「今年に入ってから、野際さんの体調に変化が見られるようになりました。以前のように声が出なくなり、しばらく休憩を取ってから撮影が再開されることもありました。最後の撮影となった5月7日、鼻にチューブを付けて現場入りした野際さんの姿に“女優魂”を強く感じました。看護師が見守る中、短い撮影でしたが、完璧にこなして帰られました」(制作関係者)
 
野際陽子さんの最後のドラマ出演となった『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)の関係者は、こう明かす。6月13日、野際陽子さんが肺腺がんで亡くなった。81歳だった。入院直前まで『やすらぎの郷』の撮影に臨んでいた野際さんだが、現場で弱音を吐くことはなかったという。
 
「撮影もすでに3分の2以上終わっているので、ストーリー上の大きな変更はありません。今後については脚本の倉本聰さんも含めて話し合いが進められていますが、野際さんは“退所”という形でホームを去るというのが現実的な展開となりそうです」(テレビ朝日関係者)
 
3年前にがんが発覚し、闘病をしていた野際さん。ひそかに“終活”を始めていたという。
 
「昨年の秋ごろ、野際さんの事務所の社長から『所属タレントを引き受けてくれないか』と連絡があったんです。『野際が、もう仕事をあまりこなせないので、なんとかよろしくお願いします』と頼まれました。そこで、何人かはすぐに話がまとまったみたいで、続々と移籍の情報がホームページにもアップされました」(芸能事務所関係者)
 
野際さんの事務所はもともと、親交が深かった丹波哲郎さんの事務所だった。野際さんは実質的に丹波さんからこの事務所を引き継いだ形だという。
 
「稼ぎ頭の自分が最前線で活動できなくなることを見越して、事務所に所属するタレントさんたちにはほかの事務所にスムーズに移籍できるように、野際さんが手を尽くしていたようです。いま思えば、“終活”のだったのでしょう」(キー局関係者)
 
野際さんの娘の真瀬樹里(まなせじゅり・42)も例外ではない。真瀬は大手芸能事務所・レプロエンタテインメントに移籍をしている。さらに野際さんは新しい仕事をセーブしていた。
 
「隔年で放送していた人気ドラマ『DOCTERS〜最強の名医〜』(テレビ朝日系)。今年10月クールで放送を計画していたのですが、野際さんの体調がすぐれないということで、延期になりました。『連ドラが無理なら特番でも』と話をしたのですが、野際さんは『いまは難しいです』と断られました。大体の時期もおっしゃらなかったので、もしかしたら予感があったのかもしれませんね」(前出・テレビ朝日関係者)
 
最期まで、毅然として弱音を吐かなかった、野際さん。その強さで、みごとに“終活”を成し遂げた――。