物流大手の福山通運が、全長25mにもなる「ダブル連結トラック」の運行を開始しました。長さは新幹線の1両分にほぼ相当。どのように運行され、どれほどの効果をもたらすのでしょうか。

ルート探しに3か月 許可が下りたのは運行開始3日前!

 物流大手の福山通運が2017年10月16日(月)、日本初となる全長25mの「ダブル連結トラック」の運行を、愛知県北名古屋市と静岡県裾野市の事業所間で開始しました。


福山通運が運行を開始した全長25mの「ダブル連結トラック」(画像:福山通運)。

 通常の大型トラックは全長約12mですが、その荷台部分をさらにもう1台連結した形です。全長25mは、N700系新幹線の中間車1両分にほぼ相当。加えて、運転にはけん引免許が必要で、高い技術も求められます。福山通運に話を聞きました。

――全長25mものトラックをどのようにして走らせるのでしょうか?

 一般的に(全長12mを超える)大型のトレーラーを走行させるには、ルートを国に申請し、特殊車両通行許可をいただく必要があります。今回は国とメーカー、当社の3者で全長25mとなるトレーラーを新たに開発しました。けん引する前部車両のハンドル操作に追随する機構を有するなど、取り回しの面で全長21mのものと同等となるよう工夫されており、特別に全長25mを走らせる許可をいただいています。運転手も、けん引免許歴5年以上という要件のもと社内で選抜しています。

 特殊車両許可にもランクがあり、誘導車を伴わないと走行できない条件もありますが、今回は誘導車なしでも走れるコースを3か月くらいかけて模索しました。

――どのようなルートを走るのでしょうか?

 北名古屋市の事業所からですと、まず一般道を走行して小牧IC(愛知県小牧市)から東名高速に入ります。新東名高速を経由し、さらに新清水JCT、清水JCT(静岡市清水区)経由で東名高速に移り、裾野ICで降ります。そこから裾野市の事業所まではすぐです。

――運行開始まではどのような経緯があったのでしょうか?

 今回の運行は、国土交通省が2016年秋から進める「ダブル連結トラック実験」の一貫です。同省は現状で全長21mが最大の特殊車両通行許可基準を25mまで緩和すべく、日本梱包、ヤマト運輸、そして当社とともに実証実験を行っています。これまでの実験車両は最大で全長21mでしたが、今回、初めて全長25mとなるトレーラーを開発し、実際の荷物を積んで運行するものです。

 当社が実験に参加したのが2017年の3月で、そこから全長25m車両の運行開始に向け準備を進め、車両が完成したのが9月、国や警察、高速道路会社などからなる「ダブル連結トラック実験協議会」からOKをいただいたのが運行開始4日前の10月12日(木)、そして特殊車両通行許可が下りたのが翌13日(金)でした。

「全長25m」の意味とは?

――全長25mのトラックにはどのような特徴があり、どのように利用されるのでしょうか。

 一般的な大型トラックの全長は12mですので、最大長が25mになれば1台、つまり運転手ひとりで大型トラック2台分の荷物が運べます。運行回数を増やせば、コスト削減や効率化につながるでしょう。「ダブル連結トラック」はお客様のもとへ荷物を届ける小口輸送ではなく、当社の拠点間における輸送に用いる予定です。


2017年10月16日、北名古屋市の福山通運名古屋支社で行われた「ダブル連結トラック」出発式(画像:福山通運)。

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 この全長25mの「ダブル連結トラック」により、物流はどう変わるのでしょうか。国土交通省道路局 道路経済調査室に聞きました。

――そもそもなぜ「ダブル連結トラック実験」を行うのでしょうか?

 トラック輸送の省人化を促すためです。トラックドライバーの約4割が50歳以上であり、ドライバー不足が深刻化しています。そこで、1台で通常の大型トラック2台分の輸送が可能になるように、特殊車両通行許可基準の緩和を検討しています。全長25m車の運行については、今後なるべく多くの事業者に参加していただき、データを集めたいと思っています。

――今後の展望はどのようなものでしょうか?

 さらなる省人化や生産性の向上を促すうえで、今回の実験データが今後、自動運転や隊列走行の実験にも活用できると考えています。

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 国土交通省の「ダブル連結トラック実験」は新東名高速を中心としたルートで行い、2018年度の本格導入を予定しているといいます。ほかの高速道路を中心としたルートでの走行や、自動運転・隊列走行の実験は、その次の段階になるとのことです。

【図】長さいろいろ トレーラーの種類


「ダブル連結トラック」は全長21mのフルトレーラーと比べ、荷室容積が合計で22.3立方メートル、家庭用の浴槽(200Lと仮定)換算で約112杯ぶん増える(画像:福山通運)。