政府マッチング方式だと、所得のない者にもインセンティブがつけられる。この点でも、税控除方式より優れている。また、インセンティブをつけたいターゲットを絞って付与する政策も可能だ。たとえば、40代、50代は、老後資金の準備を自ら行うので、インセンティブは必要ないと考えれば、20代、30代だけに「政府マッチング」を付与するようにすれば、より少ない財源で実施できる。

 企業型では60歳引き出し規制への抵抗は強い。企業型DCは退職給付なのだから、特に中小企業では退職時に退職金として払ってあげたいという経営者は多く、それができないから中小企業への普及を妨げている。企業が拠出したお金は退職時に支払うことが可能な制度にすれば、中小企業への普及は一段と進むだろう。米国401(k)プランでは、サブアカウントを設けて、事業主拠出と個人拠出を分けて管理するシステムがあり、これを日本でも導入すればよい。

 日本のDCは発展途上だ。今回の改正DC法令で終わりではなく、まだまだやるべき改正はある。DC普及のための議論を止めてはならないと思う。

――現在の制度の枠組みの中で、運営管理機関等が制度普及のためにできることは?

 現在の制度の中でも、DCの普及を促す取り組みはできる。たとえば、中小企業に認められた「逆マッチング」(従業員が個人で加入しているiDeCoに企業が事業主掛金を拠出する制度、拠出金額は損金算入できる)は、外資系にとっては本国では当たり前の仕組みだけに受け入れられやすい仕組みだ。

 また、iDeCoは、企業年金制度でカバーされていない非正規従業員の間でニーズが高い。今般のキャンペーンで、自分が加入できることを(もともと入れたのに)初めて知ったという人は多い。基本的にすべての勤労者が加入できるようになったのだから、この機会に非正規従業員への普及についてもさらなる取り組みがあっても良いと思う。(情報提供:モーニングスター社)