地震予知できなかった科学者を殺人罪とする判決、一転無罪に:イタリア

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2009年にイタリアで309人が死亡したラクイア大地震。その数日前に、群発地震は大地震につながらないと発表した国家委員会の科学者たちを、死亡者拡大につながったとして一審は有罪にしたが、二審は無罪を言い渡した。

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中世の面影を残すイタリアの都市、ラクイラで2009年に発生した地震を正しく予知できなかったとして、殺人の罪に問われた科学者たちが無罪となった。

2009年4月に住民309人が死亡したラクイラ地震について、国家委員会に属していた地震の専門家6人と政府当局者1人は、2012年10月の一審で、適切な警告を出さなかったとして有罪判決が下されていた。しかし二審裁判所は11月10日、一審の有罪判決を覆した(ただし、検察が引き続き上告し、判決が覆される可能性はある)。

2012年10月に7人全員が殺人罪で有罪となった一審では、全員に禁固6年の実刑判決と、公職からの永久追放、さらに、住民たちへの損害賠償金として900万ユーロ(約13億円)の支払いが命じられていた(PDF)。


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一審判決では、被告の専門家たちは、大地震の数日前である3月31日に記者会見を行い、しばらく続いていた地震に対する不安を和らげようとしたことで、自分たちの義務を怠ったと結論付けた。証言によると、専門家たちが安全を保証したため、住民たちは家の中に留まることになり、4月6日にマグニチュード6.3(震源の深さ8.8km、震度は8〜9)の本震に襲われたときの被害が拡大したという。

一審の裁判官は7人に対し、起訴よりも2年長い禁固刑を命じる判決を下したため、科学界では、イタリア裁判所が科学そのものを裁判にかけたとする批判に拍車がかかった。

2012年に有罪判決が下された際には、イタリアの国家大災害委員会(National Committee of Major Risks)のルチャーノ・マイアーニ委員長が、委員会に対する法的保護が一切ないと抗議して辞任した。

マイアーニ委員長は、欧州原子核研究機構(CERN)で所長を務めたこともある物理学者だが、当時BBCに次のように述べている。「科学的な委員会というものは、常に、非常に保守的な立場をとる傾向がある。科学界が政府に対する忠告を控えるというリスクは確実にあると思う」

※なお、大地震発生の数週間前、グラン・サッソ国立研究所の技師ジャンパオロ・ジュリアーニは、自身のラドンガスの放射の研究に基づいた地震予測の推定方法により、近々に地震イタリア国内で発生すると警告した。しかし、市民保護局長はジュリアーニ氏を煽動者とし、罰則を与えていた