「絶交」という言葉はもはや死語!? この言葉を聞かなくなった理由とは

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近頃、聞かなくなった言葉の一つに「絶交」というものがあります。以前は、友達とケンカした際に、「お前とは絶交だ」なんて、口にする人がいましたが、この言葉はもはや死語に近いものがあります。

「絶交とは、文字通り『つきあいを絶つ』ことだ。しかし、そう言いつつ、今の人にはわかりにくいことかもしれないが、『仲直り』のニュアンスを含んでいた。そして、ケンカのあとの仲直りは、以前よりお互いの関係を深めたものである」

こう語るのは、書籍『怒る技術 怒られる技術』の著者であり、話し方研究所の会長でもある福田健氏です。気が立って「絶交する」と言っておきながらも、仲直りすることが頭のどこかにあり、余地を残しながら相手との関係を保つ。昔から使われている「絶交」という言葉は、ある意味"深みのある言葉"でした。

福田氏は、この言葉を聞かなくなった理由の一つに、怒って相手とケンカをする行為そのものが少なくなったせいではないかと分析しています。SNSの普及からコミュニケーションの方法は劇的に変わりました。その結果、あえてもめる事をせずに、相手との関係を絶つことで事態を沈静化させるといった選択肢も出てきたのです。

「現在人は『怒ったり』『ケンカしたり』して、仲違いをしつつ、『縒りを戻す』といったコミュニケーションができなくなったようだ」(福田氏)

夫婦喧嘩をする夫婦は、しない夫婦よりも離婚率が低い。福田氏は、このことを例に出し、ケンカをして縒りを戻すという行為を繰り返して関係を深めた夫婦は離婚を選びにくいものとしています。一方、それをせずに過ごした2人が、逆鱗にふれる一言を発したとき、一挙に離婚という結果になってしまうのです。最近の離婚率の増加の影には、ケンカの少なさがあるのではないでしょうか。

「『怒る』のは関係の修復、改善を目的としたコミュニケーションなのである。『絶交』が言葉として死語になったのは、『怒ることをおそれる』人々が増えたからだと、言えるのではないか」(福田氏)

感情にまかせて相手を叩きのめすばかりの怒りではダメですが、「愛情をもっての怒り」は私たちが忘れかけているものではないでしょうか。ことなかれ主義から一歩踏み出し、愛情のある怒りをぶつけあえる人間関係を、もう一度取り戻してはみませんか。手遅れになる前に。

【書籍データ】
・『怒る技術 怒られる技術』福田健著 日本経済新聞出版社