横にも動く「次世代エレヴェーター」で地下鉄はどう変わる?

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上下だけでなく左右にも移動し、建物から直接地下鉄の駅へ移動することを可能にする磁気浮上式のエレヴェーター「MULTI」が、ロンドンで導入されるかもしれない。この技術をテストする約240mのタワーがいま、ドイツに建設されている。

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2/5エレヴェーターは横方向にも動く。
IMAGE COURTESY OF THYSSENKRUPP/WESTON WILLIAMSON

3/5高層ビルと地下鉄を直接結びつける構想だ。
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4/5身体障害者や高齢者の負担を減らすことができる。
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5/5ティッセンクルップはロンドンに建設を認めてもらうために、このコンセプトが実現できることを証明しなければならない。
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これまでに何度もロンドン地下鉄の大型プロジェクトに取り組んできた建築設計事務所のウェストン・ウィリアムソンは、ロンドンの地下鉄に急進的なエレヴェーターデザインを導入したいと考えている。

それはドイツを拠点とする重工業メーカー、ティッセンクルップの「MULTI(日本語版記事)」だ。MULTIは磁気浮上技術を利用したエレヴェーターで、上下だけでなく左右にも移動する。

ティッセンクルップは現在、ドイツのロットヴァイルに高さ246mのテストタワーを建設し、このクレイジーともいえるエレヴェーターを実際に稼働させようとしている(タワーは8月12日に246mに到達する予定。リンク先では、建設現場の様子を15分おきのライヴ映像で見ることができる)。

2014年にそのコンセプトが初めて発表されたMULTIは、磁気浮上を利用して、1本につながったループ状のシャフト内で複数のキャビンを同時に運行させる。

磁気浮上は(リニアモーターカーなど)一部の鉄道で使われているものと同じく、エレヴェーターのシャフトに取りつけられた磁気コイルが磁石に反発することで、乗客を乗せたキャビンを浮かせて目的地まで高速で移動させる。この技術を用いれば、地面と水平なシャフトをつくることで、キャビンを横方向に移動させることも可能になる。

MULTIの乗り場を高層ビルの中につくることも可能だ。利用者がオフィスのあるフロアにキャビンを呼べば、地下鉄のプラットフォームまで直接向かうことができる。エスカレーターを何度も乗り換える必要はもうなくなるのだ。

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ティッセンクルップの構想では、キャビンの定員は6〜10人で、15〜30秒おきに新しいキャビンが到着することになるという。混み具合によってすべてのキャビンが同時には必要とされない場合は、一部を休止させればエネルギーを節約できる。

すでに建物の基盤や水道管などの周りに建てられた既存の地下鉄網には、新たな移動手段をつくるための空間的な余裕はない。だがMULTIなら、必要なのはシャフト1本だけだ。

ティッセンクルップは、MULTIのシステムを構築するのに費用がどのくらいかかるかについて語ろうとしないが、駅を大きくせずに(交通網の)キャパシティを増やすことは「駅の開発業者にとっては大きな利益になる」と主張する。また、この新しい移動手段の恩恵を受けうる都市はロンドンだけではない。例えばニューヨークでは、「車椅子の利用者にやさしい地下鉄の駅」は20パーセントしか存在しない。

いずれにしても、ティッセンクルップはまずテストタワーでこのコンセプトの実現可能性を証明し、ロンドン交通局(TfL)にその建設を承認してもらわなければならない。