松田龍平さんと片桐はいりさんの失神シーンは必見(C) 2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』製作委員会

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4月に入り、さまざまな飲食店や食品が値上げされた。ハラハラと散りゆく桜の花びらを眺めながら、これが諭吉さんのお札だったらいいのにと思ったのは筆者だけだろうか?

人間生きていく為には「お金」がいる。人は物心ついた頃から、その大小の差はあれ、このお金に振り回され、一喜一憂し、時には大きな犯罪を起こしてしまうことも。

それならいっそ、「お金のない生活を送ることは出来ないだろうか?」

そんな誰もが一度は、一瞬頭をかすめ即あきらめる想いを実現しようとしたのが今回ご紹介する『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』の主人公である。

【『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』のストーリー】


高齢化率40パーセントで過疎化が進む、かむろば村。そんな寂れた寒村に、ひとりの青年・高見武晴【タケ】(松田龍平)がやって来た。彼の目的はただひとつ。「お金を1円も使わずに生きていくこと」。100万円で購入したボロ屋で、完全完ぺきな自給自足の田舎暮らしを目指す。そんなタケをマイクロバスで迎えに来たのが村長の与三郎(阿部サダヲ)だった。他にも、村長の美しすぎる妻(松たか子)や、可愛いけれど妙にアヤしい女子高生(二階堂ふみ)、自他共に認める“神様”なかぬっさん、と不思議すぎる面々が登場しては、タケに茶々を入れてくる。そして、ある日、ひょんな事がきっかけで、タケの人生は予想もしない展開に。果たして彼は、平和に自給自足の日々を送ることができるのか?

【いがらしみきおの人気コミックを映画化】


本作は、いがらしみきおの人気コミックを彼のファンだったという松尾スズキが映画化。松田龍平演じる主人公のタケの前に、村で暮らす人々を演じた阿部サダヲ、西田敏行、片桐はいり、荒川良々、モロ師岡、村杉蝉之介、皆川猿時、伊勢志摩といった松尾監督が主宰する「大人計画」のメンバーをはじめ強烈な個性を持ったキャスト達が次々に現れ、インパクト絶大の演技で迫ってくる。マスコミ試写でも彼らが登場する度に何度も笑いが起こっていた。

これだけの濃厚なキャスト達がありえない(!?)行動を巻き起こし続けるのだが、それでも松田龍平演じるタケの存在感は埋もれる事なくますます輝き、葛藤しながらも成長していく。その姿がリアルに描かれ、タケと阿部サダヲ演じる与三郎との絆に心動かされるのも魅力のひとつだ。

【魅力的なキャスト、そして撮影地も】


タケの心を明るく照らす女性たちを演じているのは、先日無事、女の子を出産した松たか子と二階堂ふみ。松尾スズキ自身もヘビィな役で登場。のどかな村の雰囲気が一気にグロテスクなムードへと変わっていく様も見逃せない。

今回、もうひとりの主役と言っていいのが、舞台となった“かむろば村”だ。実際の撮影は、福島県の奥会津にある柳津町で行われたという。何もないけど何だかほっこり、そんな場所で成長していくタケを見ていると、もしかしたらお金のない生活も実現可能かも知れないと思わせてくれる。

■さいごに
劇作家、演出家、小説家、俳優、コラムニスト、映画監督……と、多才なクリエイター・松尾スズキ監督の8年目の新作は、クドカンや三谷幸喜とも違う、まさに唯一無二の”松尾スズキワールド”(ちなみに三谷幸喜さんが意外なシーンで登場する!)。これまで「大人計画」の舞台や松尾スズキ監督作品を観たことがないという方も、大いに楽しんでいただけそう。ラストはほろり。幅広い層の方々にオススメしたい作品だ。
(mic)