞り込んだアイテムのみが展開されており、駅ナカコンビニの新たな成長期待が感じられるお店でした。

面積が狭い店舗において、高利益率のコーヒーを販売強化するモデルは、駅ナカの「ジュースバー」のようで、大いに将来性があります。ただ全ての都道府県の保健所が、この販売方法を認可するかどうかは、疑問が残るところです。

image by: WikimediaCommons(Asacyan)

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