「そんなに怖くないけど......」離島に住んでいる友人から、こんな話を聞いた。初めに断っておくが、これは実話怪談ではない。わたしたちは、錆びついたビュートに乗って、海岸に向かっていた。助手席から眺める空は、どこまでも青く突き抜けていた。運転席でハンドルを握るのは、五郎さん。ロッキー・バルボアのTシャツを着た男。いつもほがらかで、読書好きの歯科医。「わりと、最近の事だよ」彼は、開業医として、自分の診療所