銀メダルを獲得した大橋悠依【写真:Getty Images】

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200m個メで日本新で銀…元五輪代表・伊藤華英さんが見る「持久力」「精神力」の凄さ

 日本競泳界に美しき新星が現れた。水泳の世界選手権(ブダペスト)は24日(日本時間25日)、女子200メートル個人メドレー決勝で大橋悠依(東洋大)が2分7秒91の日本新記録で、日本競泳陣初となる銀メダルを獲得した。今年代表入りしたばかりの21歳は、自己ベストを2秒以上更新。鮮烈な世界デビューを飾った美女スイマーは何が凄いのか。北京五輪、ロンドン五輪代表の伊藤華英氏は「心臓」を挙げた。

 伊藤氏は「今回が初の世界大会で遅咲きの選手。急に躍り出てきました」と話した上で、こう語った。

「高校時代はそこまで有名な選手ではなかったですが、萩野公介選手がいる東洋大に進み、平井伯昌コーチの指導を受けて大きく成長した。平井コーチも『いい選手。今年はいいぞ』とおっしゃっていましたが、去年のインカレで結果を残せず、悔しい思いをして4月の日本選手権まで頑張っていい結果が出せたと思います」

 日本競泳界に現れた新星。いったい、21歳の強さはどこにあるのか。

「ひと言で言うなら『心臓の強さ』です。何よりも持久力が素晴らしい。彼女の200メートル、400メートルの個人メドレーは競泳の中でも練習はかなりハードです。しかし、身長も173センチと大きく、練習を頑張り抜く力があります」

 心臓の強さは、心肺機能だけでなく、メンタル面でも表れているという。

普段は「ボーッ」水泳は「勝ち気」な21歳…「水泳選手としてのセンスを証明した」

「性格的にはボーッとしたところもある子ですが、水泳が関わるとすごく勝ち気。東洋大で萩野選手といういい練習相手に恵まれ、勝ち気に火がついた印象です。普通の女の子。でも、今大会に向けても『ワクワクする』ということを言っていました」

 決勝では、自己ベストを2秒以上更新。「普通ではできないこと」と伊藤氏も言う通り、大舞台で最大のパフォーマンスを発揮できる「心臓」も持っている。

「そういう部分でも水泳選手としてのセンスを証明したと思います。あとは平井コーチのサポートも大きかったと思います。選手に寄り添うタイプで選手も大会でも安心できるので、いい指導者に恵まれていると思います」

 鮮烈デビューで獲得したメダルの価値も大きいという。

「今回で競泳界で地位を確立できたと思います。今、世界で最も強いホッスー選手に続く2位に入ったことも大きい。日本選手権から200メートルを強化したいと練習に取り組み、体もさらも大きくなりました」

 しかし、本職は400メートル個人メドレーだ。

400mでもメダルは「確実」、あとは色…「もっとやれるんじゃないかという印象も」

「400でもメダルは確実に獲れると思います。あとはメダルの色がどうなるか。もっとやれるんじゃないかという印象もあります。東京五輪へ向けても、いいプランニングができると思います」

 この日は入江陵介が男子100メートル背泳ぎ準決勝で全体4位で決勝進出。「いいタイムでいっている。アメリカで合宿し、気持ち的にもリフレッシュしている。メダルの獲り方を知っている選手だし、狙ってほしいし、獲ってほしい」と伊藤氏は期待を込め、女子100メートルバタフライ決勝で6位に終わった池江璃花子については「みんなの期待が彼女に乗ってしまった。まだ17歳。勝ち気な性格だし、今回の結果をネガティブに捉えるのではなく、大橋選手の活躍も見て、悔しい思いを次の種目につなげてほしい」と願った。

 すい星のごとく現れた大橋がもたらした今大会初のメダル。21歳の400メートル個人メドレーはもちろん、トビウオ・ジャパンの躍進はここからだ。

◇伊藤 華英(いとう・はなえ)

 2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、初出場した北京五輪で8位入賞。翌年、怪我のため2009年に自由形に転向。世界選手権、アジア大会でメダルを獲得し、2012年ロンドン五輪に自由形で出場。同年10月の岐阜国体を最後に現役を退いた。引退後、ピラティスの資格取得。また、スポーツ界の環境保全を啓発・実践する「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」としても活動中。