「インターンシップ」は本当に就職に有利なのか?

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インターンシップが就職活動の表舞台に

企業が実施する正規の新卒採用活動と切り離し、別枠扱いだった学生によるインターンシップ(就業体験)が、就職活動の表舞台に躍り出ている。

就活の短期決戦化を反映し、3年生の3月に解禁される会社説明会を前に学生が企業に接触できる場として急速に存在感を増しているからだ。半面、採用と直結する学生の“草刈り場”に位置付ける手法には是非に関する議論もあり、12月以降に「冬の陣」本番を迎えるインターンは今後、大きく様変わりする可能性もある。

インターンをめぐっては、文部科学省や経団連は学生の職業観の形成を促す観点から採用直結型を禁じてきた。このため、経団連は会員企業に対し、会社説明会などの採用広報活動解禁前に実施する場合は5日間以上とし、さらに面接など採用選考活動と「一切関係ない」ことを明確にすべきとの指針を定めている。また、企業は参加学生の個人情報を選考に用いることも禁じている。

昨今のインターンは本来の「就業体験」とは名ばかりで、就活を目前に控える3年生らには人間ドック並みの「ワンデー(1日)コース」と称す超短期型も横行し、「採用ツール」としての性格を一段と強めている。その意味で、経団連の指針は有名無実化しているのが実態だ。

しかし、これを単純にルール無視の行為とは断じられない。指針はあくまで経団連の会員企業の多くを占める大企業をベースとしており、経団連の枠から外れる中小やベンチャーなどの非会員企業が指針に縛られては計画通りに採用できない事態に陥ってしまう。全国の中小企業を束ねる立場の日本商工会議所の幹部は、この点を「経団連の指針に縛られていては優秀な人材を採用できない」と本音を漏らす。

■ダブルスタンダードとガラパゴス化

これを裏付けるように、中小やベンチャー、あるいはインターネット系大手などには採用直結型のニーズが強く、大企業に先手を打って実施するケースが多い。それは、指針が4年生の6月と定めた採用選考の解禁を待たずに学生に内定を出すのと同じ次元の動きでもある。経団連会員企業にしても指針については必ずしも一枚岩でない。

11月15日に発表した就活に関するアンケートの結果、5日以上とするインターンの規定を見直すべきと答えた企業は42%にも達し、指針が実態に合わないと感じている会員企業が多いことを裏付けた。経団連はこうした意見を反映し、19年春卒の学生からこの規定を撤廃する方針を固めたことが12月1日、明らかになった。これに従えば、1日だけのインターンも可能になり、先行して学生との接点を得てきた非会員企業にも対抗できる。

こうしたダブルスタンダードが存在し、学生を混乱させている現状を踏まえ、政府もインターンのあり方について具体的な検討を始めた。今年5月にまとめた規制改革実施計画に、インターンと採用の関係の見直しを盛り込んだ。焦点は採用直結型を認めるかどうかにあり、文部科学、厚生労働、経済産業の3省は7月に検討会を設け、インターンの定義やあり方など検討に着手し、来年3月までに一定の方向をまとめる。

しかし、期間が3カ月を超え、受け入れた学生に報酬も支払うのが一般的な欧米型に比べ、日本のインターンは国際的にも特異な存在で、完全な「ガラパゴス化」に陥っている。そうしたなか、経済同友会に加盟する17社は今夏、全国から70人の1、2年生を受け入れ、1カ月超の長期型を実施し、曲がり角を迎えつつあるインターンに一石を投じた。「採用」か「学業」か――。本音と建て前が交錯し、就活生が浮き足立つなか、インターンをめぐる論議は白熱化している。

(経済ジャーナリスト 水月仁史=文)