日本の原風景が残る世界遺産の富山・五箇山

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 昨年、シンクタンクの日本総合研究所が発表した『2014年版 全47都道府県幸福度ランキング』によると、2位の東京都を抑えて1位に輝いたのはまさかの福井県! さらに5位富山県、6位石川県と北陸3県がすべて上位にランクインする驚きの結果となった。

2014年版 幸福度ランキング



 ちなみにこのランキングは、各都道府県の経済活動や社会活動の状況を示す基本指標に、健康、文化、仕事、生活、教育など各分野の指標を加えた、計60指標をもとに総合的に判断。つまり、独断と偏見に基づいたものではなく、公開されている統計などのデータから順位付けした客観的なランキングというわけだ。

 とはいえ、「福井県民は皆ハッピー」、「北陸は楽園」なんて話は聞いたことがなく、にわかに信じがたい。そこで現地に飛び、地元の人に直撃インタビューを敢行! 幸せを感じている人が多いのか、北陸の人たちに聞いてみた。

 でも、いきなり「あなたは幸せですか?」なんて尋ねたら怪しげな宗教の勧誘にしか思えない。そこで幸福度ランキングの結果を伝えたうえで話を聞くと、「一概に幸せとは言えないけど、今の暮らしに不満はない」と答えてくれたのは福井在住の36歳の会社員。

女性の社会進出が多く世帯年収が高いのが特徴

 北陸3県で20人ずつ、計60人に話を聞いたが、半数弱にあたる32人が「今の生活には概ね満足している」と回答。各県民とも幸福度が上位との結果に対しては驚いていたが、「教育行政がしっかりしているし、地方の割に求人も安定してある」(福井県・42歳男性)、「女性の雇用環境が整ってる。夫婦共働きの家がほとんどで、世帯収入は意外と多い。ウチも嫁の稼ぎと合わせれば年収700万円オーバー」(富山県・38歳男性)など教育環境、雇用環境の良さを挙げている人が多かった。

子供の学力の高い都道府県



女性の人口労働比率の高い都道府県



 また、福井県、富山県、石川県はすべて待機児童率が0%。子供の数に対して認可保育園の割合が多く、女性が働きやすいように行政が支援。それに生まれ育った土地にそのまま暮らす人も多く、「近所に住む義父母が子供の世話をしてくれる。仲良しのママ友はみんな仕事持ちだけど同居している家も多く、母親は安心して働ける」(石川県・35歳女性)といった地方ならではの身内のサポートも大きいようだ。

正規雇用者比率が高い都道府県



一方で、景気は悪く結婚相手がいないという悩みも

 しかも、労働者に占める正規雇用の割合も多い。特に近年は工場や本社機能の一部を北陸に置く企業も増えており、北陸新幹線の開通は大きなプラス材料。「会社(建設業)の受注が増え、業績も上がっている。ボーナスにも反映され、年収はこの3年で30万円アップした」(石川県・41歳男性)など経済面で幸福を感じている人もいた。

 しかし、幸福度の高い北陸でもなかには不幸な人もいるはず。そこで向かったのは、ローカル臭漂う福井市内の競輪場。市内で飲食店を営む45歳の男性は、「福井が幸福度1位? ここ数年、店はヒマだし、閉めようと思ってるくらい。しかも、今日は1レースも当らないし、不幸もいいところだよ」と幸せはまったく実感していない様子。

 さらにレースの映像を真剣な眼差しで見ていた39歳の地元会社員は、「北陸ってのんびり暮らすにはいい場所だと思うよ。ただ、俺はアラフォーで独身だから肩身が狭いかな。仕事は順調でも同居する親は口うるさいから休みの日は競輪場かパチンコ屋に逃亡(笑)。結婚したいけど、地方だから相手がいなくてね」と胸の内を吐露。

 幸せの定義や尺度も人それぞれで、幸福度が高い県だからといっても感じ方は異なる。とはいえ、住みやすい土地であるのは間違いなさそう。東京や大阪のような都会らしい刺激はないが、子育てや老後のリタイヤ生活の場所としては良さそうだ。

(取材・文・写真/高島昌俊)