先ごろ都内で開かれた試食会。機内と同じようにカートで提供された

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エコノミークラスの機内食といえば、「ビーフorフィッシュ?」などの2択が一般的。だが、カンタス航空なら3つ目の選択肢がある。同社では、日本―オーストラリア間の国際線エコノミークラスの機内食を刷新。3月1日から3種類のメインディッシュの提供を始めた。東京発シドニー路線の今シーズンのメニューなら「ビーフ、フィッシュorチキン?」といった具合だ。

もちろんこれまでにも、アレルギーや宗教、健康に配慮したものなど、スペシャルミールと呼ばれる特別機内食の用意はあった。だが、それらは事前予約が原則。新しい機内食は、予約もいらず、搭乗してから機内でメニューを見て、その時の気分で3種類の中から選ぶことができる。

さらにオーストラリア発便では、オンラインのみで注文できる料理を4つ目の選択肢として用意。これまでビジネスクラスやプレミアムエコノミークラスの乗客を対象におこなってきた機内食の事前注文サービス「セレクト・オン Q-Eat」をエコノミークラスにも拡大した形だ。ただし、こちらは12時間前までに予約が必要。

選択肢が増えたこと以外にも大きな変化がある。エコノミークラスの機内食といえば、1つのトレーに、前菜からメイン、デザートまで、すべてがのっているのが従来のスタイルだったが、新機内食では、新しいプレートを採用し、銘々皿で提供しているのだ。ビジネスクラスなどでは当たり前のこのスタイルも、エコノミークラスでは新鮮。サービスに高級感が感じられて嬉しい。

普通に考えたら、エコノミークラスの大勢の乗客に、一皿ごと提供するのは時間的に不可能。だが、そこに同社の工夫がある。まず、メインディッシュのボリュームを50%増やすかわりに、サラダなど一部のメニューを廃止し、皿数を削減。パンもバター入りにすることで、バターを別添えする手間を省略している。片付けもトレー単位ではなく、空いた皿ごとに片付けられるので、結果的に機内食の提供と片付け時間は30分程短縮できたそうだ。

新メニューの開発には約1年を費やしたそうで、メニューの新カテゴリーとして、ヘルシーオプションや路線の特色を活かしたメニューも登場。東京発シドニー路線では和食も提供している。

いずれも皿数は多くないものの、メインディッシュが50%増量してあるので、ボリューム的には申し分ない。また、実際の機内では離陸直後にはオリジナルウェルカムドリンク、食後しばらくしてからはフレッシュフルーツのサービスもあり、飛行中はセルフサービスのスナックや飲み物も自由に楽しめる。

新機内食が日本路線に導入されたのは3月1日からだが、すでに試験的に提供されたフライトでは乗客の満足度が通常の2倍になるなど、非常に好評だそう。個人的にはトレーがないので、スペースが広く使える点も嬉しい。

エコノミークラスの機内食というと、選択肢は2種類、提供はトレーで……というのが変わらぬスタイルだと思い込んでいたが、こんなふうに変える余地がまだあったことに驚いた。私自身、利用する機会が最も多いのはやはりエコノミークラス。こうした変化を今後も楽しみにしたい。
(古屋江美子)